野球をできる喜び
昨年の8月、国が難病に指定する「黄色靭帯骨化症」の手術を受けたロッテの南昌輝が、復活を目指して二軍キャンプで腕を振っている。
昨年の5月には月間防御率0.82をマーク、前半戦だけで35試合に登板し、防御率3.00の成績を残した南だったが、前半戦終了後から身体に違和感を覚えたという。
そして昨年8月17日に手術。術後は「シーズンも終わりに差し掛かっていましたし、早く一軍にいきたいとか、何も考えていませんでした。復帰したいというよりも、練習ができて楽しいなという感じでした」と身体を動かせる喜びをかみしめ、9月中旬にはランニング、9月下旬にはキャッチボールを再開。10月下旬にはブルペンで投球練習を行うなど順調な回復ぶりを見せていた。
久々にブルペンで投球したときのことも、「思っていたより投げられていた。疲れてきたときにどれだけ投げられるかというのと、自分の中で身体に制限を作ってはダメだと思うので、限界を作らないようにと思っていた」と当時を振り返る。
ブルペンで熱のこもった投球
2月1日に春季キャンプが始まってからは二軍のキャンプに参加し、チームメイトとともに「全部のメニューをこなしている」。8日にはブルペンに入り、捕手を座らせて変化球を交えながら56球を投げ込んだ。
時おり清水直行二軍投手コーチと話し合う場面も見られ、南は「新しい変化球を練習したいなとか、自分の思っている感覚と見てもらっている感覚がどれくらい違うのかをすり合わせています」と充実のキャンプを送っている様子。
課題を持ちながら日々練習を積んでいることは、「身体を一回疲れさせて、疲れたときにどういう球を投げられるのかというのをやっている。身体が疲れてきて、感覚が悪くなってきたので、そういうときにちゃんと修正できるように」という言葉からもわかる。
新しい感覚を模索中
復活に向けてブルペンで投球練習を行っている南だが、“手術前の状態”に戻そうとしているのか、それとも“新しい形”を作っている最中なのか――。そんな疑問に南は「あの頃には絶対に戻れないと思うので、昔をベースに新しい投げ方、新しい感覚を探していきたい」と応じ、現在の状態に合った形を模索していることを明かしてくれた。
ブルペンでの投球も本格的に再開し、あとは打者との感覚を取り戻す作業になってくる。「病気になって特に思ったんですけど、あと何年野球選手としてプレーできるかわからないので、野球ができる間は思いっきり頑張りたい」。野球ができる喜びを噛みしめ練習に励む右腕が、再びマリンのマウンドで躍動する姿を楽しみにしている。
取材・文=岩下雄太