最速163キロ
種市篤暉、二木康太、岩下大輝、佐々木千隼、小島和哉、中村稔弥、東妻勇輔、成田翔、古谷拓郎…。
こうして名前を挙げてみただけでも、マリーンズは将来楽しみな投手が多い。そこに、大船渡高時代に最速163キロを記録したドラフト1位ルーキー・佐々木朗希が加入した。数年後には“投手王国”と呼ばれるような、投手陣を形成している可能性は十分にある。
なかでも、佐々木朗希がどのように成長曲線を描くのか非常に楽しみだ。2月13日にプロ入り後初めてブルペンに入り、立ち投げでの投球練習を行ったが、左足を高くあげたフォームから投げられたボールは、パーンというものすごいミットの音が、ブルペン中に響き渡った。佐々木朗希のボールを受けた柿沼友哉は「ものすごいボールだったので、手の衝撃もあったんですけど、左腕も張っちゃいましたね」と話すほどの威力だった。
そこから段階を踏んで調整をしていき、3月24日にZOZOマリンスタジアムで行われた練習で、プロ入り後初めてとなる打撃投手を務めた。投球練習から158キロ、157キロ、155キロと150キロ後半の球速を連発。実際に打席に立って佐々木のボールを体感した福田光は「背も高いですし、手足も長いぶんバッターとの距離が近く感じました。そういう部分では圧倒される感じがありました」と、改めてその凄さを語った。
小野コーチ「持っているポテンシャルが違う」
近年の高卒1年目のルーキーは、シーズンの大半を体づくりに費やし、夏場以降に二軍戦で初登板、10月のフェニックスリーグで登板を増やしていくというのが流れだった。
昨年高卒1年目だった古谷拓郎は、小野晋吾二軍投手コーチが「古谷に関しては予定より早く進んだというか、いい形でゲームに入っていけた」と話したように、早い段階でプロの体づくりに慣れたこともあり、4月17日のオールフロンティアとの二軍練習試合で実戦デビューし、5月5日の巨人との二軍戦で公式戦初マウンドを飾るなど、選手の状態に応じて様々な対応をとっている。
近年の高卒新人をファームで指導してきた小野晋吾二軍投手コーチに、春季キャンプ中、『走れて、投げられてという過程を踏んで、実戦を積んでおり、佐々木朗希投手も近年の流れに沿った育成になるのでしょうか』と質問すると、「ちょっとそことはまた違った選手というか、もっているポテンシャルが違う。実際にキャッチボールしている姿も自主トレのときと違ってガラッとよくなっている」と話すほど、能力が高い。
井口監督も球団公式インスタグラムで届いたファンからの質問に「まだプロに入ったばかりで体力も肉体も体幹もこれからもっともっとついてきて、もっともっと速い球を投げることが出来るようになると思います。キャンプからここまで行ってきた準備を継続的にしっかりとやってもらってまずは自身が記録した163キロ越え。そして165キロ。そして169キロを越えて170キロの域に達して欲しいなあと思っています」と期待を寄せる。
佐々木投手がプロ入り後初めて入った2月13日のブルペンで実際に初めて生の投球を見たが、あの時の衝撃が今でも忘れられない。そして、3月24日の打撃投手のときもスタンドから見ていたが、あの時投げたボールもすごかった。見るたびに、その衝撃をいつも更新していく佐々木朗希の凄さ。将来、どんな投手になっていくのか本当に楽しみでならない。
文=岩下雄太