吉田輝星
日本ハムの吉田輝星

◆ 白球つれづれ2019~第24回・吉田輝星

 やはり、この男、何かを持っている。日本ハムのルーキー、吉田輝星が12日に行われた広島との交流戦にプロ初登板。初先発で初勝利までつかみ取った。相手はセ・リーグの首位チーム、投げ合ったのは昨年の最多勝投手・大瀬良大地と、ハードルは限りなく高く思えたが、この18歳の若武者は周囲の期待以上の働きをしてしまうのだから、ただ物じゃない。

 全84球のうち67球がストレート。この真っ向勝負から見えてきたものとは何なのか? あらゆる角度から検証を加えてみる。まずは対戦相手となった広島の打者たちの声が興味深い。

▼ 西川龍馬(初回一死満塁で3球三振)
「初球の空振りの時に速いなと思った。久々にあんなにストレートがいいピッチャーを見た」

▼ 鈴木誠也(3回、ストレートに押されて右飛)
「きれいにくるボールがあったり、真っスラ気味だったり対応が難しい。指にかかった時のストレート(の素晴らしさ)はあまり見たことがない」

▼ 安部友裕(2打席とも二ゴロ凡退)
「スピードガン以上にズドンときていた」

 この日のストレートの最速は147キロ。プロでは“並み”の数字だ。それでも赤ヘルの強打者たちが舌を巻くのは、安部の談話に代表されるスピードガンでは表せないストレートの質の高さと、いくつかのストレートを投げ分ける技術の高さを持ち合わせている点だ。

◆ 伝説の剛腕を彷彿!?

 評論家の有藤通世はスポーツニッポン紙上で吉田を「伝説の剛腕」山口高志と重ね合わせている。1975年から82年まで阪急(現オリックス)に在籍した山口は、ほぼ直球一本で三振の山を築いた剛速球投手。あの野村克也が「自分の見た投手の中で一番速かった」と証言する。

 吉田が175センチと近年では小兵投手であるように、山口も169センチと決して大きくなかった。記録に残る山口の最速は153キロながら、対戦したほとんどの打者が「160キロは出ていた」と口を揃える。つまりスピードガン以上に伸びのあるボールを投げていたということ。

 吉田の金足農時代を思い出して欲しい。強気に押していくストレート主体の投球で夏の甲子園に準優勝、一大旋風を巻き起こした。

 高めのストレートに、対戦打者はことごとく空振り三振に倒れている。スピンの効いたストレートは打者の手元でホップする感じと言われる。厳密には初速と終速がほとんど変わらないため肉眼では浮き上がってくる感覚に襲われる。山口以外なら江川卓もそうだった。吉田には伝説の男たちに並び得る素質があるという事でだろう。

◆ エースの資質

 もうひとつ、吉田の非凡さを「気持ちの強さ」と指摘する関係者は多い。この試合、初回一死満塁のいきなりのピンチで西川を全球ストレート勝負で三球三振に斬って取りピンチを脱した。並みのルーキーなら緊張と動揺に自らの投球を見失ってもおかしくない場面で一段、ギアを上げられる。すでにエースの条件を持っている証だろう。

 とは言え、このまま順調に白星を積み上げていけるのか? と問われれば、まだまだ課題は多いと言わざるを得ないのも事実。各チームとの対戦が一巡するまでは、広島打者の反応同様に通用するかもしれない。だが、各チームの研究が進めばストレート一本では苦しい。江川には快速球だけでなく一級品のカーブがあった。吉田はスライダーやフォークを投げているが、その精度を上げて緩急をつける投球のマスターが急務。そこまで行けばローテーション入りも確約される。

 それにしても札幌ドームの入場者数は普段の平日ナイターより1万人増で、札幌地区のテレビ視聴率は21.4%と今季最高を記録するなど、スター性は申し分ない。

 次回登板予定は23日、中日戦(ナゴヤドーム)が見込まれている。対戦する相手投手は清水達也が有力視されており、こちらは一昨年夏の甲子園の優勝投手だ。まもなく、夏本番。吉田の周囲も熱くなる一方だ。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)



【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

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