清田が語る代打の難しさ
3月20日に開幕予定だったプロ野球は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開幕が無期延期となった。本来であれば、プロ野球が開幕し、多くのファンが球場で熱戦を楽しんでいたことだろう。私たちも取材自粛となるなか、これまでの取材を振り返りつつ、今回はマリーンズの“途中出場”する野手たちに注目したいと思う。
レギュラーで活躍する選手がいれば、途中から出場しチームに流れを変える選手もいる。試合展開が目まぐるしく動くなかで、途中出場する選手は、その試合に上手く入っていかなければならない。代打でいえば1打席で結果が求められ、代走は1点を争う極限の緊張感の中、走塁、盗塁ミスが許されない。守備固めで出場する選手は、“守備のスペシャリスト”として完璧な守備を求められるなど、レギュラーとは違った難しさがある。
昨季はスタメンで出場するだけでなく、代打での出場も多かった清田育宏。7月28日の楽天戦では、3-3の9回無死満塁で、9番・三木亮の代打で登場し、1ボール1ストライクから青山浩二が投じた139キロのストレートをライトへ弾き返すサヨナラ打を放った。代打では打率.296(27-8)、1本塁打、8打点と勝負強い打撃を披露した。
昨季、代打での勝負強さの要因について聞くと、清田は「使っていただいているのが、そういう場面なのでそういったところで結果を出すだけだと思っている」とその秘訣を明かした。
「スタメンは4打席もらえる。3打席ダメでも次打ってやるぞとか、どんどん切り替えられるんですけど、代打だと割り切りというか、積極性のなかにも冷静さをもたないといけない」。
「こうなったらいくよというのを自分である程度予想して、こうなったらここでいくだろうなとか、予想しながら待つというのが疲れますね。精神的に疲れるなというのは、ありましたね」。スタメンと違った代打の難しさについて語った。
難しさばかりではない。代打の経験がスタメンでも活きたという。
「今年(2019年)最初は代打である程度、代打の難しさとか楽しさとかいろいろわかってから、スタメンで出はじめたので、代打で1打席大事にする。すごくスタート(スタメン)のときにも生かされたかなと思います」。
岡の代走での心構え
代走では終盤、岡大海の“足”がチームの勝利を呼び込んだ。
清田が代打でサヨナラ安打を放った7月28日の楽天戦では、3-3の9回、四球で出塁した井上晴哉の代走で登場すると、続く中村奨吾の初球に二盗。柿沼友哉の捕手前のバントも、素早いスタートで三塁間一髪セーフとなり、清田の適時打でサヨナラのホームを踏んだ。
8月20日の楽天戦では、1-2の7回一死走者なしからレフト前安打を放った井上の代走で登場。角中勝也が放った打球が一塁ベースに直撃し、一塁線を転々としている間に一気に一塁からホームインした。
「相手の傾向を叩きこむというわけではないですけど、相手のピッチャーの映像を見てしっかり準備してやっています」。
「自分で塁にいって走っているわけではなく、いきなり塁上に立っていくので、リズムがないというのがある。しっかりスタートを切るイメージを想定して、塁上に立つようにしています」。
代走で好結果をもたらした裏には入念な準備があった。また昨季は、14度の盗塁機会で失敗はわずかに1つ。高い盗塁成功率を誇った。
ユーティリティプレーヤー三木の準備力
試合終盤、マリーンズで最も欠かせない存在となるのが三木亮。昨季は内野の全ポジションで出場すれば、代打では犠打を1つ決め、代走でも1つ盗塁を決めた。
昨季、代打で立った打席数は3だったが、そのうちの1打席がとても印象に残った。4月28日の楽天戦だ。9-8の8回無死二塁の場面でバルガスの代打で登場すると、相手もバントとわかりきった状況できっちりと初球でバントを決め、清田の適時打に繋げた。
「あの球場は天然芝なので、とりあえず転がせば、打球が死んでくれるのかなという感覚があった。転がすことだけを意識していました。その結果、ピッチャー前でしたけど、成功して良かったかなと思います」とバントの場面を振り返った。
途中から出場する難しさについては、「試合の展開にもよりますし、流れもあります。勝っていたりしていると、いい流れで行っている中で入っていくので、流れを切らさないように」と話した三木。
「本当にいつ出番がくるかわからない状況。いつ出されても後悔のないような準備の仕方をしている」と話し、試合前の練習から「バッティングにしても守備にしても、練習の1球目をしっかり良い形で入れるように意識しています」と高い意識を持って取り組んでいる。
その日、最高の準備をして試合で最大限のパフォーマンスを発揮するのは、スタメンに出場している時だけじゃない。途中出場するときも、来るべきときに最高の結果を残すため、選手たちは強い気持ちを持って準備している。
取材・文=岩下雄太