福浦コーチの新しい定位置
昨季通算2000安打を達成し、今季限りで現役を引退したロッテのレジェンド・福浦和也。今季は二軍打撃コーチと選手を兼任していたが、来季は二軍ヘッドコーチ兼打撃コーチとなり、コーチ業に専念する。
今季ロッテ浦和球場で試合が開催される日は、外野のポール間をランニングし、その後打撃練習を行い、選手たちの指導を行うことが多かった。コーチ専任となった11月のロッテ浦和球場で行われた秋季練習では、選手たちがウォーミングアップ中、バックスクリーン横のライト側のフェンス前で選手の動きをチェックするのが福浦コーチの日課となった。
その理由について福浦コーチは「選手たちがどんな動きをしているかなと見るときに、あそこが一番見やすい」と話し、「選手の動きしか見ていないね。今日は(体が)重そうなのかなとかね」と教えてくれた。
福浦コーチがみた若手選手たち
打撃練習では選手たちに「下半身を使って打て」、「足を使って打て」と福浦コーチの檄が秋季練習中、毎日のように飛んでいた。
ルーキーの山口航輝も、打撃練習中に”足を使って打て”と言われていた選手のひとり。山口はシーズン中、福浦コーチから“お尻を落とさないように打つこと”、“背筋を伸ばして打つこと”について指導を受けた。
“お尻を落とさないように打つこと”、“背筋を伸ばして打つこと”のメリットについて福浦コーチは「猫背になったらどうしてもボールとの距離が取れないし、猫背によってしっかりした下半身を使って軸回転ができるのが、どうしても外から回りやすくなるし、腰も落ちちゃう」と話し、「(山口は)上半身の意識が強いから下半身を意識させている。下半身の力が伝わって最後に上半身になっていくわけだから、下半身をおろそかにすると力が伝わらないよね」と続けた。
育成の和田康士朗も今季は、“前かがみにならないように”と福浦コーチから助言をもらい背筋を伸ばした打撃フォームに変わり、打撃成績を向上させた。福浦コーチは「和田はもともと猫背になりやすいタイプ。猫背になるなと言っている」そうだ。
さらに、今季「去年まではレフト方向に打てたら調子がいいかなと思っていたんですけど、今年は向こうに飛ぶから調子がいいと全然感じなかったですね。逆に引っ張れなさすぎた」とシーズン終了直後に話していた香月一也について質問すると、福浦コーチは「今年に関しては、波が激しいかなと思いましたね。いいときは2、3本ポンポンと打つけど、ピッチャーによってタイミングなのかわからないけど、全然タイミングが合わない日が多い。波が激しいかな」と明かした。
今季二軍で本塁打王、打点王の二冠に輝いた安田尚憲は今季、何度も打撃フォームを変えているように見えた。それについて福浦コーチは「(打撃フォームを変えることは)僕はいいことだと思いますよ。僕も毎回変えていたし、逆にずっと一定で打てればいいかもしれないですけどね。自分のなかで何かを変えようというあいつの意識なんでしょうから、色々試していいんじゃないですか」と話した。
ただ、今年安田が1年間意識した“下半身の使い方”、“頭の位置を動かさないこと”に関して福浦コーチは「う〜ん、どうなんですかね。まだまだというか、使えているときは良かったし、使えなかったときは調子の波が激しいというか。打てなくなるときが長すぎるかなと」と指摘。
「そこは考えないといけないだろうし、今年に関しては左ピッチャーをほとんど打てていない。そこをどうやって変えていくじゃないですか。意識ですね」。
来季からはコーチ業がメイン
現役を引退し、来季からコーチの仕事がメインとなる。選手のときと違ったプレッシャーがあるのか——。
「どうなんですかね。やっているプレッシャーと教えるプレッシャーはまた違う。チームが勝たないといけないので、選手のときはチームが勝つのが一番ですけど、本人の頑張りだと思うので、そこは選手とコーチの違いだと思いますね」。
背番号も1998年から22年間背負ってきた『9』から、新人時代に着けていた『70』へと変更になる。長年着けてきた背番号『9』だが、「25年くらい着けさせてもらいましたし、十分でしょう」と寂しさはない。
また来季から97年以来背負う『70』については「第2の人生じゃないけど、ここからスタートしないといけない。やっぱりルーキーのときに70番だったので、70番になりましたけどね」と語った。
マリーンズには平沢大河、安田尚憲、藤原恭大、山口航輝と期待の若手が多くいる。若手を指導するうえで心がけていることについて福浦コーチは「僕はずっと見るしかない。良いときも悪いときも見ていかないと、もし選手から聞かれたときに答えないといけないだろうし、見るのが一番の仕事じゃないですかね」。リーグ優勝&日本一を達成した2005年以来のリーグ優勝を達成するため、またその後の黄金時代を築くため、ファームで若手選手を育てていく。
取材・文=岩下雄太