身近な存在、ライバルが最良の発奮材料!?
若手の成長はチーム強化に直結する大きな要素だ。レギュラー陣の顔ぶれが固まっているチームにとっては新たな刺激となり、低迷中のチームにとっては再建の目玉になる。新戦力の台頭は多いに越したことはない。それが束となり、一時代を築くこともある。
例えば2008年の西武は、前年2007年の5位から、一気にリーグ優勝、日本一にまで駆け上がった。当時26歳だった中島宏之(現巨人)と同学年だった片岡治大が二遊間でコンビを組み、1歳年下の栗山巧と中村剛也がレギュラーに定着。彼らが並んだ上位打線は“ヤングライオンズ”の象徴だった。2010年は優勝こそ逃したが、1位だったソフトバンクとゲーム差なし(2厘差)の2位。彼らが中心にいた2008年から2013年(中島は2012年オフに退団)までの西武は、6年間で一度も勝率5割を切ることはなかった。
2016年からリーグ3連覇を果たした広島も、同学年の菊池涼介、田中広輔、丸佳浩(現巨人)に1歳年上の會沢翼を加え、強固なセンターラインを構築。彼らが30歳を越えた現在は、ともに25歳の鈴木誠也と西川龍馬が打線の中軸を担い、新たな時代を迎えようとしている。
日本シリーズ3連覇中のソフトバンクは、2010年のドラフト育成枠で獲得した千賀滉大、牧原大成、甲斐拓也が一軍に欠かせない戦力に成長。しかも、同年に育成指名した6選手の中で、千賀が4位、牧原が5位、甲斐は最後の6位指名。切磋琢磨し這い上がってきた3選手は、“育成ホークス”の象徴と言っていいだろう。
根尾、石橋、石川昂、岡林ら有望株ズラリ!
今年の春季キャンプを取材してきた中で、将来が楽しみだと感じたのは中日だ。一時は大卒、社会人出身選手のドラフト指名が目立っていたが、2018年は根尾昂、2019年は石川昂弥を1位指名で獲得するなど、近年は有望な高卒選手を重視する傾向にある。根尾と石川昂は、地元出身のスター候補。今春キャンプでの練習試合で二人の共演を見守った与田剛監督は、「根尾と石川が並んだ打順は見応えがある。うちのカラーにしたいという思いもあるし、球界のスターになって中軸を任せられる選手になってほしい」と期待を膨らませた。
2年目の根尾は、春季キャンプ初の一軍スタート。中日のキャンプ地は一軍(沖縄・北谷町)と二軍(沖縄・読谷村)の距離が近く、根尾は一軍戦のみならず、二軍の試合に出場する機会も多かった。そこで、石川昂やドラフト5位の岡林勇希らと共闘。彼らは試合前練習でも同組となり、よく一緒に汗を流していた。そこで感じられたメラメラした空気感。根尾は後輩に刺激を受けたのか、キャンプが進むにつれスイングが大きくなり、力強い打球も増えた。
根尾と同じ高卒2年目で、正捕手を目指す石橋康太も目に留まったひとり。春季キャンプ中は夜間練習をサポートした武山真吾二軍バッテリーコーチへの感謝を何度も口にし、キャンプ後半は一軍昇格も果たし、オープン戦では3試合でスタメンマスクを被るなど首脳陣にアピールした。
2017年組のドラフト組には、今シーズン先発ローテーションの一角として期待される山本拓実をはじめ、石川翔、清水達也と楽しみな右腕3人衆がいる。野手でもスピードが売りの高松渡、力強いスイングが魅力の伊藤康祐と、楽しみな高卒3年目がズラリ。さらに、同4年目の藤嶋健人、石垣雅海も期待大だ。
中日は落合博満監督時代の2004年から2011年にかけ、日本一1度、リーグ優勝4度含む全8年連続Aクラス入りを達成。黄金期の主力だった井端弘和、荒木雅博、福留孝介、森野将彦も年齢が近く、当時を知るベテラン記者によると「キャンプでの練習は意地の張り合いだった」という。
その後、世代交代を上手く進められず、現在は7年連続Bクラスと低迷中だが、上述した通り、若手に楽しみな選手が揃っている。未来は明るい。3年後、5年後のチームを想像すると、期待せずにはいられない。