7月9日に3投手が復帰登板
今週は、トミージョン手術にまつわるお話をしたいと思います。
先月7月9日、偶然3人が、ヒジ痛から戻ってきて、その日に各球場のマウンドに上がりました。このこと自体は、大きな話題にはなりませんでしたが、考えてみると、ヒジを痛めて、長いこと休んでいたピッチャーが、同じ日にマウンドに上がるという、非常に気になる夜でした。
最近は、日本でもアメリカでも、トミージョン手術を受けているピッチャーが多いのですが、この手術を受けると、全快後は、以前に増して、力強いピッチングが出来ると言われていまして、その昔はロッテの村田兆治さん、元メジャーリーガーの野茂英雄さん、この2人がそれを実証しています。
日本ハムの中村勝
さっき申し上げた7月9日に登板した3人。まずは、日本ハムの中村勝投手。ロッテ戦に先発して、この試合では、ロッテ打線に2回でKOされるなど、あまりいい所は見せられませんでしたが、得意の緩いカーブを使ったピッチングはまだまだ健在、復活を思わせました。
中村は埼玉県の春日部共栄高校出身で、2009年のドラフト1位で日本ハムに入団。2017年にトミージョン手術を受けました。その手術を受ける前の2014年から2016年の3年間では、30試合で10勝7敗と、高卒ルーキーとしては素晴らしい成績だと思いますが、ここで相当投げてしまったのかもしれません。2017年にトミージョン手術を受けるのですが、去年、復活をして、ようやくイースタンリーグで投げれるようになったのですが、本格的には今年からなんです。
彼の復帰登板は、2回でKOされましたが、少しづつマウンドの感じを思い出して、投げてくるのではないかと思います。
ロッテの佐々木千隼
そしてロッテの佐々木千隼投手。皆さんも記憶にあると思います。2016年のドラフト会議では、どの球団も彼を欲しがりました。プロ野球の世界では珍しい桜美林大学出身で、競合の末、ロッテに入団。入団した2016年は、学生時代に痛めたヒジを早く治すという事でしたが、同じ年に手術をしました。
2017年は試験的に16試合に登板しましたが、まだ思うようにはいかない。2018年の秋のキャンプから、ようやくピッチングが普通にできるようになったという事で、7月9日のゲームで先発。私はテレビで見ただけなのですが、非常に伸びのあるストレートで、これがドラフト1位のストレートなんだなと思いました。7回、104球、被安打5、1失点で、復帰早々、勝利投手になり、 井口監督が大喜びをしていました。
佐々木投手は、右肘の手術から2年ぶりの投球でしたが、質のいいストレートを投げていました、ロッテは先発投手に困っている部分もあったので、彼が救世主になるかどうか、皆さん注目していると思います。
楽天の則本昂大
もう一人、この日に投げたのが、楽天のエース・則本昂大投手です。去年は27試合に登板して、10勝11敗という成績。彼はトミージョン手術ではないのですが、7月9日のオリックス戦に復帰登板して、6回90球、被安打3、三振6、失点0、スピードも152キロを出していました。凄いですね。
則本投手は勝利投手になって、この勝利は、楽天の10連敗を止めたわけです。楽天に明るい光がともった瞬間でしたね。デビューイヤーの2013年に170イニングを投げ、その後の5年間、エースとして投げ続け、ヒジがついに悲鳴をあげてしまったんですが、先日のピッチングで、手術の後が順調だという事もわかって、ホッとしましたね。
7月9日、偶然にもヒジ痛からカムバックしてきた3人のピッチャーが、同じ日にマウンドに上がって、日本ハム・中村投手は、トミージョン手術の後は良くなったんですが、ピッチングはもう一息だった。ロッテ・佐々木投手は、ピッチングの良さ、ドラフト1位の片鱗を感じさせた。楽天・則本投手はチームの10連敗を阻止した。これから、明るい話題になりそうな選手が出てきました。
職業病と先駆者
トミージョン手術というのは、今でこそ簡単にやりますが、ロッテの村田兆治さんが、日本で初めてトミージョン手術を受けたかと思います。当時は「ピッチャーは絶対ヒジにメスを入れてはいけない」と言われていて、村田兆治さんも結構、反対されたそうですが、それをやる以外投げられない。痛くて投げられないということで、彼は意を決して、アメリカに行って、手術を行いました。
結局、彼が先駆者となり、その後、アメリカ・大リーグでもトミージョン手術を受ける選手も増えました。大リーグの選手のプロフィールには、《何年にトミージョン手術》という情報が出ています。結構、大勢いるんですね。これは村田兆治さんの様子をみて、やるようになったのではないかと思います。
最初に言ったとおり、トミージョン手術を行ったピッチャーは、手術をする前より後の方が、いいボールが投げられると言われるようになり、その他の選手も簡単に受けるようになりました。
こういう手術は、あまり受けないほうがいいとは思うのですが、このヒジ痛というのは、ピッチャーの職業病です。肩痛というのは、投げ方が悪いから肩を壊す。ヒジ痛というのは、一つの勲章だと思うのですが、なんとも厄介なものですね。