嬉しいプロ初勝利
ロッテの3年目・種市篤暉が、29日に行われた楽天戦で5回を2失点に抑え、嬉しいプロ初勝利を挙げた。
「昨年は7試合も投げさせてもらって不甲斐ないピッチングしかしていない。そこをずっと思いながらオフも過ごしていた」。春季キャンプ前の取材で種市は、昨季中にプロ初勝利できなかったことを悔やんでいた。
プロ初勝利、開幕一軍、さらにはシーズン通して一軍で活躍するため、自主トレでは、種市と同じフォークを武器にするソフトバンクの千賀滉大に弟子入り。体の使い方や、新しい技術を学び、空振りの取れる力強いストレートを手に入れ、クイックのスピードも昨季より速くなった。
「キャンプの時点で今年はワクワクしている状態でした」と、キャンプ、オープン戦で結果を残し、目標のひとつである開幕一軍を掴んだ。リリーフで開幕から安定した投球を披露し、巡ってきた今シーズン初めての先発での登板機会。このチャンスにしっかり、プロ初勝利という形で応えて見せた。
プロ入りからつける日記
「プロに入ってから日記はつけていますね」。
プロ通算8度目の先発で初勝利を手にした種市のルーティンのひとつになっているのが、日記をつけることだ。
「去年まではそこまで書いていなかった」と話すが、「今年は特に書いていますね」と日々の取り組みを毎日記すように心掛けている。
具体的には「今日投げた感覚のこと。特に気をつけていることは、感情を入れて書いています。たとえば『ここ打たれたから、こういう気持ちになった』とか、『ここをこうしたからちょっと違うな』というのを書いていったら、次の場面で『こういう気持ちだった』みたいなのを思い出して改善ができる」と教えてくれた。
シーズン中だけでなく、オフの自主トレ中も「(寮に)帰ってから絶対に忘れていることもあると思う。今もピッチングをしていたので、こういう感覚だったというのを書こうと思っています」と投球について記し、シーズン開幕前には「いいところ、悪いところを書いて、次への課題点は絶対に毎日書いています。明日やることを書いて、『ここを意識してやる。できたら次はこういうことを意識してやる』とか考えて書いています」と日々の反省に加え、自身の課題をクリアした後のことも考えていた。
またこの日記は、「あんまり良くなかったときは、良かったときのページを開いて見たりしています」と、自身の状態を戻すための目安にもなっており、移動中や練習後にも読み返し、日々成長するための土台になっている。
日記をつけることで、その日の取り組みを振り返り、客観的に自分を見つめてきた種市。プロ初勝利、今季開幕から一軍で好投を続ける背景には、日々の努力に加え、日記による振り返りで自身の状態を把握する能力が高くなったことも、関係しているといえそうだ。
取材・文=岩下雄太