◆ 手繰り寄せた夢への挑戦
日本を代表する怪物左腕が、ついに夢への扉を叩いた。
ポスティングシステムを利用してメジャー挑戦を目指していた西武の菊池雄星が、シアトル・マリナーズと正式に契約を締結。2019年シーズンより、戦いの舞台をメジャーリーグに移すことが決定した。
「15歳の時、花巻東の佐々木洋監督にメジャーを目指そうと言っていただいてから12年。毎年その思いは膨らむばかりでした」。7日に古巣・西武の球団事務所を訪れて挨拶をした菊池は、これまでの歩みをしみじみと振り返る。
甲子園でヒーローになり、高卒でのメジャー挑戦も視野に入れていた2009年秋。あの時、一度は封印していた夢…。菊池は9年間のプロ野球生活でもう一度その夢を手繰り寄せ、『行ってらっしゃい』と背中を押してもらうだけの成果を挙げた。円満な形で、世界最高峰の舞台へと巣立っていく。
◆ “イチロー”という存在
やはりマリナーズに入団するとなったら、注目されるのが日本人選手との“競演”。現在マリナーズに在籍している日本人と言えば、45歳になったイチローである。
昨年、古巣であるマリナーズに戻ったスーパースター。大きな期待を背負った一方、シーズン前のケガやそれに伴う調整不足からくる不振に苦しめられ、昨季の出場はわずか15試合だけ。5月の頭、シーズン中に「会長付特別補佐」に就任することが発表され、それ以降は選手として出場しないという異例の契約を結んでいた。
それでも、イチローはチームに残ることを決断。現在は3月に日本で行われる開幕戦の出場に向けた調整を行っている。
そんなわけで、イチローとチームメイトになることが決まった菊池。イチローについては「僕が初めて野球を観に行ったのが、ちょうどイチローさんが日本でプレーする最後の年だった」と振り返り、「その思い出がずっと残っているので、僕にとってもスーパースターのイチローさんと同じ時間を過ごすことができるというのは一生の財産になる。少しでも多くのものを吸収したいと思っています」と嬉しそうに語った。
新天地となるマリナーズは、このオフに多くの主力選手を放出するなど、いわゆる“解体&再建”へと舵を切っている。昨年までとは顔触れが大幅に変わったチームのなかで、日本からやってくる左腕にかかる期待も大きい。
「とにかく1年目からローテーションの一員として投げること。チームの中心となって活躍しなければいけないと思っています」。そう力強く言い切ったように、夢の舞台で戦う覚悟はできている。
◆ 同郷・大谷翔平への想い
また、どうしても期待してしまうのが、同リーグ・同地区のエンゼルスに所属する大谷翔平との対決だ。2人は同じ岩手・花巻東高の出身であり、菊池にとっては自分よりも先に夢を叶えた後輩との“再戦”となる。
そんな関係が注目を集めることについては、「彼がプロに入ってから、僕が望む・望まないに関わらず比較されることはありましたけど、彼がプロ1年目の頃からずっと思っているのは、2人で活躍することで野球界が盛り上がれば良い」と語っており、ライバル心というよりも協力的な意味合いが大きいような印象。
続けて、「これからも変わらず、比べられることや対戦することもあるでしょうけど、まずはすでに結果を出している彼に僕が続くこと。そうすることで岩手で野球をやっている人たちや夢見る野球少年たちに『僕もできる』と思ってもらえれば、それが一番の望みです」とし、共に地元・岩手を勇気づけるようなプレーを望んでいる。
なお、大谷は今季がトミー・ジョン手術明けのシーズンとなるため、投手は封印して打者一本での戦いが濃厚。菊池雄星との直接対決はどれだけ実現するのか、今から楽しみだ。