中日・松坂も慣れ親しんだ「18」に

◆ 今季は3投手が変更に

 プロ野球選手にとって、自身の代名詞ともなり得る背番号は、背中についているもうひとつの“顔”とも言えるものだ。

 そんな背番号のなかでも特に注目されるのが、「18番」ではないだろうか。かつては、堀内恒夫や米田哲也といった往年の名投手たち、近代野球であれば桑田真澄や前田健太など主戦投手がこぞってつけたことからエースナンバーと称されたが、2016年に三浦大輔が引退して以降はその顔ぶれがやや地味になった感がある。

 しかし、今季は2年連続で沢村賞に輝いている菅野智之をはじめ、昨季カムバック賞を受賞した松坂大輔、そしてロッテ移籍後に45勝を挙げて復調を果たした涌井秀章が18番を背負うことで、注目の背番号になりそうな印象がある。

 チームからエースとして認められた“証”とも言える「背番号18」だが、果たしてエースナンバーを背負った投手たちの初年度はどんな成績を残しているのだろうか。

◆ 期待が裏目に出た中日の若手投手たち

 検証したのは、2000年以降で「背番号18」に“替えた”投手たち。日本ハムのドラ1ルーキー・吉田輝星のように1年目から与えられた投手ではなく、プロの世界で数年実績を残し、いわゆる“出世”するかたちでエースナンバーを託された投手たちに絞って調べた。

 まずは2000年から2008年までを見ていこう。(※近鉄、楽天は該当者なし)

▼ 2001年
ギャラード(中日/前52番)
[当年成績] 47試 0勝1敗29セーブ 防2.12
[前年成績] 51試 1勝2敗35セーブ 防2.68

▼ 2002年
藤井秀悟(ヤクルト/前23番)
[当年成績] 28試 10勝9敗 防3.08
[前年成績] 27試 14勝8敗 防3.17

▼ 2003年
山口和男(オリックス/前14番)
[当年成績] 一軍登板なし
[前年成績] 41試 2勝3敗6セーブ 防2.50

▼ 2004年
朝倉健太(中日/前41番)
[当年成績] 14試 3勝3敗 防4.08
[前年成績] 6試 1勝4敗 防7.89

▼ 2006年
中里篤史(中日/前70番)
[当年成績] 13試 1勝0敗 防3.60
[前年成績] 2試 1勝1敗 防4.50

▼ 2008年
前田健太(広島/前34番)
[当年成績] 19試 9勝2敗 防3.20
[前年成績] 一軍登板なし

 前年にタイトルを獲得したギャラードと藤井秀悟。この2人は変更後も前年同様の成績を残し、背番号に恥じぬ活躍を見せた。また、佐々岡真司の引退によって空位になった18番を受け継いだ当時2年目の前田健太は、変更初年度に9勝を挙げてブレイク。翌年以降の大活躍へのきっかけを掴んでいる。

 一方で、背番号変更が裏目に出た選手もいる。なかでも当時、中日の若手として期待された朝倉と中里はいずれも平凡な成績に終わり、どちらも3年以内で背番号を変えることになった。

 ちなみに、2004年に背番号18をつけた朝倉は、その2年後の2006年に背番号を14番に変更すると、自身2度目となる2ケタ勝利を挙げてチームのリーグ優勝に大きく貢献。当時20代前半だったふたりの投手にとって、エースナンバーは少々荷が重過ぎたのかもしれない。

◆ 変更初年度にタイトルホルダーがふたりも誕生

 続いて、過去10年にあたる2009年から2018年までに変更した投手を見ていく。

▼ 2009年
涌井秀章(西武/前16番)
[当年成績] 27試 16勝6敗 防2.30
[前年成績] 25試 10勝11敗 防3.90

▼ 2010年
岸田 護(オリックス/前14番)
[当年成績] 57試 6勝5敗12セーブ・11ホールド 防3.27
[前年成績] 19試 10勝4敗 防3.10

▼ 2012年
杉内俊哉(巨人/前47番)
[当年成績] 24試 12勝4敗 防2.04
[前年成績] 23試 8勝7敗 防1.94

▼ 2018年
武田翔太(ソフトバンク/前30番)
[当年成績] 27試 4勝9敗1セーブ 防4.48
[前年成績] 13試 6勝4敗 防3.68

 松坂大輔のメジャー移籍以降、空いていたエースナンバーを受け継ぐかたちになった涌井は自身初の沢村賞を獲得。また、巨人史上初となる移籍選手による背番号18をつけた杉内はその年にノーヒットノーランを達成するだけでなく、最高勝率のタイトルも獲得。他にも岸田や藤川らは中継ぎ投手としてチームに大きく貢献し、背番号に恥じない活躍を見せた。

 一方で物足りなかったのは、退団した松坂から背番号18を引き継いだ武田翔太か。“前任”の松坂はメジャーでの戦いを終えてソフトバンクで日本球界復帰を果たすも、かつての輝きを取り戻すことができずに3年で退団。その悪い流れを引き継ぐように、武田も4勝9敗と自身初のシーズン負け越しを喫した。

 2年連続の沢村賞獲得で名実ともに球界のエースとなった菅野智之。そして自身2度目となる背番号18への変更を経験した松坂大輔、涌井秀章は今季どんな成績を残すのだろうか。3選手の2019年に注目したい。

文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)

【福嶌弘・プロフィール】
1986年、神奈川県生まれ。バイク・クルマの雑誌の編集部を経て2015年からフリーライターに。父が歌う「闘魂込めて」を聴いて育ったため、横浜出身ながら生来の巨人ファン。『がっつり!プロ野球』(日本文芸社)、『プロ野球 復活の男たち』(宝島社)などに執筆。

この記事を書いたのは

ベースボールキング編集部

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