指導する際に「なぜ?」、「どうして?」と改まって子どもたちに聞くことを心がけていると東監督はいう。言われたから正すのではなく、なぜ正すのかを子どもたちが根本的に理解させることを徹底している。
「考えるという作業は野球において非常に大事。間違った動作を正す過程の中で、自分で『なぜこうなったのか? なぜ正す必要があるのか?』という課題にしっかり向き合ってほしいんですね。そのために、一度冷静になって身体の動きを分析する必要があります。例えば打ち気が強すぎて身体が開いちゃう子の場合はスマホで動画を撮り、本人に見せてあげます。客観的に自分を見ることも大切ですし、なぜこういう動作になってしまったかと理解できればそれが知識に変わります。その子に合ったスピードでいいので、一つ一つ考えながらやることが成長に繋がると思っています」。
また、「今日はバッティング練習を中心にしようと思うけど、どうかな?」など練習メニューについて子どもたちに聞いて、意見を求めるケースもあるという。そして、チーム全員が納得した上で練習に取り掛かる。分刻みのスケジュール通りに一日が進むことは確かに理想かもしれない。だが、一度立ち止まって、考えるという作業は無駄ではなく、それは子どもたちにとって良い機会と捉えることもできるだろう。
学業優先、高校選びは親身になってサポート
現代では「野球が上手ければいい……」といった考えは古いものであり、勉強と野球の両立が望まれる時代だ。子どもに合った高校に進学するためのサポートも近年のクラブチームには求められる。「ウチのチームでは学校行事や塾などを優先してもらっています。勉強も疎かにしてはいけません。あと、通知表は毎回チェックし、成績以外にも生活態度の欄を特に見ていますよ。やはりグラウンドと学校では性格や態度が違う子もいますから。子どもたちのことを少しでも理解したいと思っています。また、進路相談などは率先して行い、その子の希望や要望に応えるようにしています。例えば打力に力を入れているチーム、走塁意識が高いチームなど、高校によってそれぞれチームカラーや伝統というものがありますよね。そういった情報や知識はなるべく伝えてあげたいと思っています。やっぱりその子の長所を伸ばせるような野球部に進めれば自ずと活躍する確率は上がりますからね」。
高校野球を無事に終えた後、グラウンドに戻り後輩たちと接するOBも多い横浜港北ボーイズ。東監督が「気軽に戻れる環境」を理想に掲げるように、グラウンドの門戸は常に開かれている。大人たちが親身になって優しく子どもたちを成長させていく雰囲気がグラウンドに根付いている。
(取材・児島由亮、撮影:児島由亮、編集部)