高3夏は吉田を打てず…
「自分は吉田(輝星)のことをライバルと思っています。今年(2018年)の夏は自分が打てず決勝戦で負けてしまった。プロの世界に入って、自分がホームランを打って借りを返したいと思います」。
2018年12月4日に行われた新入団会見で、このように意気込んでいたのはロッテの山口航輝だ。
ロッテの山口と日本ハムの吉田輝星は、高校時代に甲子園出場を目指し、切磋琢磨した。高2年夏の秋田県大会決勝は、山口の明桜高が吉田輝星のいる金足農業高を下し甲子園出場を果たしたが、高3夏の決勝で金足農業高に敗れた。山口も吉田輝星の前に4打数0安打3三振。
「2年生のときは普通に打てるボールで、変化球も放れていなかったので、真っすぐ張っておけばどうにかなるピッチャーだった。そう考えると3年生になって球の質も変わって、変化球も良くなっていて成長していると思いました」。
初めて対戦した高校2年春のときから比べものにならないくらい成長したライバルを前に完敗だった。
そして、山口のいる明桜高校を破った金足農業高は夏の甲子園で、鹿児島実業高、大垣日大高、横浜高、近江高、日大三高を破るなど、快進撃を続け“金農旋風”が巻き起こった。決勝では藤原恭大(ロッテ)、根尾昂(現中日)らがいた大阪桐蔭高に2-13で敗れたが、秋田でしのぎを削ったライバルの吉田輝星は“甲子園”の舞台で躍動した。
山口は“金農旋風”、吉田輝星の甲子園での活躍を、その当時どう思っていたのかーー。
「(決勝で)負けたときは、金足農業に頑張って欲しいなと思っていました。ただ、甲子園の活躍をテレビとか、1回応援にも行ったんですけど、やっぱり悔しいというのが正直ありますね」。
プロでも名勝負に期待
秋に行われたドラフト会議で吉田輝星が、1位で日本ハムへ。山口も4位でマリーンズから指名を受けた。山口と吉田輝星は同じパ・リーグに所属するチームに入団が決まり、山口は「一緒のパ・リーグで嬉しかった」と喜んだ。
プロ1年目の昨季は山口が日本ハムとの二軍戦に19試合に出場し、吉田輝星もロッテ戦に一軍で2試合、二軍戦で3試合に登板したが、対戦は実現しなかった。
対戦が訪れそうな場面もあった。昨年3月26日に行われた日本ハムとの二軍戦は、吉田輝星が6回からマウンドに上がり、山口に打順が回ってきたが高濱卓也に代打を送られ、対戦とはならなかった。
山口は、吉田が投げていたボールに「だんだん速くなってきた印象。一昨日(19年5月8日)見てあいつらしい球を放っていた。今が本来の吉田のボールに戻っているんじゃないかなと思います」と対戦を待ち遠しそうにしている姿が印象的だった。
「早く対戦して、高校の時に抑えられているので、しっかり借りを返さないといけないと思います」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、プロ野球の開幕は無期延期となり、いつ開幕するかわからない状況だ。プロ野球が開幕したときに、山口と吉田輝星の“ライバル対決”が今季、一軍で実現することを期待したい。
文=岩下雄太