◆ 新たな時代を切り拓く旗手となるか
2月1日は野球界のお正月。長かったオフが終わり、プロ野球12球団がついにキャンプイン。新シーズンに向けた戦いが本格的にはじまる。
パ・リーグ3連覇を目指す西武は、例年通り宮崎県日南市の南郷中央公園野球場で始動。近年はオフの間につらい“別れ”を経て春を迎えることが多くなっているが、それは今年も例外ではない。
このオフはチームの柱である秋山翔吾が自らの夢を叶え、アメリカ・メジャーリーグに挑戦。戦力的にはもちろんのこと、精神的支柱だった男がいなくなった。ぽっかりと空いた穴をいかにして埋めていくのか、リーグ3連覇と日本一奪還に向けた大きな課題になる。
そんな中、注目が集まっているのが若き新リーダーの2人。強力打線のつなぎ役、そして守備の要としてリーグ2連覇を支えた源田壮亮はキャプテンに、扇の要を任されながら圧倒的な打撃で昨季リーグMVPに輝いた森友哉は選手会長にそれぞれ就任した。
◆ 「失敗を失敗で終わらせないように」
24歳の若さで新たな責任を背負うことになった森だが、2月1日の練習開始前にはチームの代表として挨拶を行うという一幕も。「リーグ3連覇、日本一を目指して頑張ります。南郷町のみなさま・ファンのみなさま、これから声援・応援をよろしくお願いします」と、詰めかけたファンに向けて力強く意気込みを語り、初日から早くもリーダーらしさを見せた。
捕手という負担の大きいポジションながら、昨季は首位打者のタイトルも獲得。渡辺久信GMに「彼なしに今年の優勝は語れない」と言わしめ、オフには大幅アップの年俸2億円(金額は推定)で契約更改と、大きな飛躍を経てプロ7年目のシーズンを迎える。
打の方では手応えを得た一方、守備面に関しては悩むことも多かった2019年。契約更改の場でも「打撃陣に助けられた試合が多かった。バッテリーで勝てたという試合を1試合でも多く作っていきたい」というコメントが出たように、捕手という部分に関しての自己評価は厳しめ。「死ぬほど失敗したので、失敗を失敗で終わらせないようにしたい」と、新シーズンに向けて闘志を燃やしていた。
持ち味である打の方のみならず、守の方でもさらなる成長が見られれば、秋山に代わる新たなチームの大黒柱としてその存在感は不動のものとなる。
◆ 松坂との競演にも…
また、オフ待っているのは“別れ”だけではない。多くのファンを沸かせた“加入”もあった。松坂大輔の復帰である。
実に14年ぶりの古巣復帰となるが、松坂本人も「一緒にやっていたというと、栗山(巧)選手と中村(剛也)選手くらいなので」と語っているように、感覚的には新しいチームで再出発、という気持ちの方が強いことだろう。
森も「レジェンドなので、何を話していいのかわからないですけど…」と、加入を喜びながらも驚きを隠せなかったが、「バッテリーを組んで、1勝でも多くできるようにしたい」と、コンビ結成を楽しみにしていた。
プロ野球界では、大投手が名捕手を育てるという例がこれまでにも多々ある。日米で活躍した経験豊富な右腕とともに戦うことは、森の捕手人生において大きなプラスとなることだろう。このキャンプはともにA班スタートとなっており、ブルペンで2人が競演する姿が今から楽しみだ。
思えば1年前も、エース・菊池雄星に主軸の浅村栄斗、さらには炭谷銀仁朗といった主力が相次いでチームを去りながら、「さすがに苦しいのでは…?」という周囲の見立てをひっくり返して見事に連覇を果たしている。
目立った補強もないなかでピンチをチャンスに変えることができたのは、現有戦力の奮起があったから。これまでの経験に新たな責任、そして新たな刺激を受けて、森友哉はさらなる成長を見せることができるか。新リーダーの奮闘がチームの命運を握っている。
文=尾崎直也