ユーティリティープレーヤー
国内FA権を行使して鈴木大地が楽天に移籍した今、三木亮はもっともチームに欠かせないプレーヤーではないだろうか。
鈴木が今季、一塁(89試合)、二塁(9試合)、三塁(40試合)、遊撃(4試合)、外野(9試合)で出場したが、三木も一塁(1試合)、二塁(10試合)、三塁(24試合)、遊撃(56試合)に出場した。内野のポジションを全てこなす三木は、チームに欠かせない存在といえる。
三木といえば、準備の男だ。今年ロッテ浦和球場で行った自主トレでは、本職の遊撃だけでなく、二塁、三塁でもノックを受けていた。特に二塁は昨年、中村奨吾がフルイニング出場し、シーズン前の段階でも昨年と同様にレギュラーとして起用が予想されるポジションだった。
「セカンドで出ることはゼロじゃない。去年は(中村)奨吾が出ていましたけど、一軍、二軍を見ていてもセカンドでノックを受けている選手が全然いなかった」。
「そこは(中村)奨吾が外れたから戦力が落ちたといわれるのは、控えとしてはどうなのかなと思います。控えで自分が試合に出るのが一番いいですけど、そうなったときにはいつでも入れるような体の動きというか、確認というかそういうのをしておきたい。ポンと入れられたときに戸惑っている部分があれば、やっぱり駄目だと思う」。
自主トレ中にセカンドでノックを受けていた理由についてこのように話していた三木。シーズンが開幕してから中村が二塁で先発出場していたが、4月21日の日本ハム戦、試合前練習中のアクシデントでスタメンを外れた。そのときに、二塁で先発出場したのが三木だった。
この試合、無安打ではあったが、5回一死一塁の第2打席、「ランナー一塁だったので、右方向は狙っていましたけど、ランナーの後ろに打てればいいかなという意識でいった。たまたま一、二塁間に転がって、進塁打のような形になった。だいたい思うような打撃ができたかなと思います」と二塁・渡辺諒がセカンドベース寄りに守っていたのを見て、一、二塁間を狙い二ゴロで走者を進めた。
今季は昨季新人ながら全143試合に出場した遊撃のレギュラー藤岡裕大が、故障で2度離脱。そのときに遊撃で先発出場したのも三木だった。
「まあ十分かと言われたら、まだまだだと思いますけど、そこで自分の能力以上のものを求めても、自分で自分の首を締めるだけだと思う。ある程度、優しい目標というか、最低限のOKラインをどこに設定するかで、気持ちも変わってくる。自分で求めすぎないようにはしています」。
「途中から出るにしても、ヒット打ちたいとか、エラーできない場面でパッといくことが多かった。そこで結果を求めすぎて、空回りじゃないですけど、それで1日が終わるのがもったいない。そこは今年特にですけど、自分の持っているものを普段通り出せるような心構えをしている方が、結果が良いんじゃないかと感じだしたことで、切り替えられた部分があります」。
藤岡が2度目の離脱で、スタメン出場しているときに、心理面での変化があったことを教えてくれた。
藤岡が復帰後はスタメンでの出場が減ったが、『6番・二塁』で先発出場した9月21日のオリックス戦、5回の第2打席、「エンドランのサインが出ていた。カウント3-2だったら、ストライクだったら打たないといけない、ボールは見逃す準備はしていましたけど、全部ゾーン近くにきていたので、それだけだと思います」と12球粘ってライト前に運ぶなど、らしさを見せた。
三木自身にアクシデントも
故障者やアクシデントがあったときに、スタメンで出場したり、途中出場をしていたが、三木自身も5月24日に脳震盪特例措置で一軍登録を抹消、8月7日のソフトバンク戦の死球で『左第4手骨打撲』というのがあった。
「脳震盪とかもありましたし、死球もありました。大変っちゃ大変なシーズンでしたかね」とシーズン直後に今季をこのように振り返った。
「1年でいろんな経験ができた。夏場に(藤岡)裕大がいない状態で、スタメンが連続で何週間も出ていて、動きが自分のなかで悪くなってきた感覚があったりした。それとどう向き合うかも考えさせられた。いろんな経験ができたと思います」。
10月25日に都内の病院で『右膝蓋大腿関節軟骨損傷』と診断され、『鏡視下右膝軟骨修復術および右膝ガングリオン切除術』を受けた。球団の発表では、試合復帰まで4〜5カ月といわれている。複数のポジションが守れ、小技のできる三木は、チームにとって必要な存在。焦りは禁物だが、来年の開幕戦までに復帰できることを願うばかりだ。
取材・文=岩下雄太