◆ 1年目で規定投球回到達なら日本人左腕初
マリナーズ入団が決まった菊池雄星投手(27)が3日(日本時間4日)、本拠地「T-モバイルパーク」で入団会見を行った。会見では流暢な英語も披露。背番号は「18」に決まった。
念願のメジャー挑戦を果たした菊池。西武では計9年間で73勝46敗、防御率2.77の成績を残し、“NPBを代表する左腕”として海を渡る。
18年シーズン、MLBで登板した日本人投手は、ダルビッシュ有(カブス)、田中将大(ヤンキース)、前田健太(ドジャース)、大谷翔平(エンゼルス)、田沢純一(エンゼルス他)、平野佳寿(ダイヤモンドバックス)、牧田和久(パドレス)と全員が右投手。左投手のメジャー挑戦は、2012年にオリオールズ入りした和田毅(現ソフトバンク)以来、7年ぶりだ。
そこで、日本人左腕の1年目成績を振り返ってみたい。
村上雅則(1964・ジャイアンツ):9試合(15回)、1勝0敗1S、防1.80
柏田貴史(1997・メッツ):35試合(31回1/3)、3勝1敗、防4.31
石井一久(2002・ドジャース):28試合(154回)、14勝10敗、防4.27
野村貴仁(2002・ブリュワーズ):21試合(13回2/3)、0勝0敗、防8.56
井川 慶(2007・ヤンキース):14試合(67回2/3)、2勝3敗、防6.25
岡島秀樹(2007・レッドソックス):66試合(69回)、3勝2敗5S、防2.22
高橋 建(2009・メッツ):28試合(27回1/3)、0勝1敗、防2.96
高橋尚成(2010・メッツ):53試合(122回)、10勝6敗8S、防3.61
和田 毅(2012・オリオールズ):メジャー登板なし
際立つのは、救援で66試合に投げ防御率2.22を記録した岡島秀樹。4月の月間最優秀新人に輝き、登板機会はなかったものの球宴メンバーにも選出された。ポストシーズンでも活躍。1年目からチームのワールドシリーズ制覇に貢献した。
先発では、石井一久がいきなり14勝をマーク。シーズン終盤、打球を頭部に受け規定投球回には届かなかったが、先発ローテーションの一角としてチームを支えた。巨人の左腕エースだった高橋尚成は、救援でメジャーデビュー。その後、12試合で先発登板を託されるなど、1年目から10勝をマークした。
大型契約でヤンキース入りした井川慶は、2勝3敗、防御率6.25と苦戦。阪神で5年連続2ケタ勝利の実績を作り海を渡ったが、2年目以降はマイナー生活が続き、メジャー通算でも2勝止まりだった。
和田毅はソフトバンク入団後の9シーズンで計107勝をマーク。こちらもNPBを代表する先発左腕として渡米したが、1年目から左ひじの故障に苦しんだ。入団早々にトミー・ジョン手術を受け、オリオールズでの2年間はメジャー登板なし。2014年にカブスとマイナー契約を結び、メジャー昇格後に4勝(4敗)を挙げたが、翌年は再び故障に泣き、メジャー通算5勝でソフトバンクに復帰した。
◆ 解体中のマリナーズ、指揮官は「開幕候補」と期待
前述の成績を見ると、1年目から規定投球回(162回)超えを達成した日本人左腕はいない。石井はアクシデントの影響で惜しくも届かず、井川と和田は期待を大きく裏切った。高橋尚も結果的に10勝したが、先発では4勝4敗、防御率5.01と振わず。彼らのメジャー2年目以降の成績を見ても、規定回をクリアしたのはドジャース3年目に172回(13勝8敗、防御率4.71)を消化した石井の1シーズンのみ。メジャーの舞台で日本人の先発左腕は苦しむ傾向にある。
ちなみに右腕では、ドジャース・野茂英雄(191回1/3、13勝6敗、防御率2.54)、メッツ・吉井理人(171回2/3、6勝8敗、防御率3.93)、レッドソックス・松坂大輔(204回2/3、15勝12敗、防御率4.40)、ドジャース・黒田博樹(183回1/3、9勝10敗、防御率3.73)、レンジャーズ・ダルビッシュ有(191回1/3回、16勝9敗、防御率3.90)、ドジャース・前田健太(175回2/3、16勝11敗、防御率3.48)が、1年目での規定投球回超えを果たしている。
菊池もまずはローテの一角として、通年での働きに期待したい。新天地となるマリナーズは今オフ、すでに8件のトレードを成立させ、エース左腕・パクストン、守護神・ディアス、正捕手・ズニーノ、打線の中心・カノなどを放出。さらに、主砲のクルーズもFAでツインズへ移籍した。引き換えに、通算380本塁打のエンカーナシオン、同286本塁打のブルースらを獲得。菊池加入も含め、チームの顔ぶれは大きく変わった。
また今季は、アスレチックスとの開幕戦が東京ドームで行われる。菊池の入団会見に同席したサーピス監督は、「彼は東京のマウンドを争うことになる」と、開幕投手候補の一人として期待を寄せる。
菊池自身は、「こっち(MLB)に来ることが目標ではなく、結果を出すことが目標」とキッパリ。「日本で積み上げてきたものを評価してもらってこの場にいる。まずは、自分が持っているものをしっかり出せるように。その上で、変えていかなければならないことも出てくると思うので、そこでアジャストしていくことが大事だと思います」と力を込めた。
ついに辿り着いたメジャーの舞台。1年目から先発陣の柱となり、“新生マリナーズ”の象徴になってほしいところだ。