◆ ピンチにも堂々たる投げっぷり
ベイスターズの先発を務めたドラフト1位ルーキーの上茶谷大河が6回途中無失点と好投し、自身5連勝となる5勝目(3敗)を挙げた
指揮官は、交流戦で強打のライオンズ、ホークス、イーグルス相手に、防御率1.96と堂々たるピッチングを披露した肝っ玉右腕に、前半戦の山場となる9連戦初戦のマウンドを託した。
序盤2回までは若干ボールが甘く入る場面も見受けられたが、3回以降は落ち着きはじめた。勝利投手の権利が手に入る5回は、二死1,2塁のピンチで同じくルーキーの近本光司をチェンジアップで空振りの三振に打ち取るも、キャッチャーの伊藤光がボールを後逸。二死満塁のピンチを迎えたが、続く糸原健斗を再びチェンジアップで三振に仕留め、「1イニングで4三振」を記録し、ピンチを切り抜けた。
6回は3番・糸井嘉男、4番・大山悠輔に連打を許し、無死1,2塁のピンチ。それでも、マルテ、梅野隆太郎を冷静に打ち取り、二死までこぎつけた。しかし、当たっている高山俊に、この試合はじめての四球を出したところで降板。最終的には5回2/3を87球、被安打6、奪三振8、四球1という内容だった。
その後、石田健大、三嶋一輝、エスコバー、パットン、山崎康晃が無失点リレーを見せ、上茶谷には球団ルーキータイ記録となる5連勝で5勝目をマーク。9連戦のアタマを、理想的な形でものにした。
◆ 指揮官もルーキー右腕を絶賛
お立ち台に上がった上茶谷は「チームが勝ててよかった」と第一声。球団新人タイ記録については「ここで終わりじゃない。まだ勝ちたい」と語り、「今日はイニングを投げられず、中継ぎに迷惑をかけた。次は長く」と反省点も口に。最後は「2ケタ勝ちたい」とファンに向けて堂々と宣言した。
試合後ラミレス監督は、上茶谷について「ローテーションピッチャーの中で最も安定しているといっても過言ではない。どの相手でも、どの球場でも安定している点は、今永にも匹敵する」とエースを比較対象に挙げて絶賛した。
試合後、上茶谷は5回のピンチを振り返り、「三浦コーチに『そのまま投げればいい』と言われ、気持ちは切れることはなかった」とコメント。「三振が欲しい場面、ゴロを打たせたい場面で、思うような投球ができた」と一定の満足感を示したが、「今永さんのように緊迫した場面で長いイニングを」と、6回途中での降板を悔やんだ。
しかし、2回はソト、5回には伊藤光と、味方のまずい守備をカバーするピッチングはルーキー離れしている。前回、自ら決勝打を放った打撃も好調で、この日もセンター前へのヒットをマークするなど、投打に渡ってチームに貢献した。
上茶谷が初勝利をあげた5月18日から、チームは20勝11敗2分と上昇気流に乗り、4月16日以来の3位、4月19日以来の5割復帰に成功した。ラミレス監督が「モースト・インポータント・ゲーム」と掲げた試合で結果を残した上茶谷。ホエールズの大投手で、名球会メンバーでもある平松政次さんが背負っていた「27」が、上茶谷の背中で再び輝きを増してきた。
取材・文=萩原孝弘