◆ 福田、美馬獲りに参戦

 高津臣吾新監督体制となったヤクルトの組閣が10月末に発表された。最下位に沈み、監督が変更となったこともあり、今シーズンとは顔ぶれが大きく変わっている。

 投手コーチには、セ・パ両リーグに加えMLBでもプレー経験のある斎藤隆氏が就任。同じくMLB経験のある高津監督と初めてタッグを組む。二軍監督にはブンブン丸こと池山隆寛氏、二軍打撃コーチには畠山和洋氏と、現役時代はヤクルト一筋でプレーしてきた2人が育成の現場に携わる。

 ここからは戦力の上積みを行っていくことになるが、最下位からの巻き返しを図る今オフはFA市場にも参戦。権利を行使している福田秀平選手(ソフトバンク)、美馬学投手(楽天)とは既に交渉を行った。

 福田は内・外野を守れるユーティリティー性に加え、打撃力、走力も兼ね備えたマルチプレーヤー。層の厚いソフトバンクではレギュラーポジションを獲得できていないが、他のチームであればレギュラーを獲得していてもおかしくない。ヤクルトとしても、外野陣は高齢化が進み、バレンティンの去就も不透明、「競争があるのはあたりまえ。試合の頭から出たい」と話している福田の希望にも合致する。

 一方の美馬は今シーズン、先発ローテーション投手としてパ・リーグでは6人だけだった規定投球回に到達し、8勝(5敗)をマーク。規定投球回には過去4年3度到達しており、先発陣が手薄なヤクルトにとって、美馬は魅力的な存在だ。今のところ、巨人、ロッテ、楽天との争奪戦となっているが、最も美馬を欲しているのはヤクルトで間違いない。

◆ 18年2位躍進、15年リーグ優勝

 FA補強を目指すヤクルトだが、ここ数年の補強には法則がある。新監督就任時に大きな動きを見せているのだ。

 今から2年前の2017年オフに小川淳司監督が再登板を果たした際は、FA市場には参戦しなかった。しかし、このオフはMLBの移籍市場が歴史的なスローペースだったことで、所属先が決まっていなかった青木宣親の獲得に成功している。

 青木にとっては古巣への復帰となり、受け入れも問題なく初年度からチームに溶け込んだ。この年は打率.327(495-162)と全盛期さながらの成績を残し、2位躍進に大きく貢献している。

 2014年オフに真中満監督が就任した際は、大引啓次と成瀬善久、2人のFA選手を獲得している。同一年度に複数人のFA選手を獲得したのは球団史上初の大盤振る舞い。さらに助っ人右腕・オンドルセクがブルペンの一角を担い、翌2015年には2001年以来、14年ぶりとなるセ・リーグ制覇を果たしている。

 このようにヤクルトは過去2回の新監督が誕生したオフに大きな補強を行うことで、いずれも最下位から上位躍進を遂げている。高津新監督が誕生したこのオフは、スコット・マクガフ、アルバート・スアレスの残留決定に加え、正遊撃手候補の元メジャーリーガー、アルシデス・エスコバーと契約。MLBでゴールドグラブ賞を獲得した名手を招へいするなど、さっそく補強に動いた。

 注目のFA市場は争奪戦の真っ只中。ヤクルトは意中の選手を射止め、“法則通り”の上位浮上となるだろうか。

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