「前橋中央ボーイズ」と「前橋ボーイズ」とチームを二つに分けていることにも明確な理由があるそうだ。そしてチームの方針を伝えたうえで、それに合わない選手は無理に入団を勧めないという。
「自分で調べたり専門家の方のお話を聞いてみると、中学時代は身体の成長のばらつきが一番大きい時期なんですよね。例えば今の2年生で一番身長が低い子と高い子では40㎝くらいの差があります。それだけ違う子が一緒にやるのはお互いにとってメリットがないと思うんですね。だからうちは身体の大きい子は前橋ボーイズ、小さい子は前橋中央ボーイズというチーム分けをしています。
あとどうしても機会を与えたいので、試合に出るのは年功序列で上の学年の子を優先します。だから説明会の時にはバリバリできるような子で、下級生のうちから試合に出られるような選手は他のチームの方が良いのでは?という話はします。
以前、キューバのアカデミーのことを調べた時にやはり身体の大きさや能力に合わせてカテゴリー分けしていたんですね。キューバは社会主義の国ということもあってその上はピラミッド型に選抜されていくのですが、日本の場合はそうではないので、上手くそのカテゴリーごとに野球を長く続けてもらえるような構造ができれば良いのではと思っています」
以前、筑波大学の川村卓准教授にお話をうかがった際も、年齢でチーム分けするのではなく身体の大きさで分けた方が良いという話をしていたが、まさにそれを実践しているチームと言えるだろう。チームの方針としてもう一つ徹底していることはメディカル面でのチェックだ。
「これは昔からやっていることですが、館林市にある慶友整形外科病院のスポーツ医学センターにお願いして、入団する時と入団後と定期的にメディカルチェックは行うようにしています。今でも毎年数人いるのですが、入団してきた時に重度の故障をしているケースもあります。そういう子はまずしっかり故障を治すまでは練習に参加してもらわないようにしています。
あと硬式のボールを扱うということでどうしても危険が伴うので、子どもたちがいる方向にボールが飛んでいった時は大声で注意するようにしています。逆に言うとそれ以外はあまり無駄な声かけはしないようにしています」
実際に練習中もボールが飛んでいったときは大きな声が出ていたが、それ以外は「ナイスバッティング」などの褒める声を掛け合う程度で、中高生の練習らしくない光景だった。このような環境も野球のプレーに集中できる一因と言えるだろう。
後編は実際の練習内容、一週間のタイムスケジュールなどについてお届けします。
(取材・西尾典文:撮影:編集部)