従来、小学生が野球を始めるのは「スポーツ少年団」が一般的だった。
軟式野球倶楽部は、男子の「スポーツ少年団」では最大の競技人口を誇ってきた。全盛期には男子の60%。約40万人が軟式野球部員だったが、近年、部員数は激減している。
スポーツ少年団全体の男子部員数も2010年の62万人が2018年は48万人と大幅に減少している。少子化もあるがコミュニティの変化でスポーツ少年団を結成しない地域が増えているのだ。
しかし軟式野球の登録部員数はわずか8年で32%も減少。2016年には前年より297人増えて下げ止まってはいるが、多くの地域でチームが結成できない事態が生じている。
減少の要因は、少子化やスポーツ少年団の結成率の低下に加えて、指導者不足があげられる。これまでスポーツ少年団の指導者の多くは、選手の父兄が務めることが多かった。そうした指導者は子供が卒団するとクラブを離れることが多かったが、中には我が子が卒団してもクラブの指導を引き続き行う指導者もいた。スポーツ少年団はこうした熱心な指導者によって支えられていたが、高齢化が進んだこともあり、指導者が減少している。「野球をやりたい子がいても、クラブがない」状況が全国に生じている。
スポーツ少年団を抜けるクラブチームの増加
もう一つ注目すべきは「全軟連(全日本軟式野球連盟)」との関係だ。スポーツ少年団の軟式野球クラブは、全軟連にも加盟しているのが一般的だった。
スポーツ少年団軟式野球の全国大会である全国スポーツ少年団軟式野球交流大会は、日本スポーツ少年団と全軟連が共同主催していた。
しかし、近年、スポーツ少年団には属さず、全軟連にだけ所属するクラブチームが増えている。スポーツ少年団は公的助成があるが、地域のコミュニティや学校の枠組みで活動をするため、制約もある。意欲的な指導者の中には、そういう制約にしばられたくないという人がいて、スポーツ少年団に属さないクラブチームが増えたのだ。全軟連の学童チーム数は2017年で11792、スポーツ少年団のチーム数が6378だから5000以上のクラブチームが全軟連だけに加盟していることになる。
このこともスポーツ少年団の軟式野球競技人口の減少につながっている。関係者によればスポーツ少年団の軟式野球チームは競技人口の減少だけでなく、その指導内容や運営のレベルも低下している。(文・写真:広尾晃)
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