中日の「高卒3年目」選手
昨秋のドラフト会議では、“令和の怪物”こと佐々木朗希(大船渡高→ロッテ)に最多の4球団が競合。そのなかで奥川恭伸(星稜高→ヤクルト)と石川昂弥(東邦高→中日)にも3球団が競合し、森敬斗(桐蔭学園高→DeNA)も1位で指名を受けるなど、高校生の逸材が大きな注目を浴びた。
思い返して見ると、その1年前には、甲子園春夏連覇の立役者となった大阪桐蔭の根尾昂(現中日)と藤原恭大(現ロッテ)のコンビが複数球団から1位指名を受け、さらに報徳学園の大型内野手・小園海斗(現広島)にも根尾と同じ最多タイの4球団が競合。このように、毎年登場するゴールデンルーキーたちにファンの注目は移っていく。
そんな中、今回取り上げたいのが、さらに“もう1年前”のドラフト会議で指名を受けた高卒選手たち。高校通算111本塁打という看板を引っ提げ、早実・清宮幸太郎が7球団から1位指名を受けたことでも印象深いこの年だが、プロ入り後の2年で最も飛躍した選手と言えば、ヤクルトの村上宗隆だろう。
プロ2年目の昨季、レギュラーに定着して全試合出場を果たすと、36本塁打・96打点を叩き出す大暴れ。阪神・近本光司との激しい争いを制し、新人王にも選出された。
飛躍を遂げた同世代に追いつけ、追い越せ──。清宮や安田尚憲といった“ドラ1”組はもちろんのこと、下位指名にも楽しみな存在が多くひしめく1999~2000年生まれの選手たち。今回は中日の「高卒3年目選手」の現在地を見ていきたい。
ドラフト6位からの下剋上
中日は2017年のドラフトで5名の高校生を指名。一巡目は捕手の中村奨成を狙うもくじ引きで外し、再入札で社会人の即戦力投手・鈴木博志を獲得。その後、支配下の2位~6位はすべて高校生となった。
その中で、現在ブレイクの気配を漂わせている選手と言えば、ドラフト時は5名のなかで最も低い評価だった山本拓実ではないだろうか。
西宮市立西宮高からドラフト6位で入団。167センチ・71キロとかなり小柄な体格だが、150キロに迫る速球とキレ味抜群の変化球で打者に向かっていく投球が信条の右腕。ルーキーイヤーからファームで16試合に登板と場数を踏むと、9月には早くも一軍デビュー。兵庫県の出身、西宮市の高校に通った男にとって、“近くて遠い”聖地・甲子園で2回無失点と上々の投球を披露した。
プロ2年目の昨季はファームで13試合に登板して公式戦初白星を含む2勝(6敗)、防御率3.34という成績を残すと、一軍でも前年を上回る9試合に登板。プロ初勝利を含む3勝3敗、防御率2.98という力投を見せ、成長した姿を見せている。
小柄な身体を存分に使って投げ込んでいく姿は、どこかオリックスのエース・山岡泰輔を彷彿とさせる。山岡に似て研究熱心なところも持ち、オフにはチームの若手投手たちを中心に開催された「ドライブライン・ベースボール」の沖縄合宿に参加してさらなる能力の向上を図るなど、貪欲な姿勢が光る。
迎えたこの春も開幕一軍、ローテーション入りに向けたアピールを続け、オープン戦では2試合・7イニングを投げて防御率2.57と奮闘。目標に手が届きかけていたところで、開幕が延期となってしまった。
目指すところが不透明な今、調整もかんたんではないが、是非ともこのチャンスを掴み取ってもらいたいところ。シーズン開幕が実現した際には、中日の背番号59を要チェックだ。
夏の甲子園優勝投手も
2017年ドラフト組の高卒選手で、真っ先に名前を呼ばれたのは、2位指名の石川翔だ。
栃木の青藍泰斗高で“素材型投手ではNo.1”とも評された将来性豊かな右腕も、1年目に一軍登板を果たすなど順調な歩みを見せていたが、プロ2年目の昨季はファームで開幕戦に登板した際、右肘を故障。手術を受けたため、それ以降は実戦から遠ざかってしまった。
リスタートとなる今季は、2月のキャンプで打撃投手を務めるなど、少しずつ状態は上向き。今季はアクシデントなく歩みを進め、そのポテンシャルをアピールしていきたい。
投手ではもう一人、花咲徳栄高のリリーフエースとして夏の甲子園優勝投手になった清水達也という選手もいる。
こちらも1年目から一軍デビューを果たし、昨季は8試合に登板してプロ初勝利を含む2勝(2敗)。プロの舞台では先発として奮闘を見せている。
しかし、ローテーション定着に期待がかかった今季は、2月に練習試合で脇腹を故障したため戦線離脱。出遅れてオープン戦で登板することができなかったが、ここで開幕が延期となったことを追い風と捉えたいところ。開幕一軍入りへ、まずは万全の状態に立て直していきたい。
このほかにも、3位指名の髙松渡、5位指名の伊藤康祐といった野手勢も昨季はじめて一軍の舞台を踏んでおり、中日は2017年に指名した高卒選手が2年目までに全員一軍デビューを果たしている。
与田剛監督の下、昇竜復活へ向けて若き力が試されているなか、このチャンスをモノにできる選手はどれだけ現れるのか。特にこの「高卒3年目」世代から目が離せない。
中日の“高卒3年目”選手
<投手>
石川 翔(2位/青藍泰斗高)
清水達也(4位/花咲徳栄高)
山本拓実(6位/市西宮高)
<内野手>
髙松 渡(3位/滝川二高)
<外野手>
伊藤康祐(5位/中京大中京高)