ニュース 2020.05.22. 11:44

“俺達の福浦”が引退試合で放った輝き ~プロ野球「“超個人的”名勝負」~

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ロッテ・福浦が引退試合で放った輝き… (C) Kyodo News

今こそ「あの名勝負」の話がしたい


 「新型コロナウイルス」の問題により、シーズン開幕の見合わせが続いているプロ野球。これまで当たり前のように行われていた野球の試合が突然奪われ、寂しい想いをしているファンの方も多いのではないか。


 そんな中、野球ファンの『#おうち時間』を盛り上げているのが、テレビやラジオで行われている「過去の名勝負」特集だ。

 当事者がハイライト映像を見ながら知られざる裏話を踏まえて解説してくれるという企画は過去にもあったが、最近では貴重なフルマッチを丸ごと流してしまうという大胆な番組構成も。家でお酒を飲みながら当時の懐かしい思い出にふけるファンや、話は聞いたことがあるけどしっかり見るのは初めてという若いファンまで、SNS上では様々な盛り上がりを見せている。


 というわけで、ベースボールキングでも過去の野球界の名勝負について取り上げる企画を展開中。今回は、弊サイトや『パ・リーグインサイト』、『プロ野球ai』などでロッテに関する取材記事をメインに執筆しているフリーライター・岩下雄太( @iwashitayuta )氏にオンライン形式で取材を行い、近年の中で特に印象に残っている試合についてお話を伺った。


文・構成=尾崎直也


浦和とマリンを主戦場とする岩下氏が選んだのは…


 マリーンズといえば、2005年の優勝~日本一だったり、2010年の“下剋上”といった栄光のシーンを思い浮かべるファンの方が多いのかなと思います。

 ただ、当時の私はまだ学生で、この世界で働いていなかったのはもちろん、実はドラゴンズファンだったんですよね…(笑)なので、しっかりとマリーンズの試合を見ていなかったこともあって、その当時の試合を挙げていくのは違うかなと。大変申し訳ございませんが…。

 それでも、今こうして取材をさせていただくようになり、過去のマリーンズについても猛勉強しています。ちょうど今は家で過ごす時間も多いので、“STAY HOME”の時間を使ってね。…なんか、言い訳っぽくなってしまいましたね(笑)


 私が現場での取材をはじめた2016年以降で言うと、2018年の岩下大輝投手や種市篤暉投手のプロ初登板、平沢大河選手のサヨナラタイムリー、昨年は岩下投手のプロ初勝利や三家和真選手のプロ初安打などなど…。やっぱり浦和での取材が多かっただけに、若手選手が一軍の舞台で躍動するシーンというのが印象深いんですよね。

 ただ、こういった企画で「1試合」を挙げるとするならば、やはり昨年は福浦和也選手の引退試合でしょうね。若手選手たちはこれから先、黄金時代を築いた時にも印象に残る試合をたくさんしてくれると思うので、彼らの話はその時にとっておきつつ、今回は福浦さんの引退試合を挙げたいと思います!


試合前から「福浦さんのために」


 2019年9月23日(月)、ZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ-日本ハムの一戦。上述の通り、この試合は福浦和也の“引退試合”として開催された。

 千葉県習志野市に生まれ、習志野高からロッテに入団。以来、鴎ひと筋26年で野球人生を走り続けてきた、まさに「フランチャイズプレイヤー」。ファンは「俺達の福浦」の最後の雄姿を見届けようと、本拠地・マリンには3万0343人の観衆が詰めかけた。


 岩下氏は、「福浦さんの引退試合を迎えるにあたって、選手たちにはその人物像がよく分かる思い出やエピソードなどを聞いて回っていたんです。ほとんどの選手が、試合に向けての準備や野球に対する姿勢について挙げていましたね」と当時のことを振り返る。

 その人柄から後輩たちにも慕われ、この日は全選手がグラウンド入りから『THANK9福浦Tシャツ』を着用。当時のチームは楽天との3位争いの真っ只中にあったが、全員が「福浦さんのために勝つ」という想いを胸に試合に臨んでいたことが垣間見えた。


 「打撃練習になると、多くの選手が真剣な表情で“最後の打撃練習”を目に焼き付けようとしていたのが印象的でした。あとは、練習が終わった後に、裏方さん一人ひとりと握手を交わす場面があって。そこにも福浦さん人柄がにじみ出ていて、ジーンと来るものがありましたね」

 球場中の全員が特別な時間を噛み締めながら、プレイボールの瞬間を待った。


最後の最後で魅せた!


 14時01分、ついにプレイボールの号令がかかる。福浦は「7番・指名打者」でスターティング・ラインナップに名を連ねた。

 試合は気合いで勝るロッテ打線が序盤から猛攻。初回に鈴木大地の適時二塁打で幸先よく先制すると、さらに井上晴哉と清田育宏にも適時打が飛び出し、初回から一気に3得点。さらに2回・3回と立て続けに得点を重ね、3回終了時点で5-0とリードを拡大していく。


 一方、主役の福浦は第1打席で23歳年下の左腕・堀瑞輝と対戦。内角の速球に詰まらされて遊ゴロに終わると、3回の第2打席は右腕の西村天裕に対して投ゴロ。高めのボールを弾き返したが、うまく反応されて2打席凡退に終わる。

 迎えた5回、今度は2000年生まれの若き左腕・北浦竜次との対決。甘く入ったボールにバットを合わせていくと、良い角度の打球が右中間へと舞い上がったが、これは右翼手の守備範囲。球場を大いに沸かせたが、第4打席も捕飛に倒れ、現役最終戦で2001本目の安打を記録することはできなかった。


 しかし、このままで終わらないのがレジェンドのレジェンドたる所以。9回表、ロッテはシートの変更で指名打者を解除。福浦を一塁の守備に就かせる。

 「あの場面は興奮しましたね。守備位置に向かう際には、一塁ベースコーチの根元俊一コーチ、それから鈴木大地さんとハイタッチをして、深く一礼をして守備に就く。すんごい笑顔だったんですよ」


 9回は守護神・益田直也が安打を許しながら、三振ふたつで二死。球場のファンとしては、「なんとか最後に福浦のところにボールを…」。「内野ゴロなら、最後の瞬間にウイニングボールが福浦のミットに収まる」。そんなことを祈りながら見ていた方が多かったのではないか。

 打席には平沼翔太。第1球を投じる前に、益田は一塁に牽制球を送る。後輩の計らいに微笑みを見せつつ、しっかりとボールを受け取って返す。そんな心温まるシーンからほどなく、益田が投じた速球がやや甘く入ったところを、平沼は逃さずにフルスイング。低く鋭いライナーが地を這うようにして一二塁間を襲う。

 ところが、カメラが切り替わった瞬間、ボールが消えた。映っていたのは、横たわっている背番号9。強烈な弾丸ライナーを横っ飛びで掴み、自ら引退試合の最後のアウトをもぎ取ったのだ。


 右手のミットを高く掲げて笑顔を見せると、スタンドのファンは総立ち。益田と両手でハイタッチをしてから抱き合い、それから駆け寄ってきた野手とも同じように抱き合う。鈴木大地は泣いていた。

 「あの時の、場内の“福浦コール”と鳴りやまない拍手。あれには本当に鳥肌が立ちましたね」。岩下氏も一瞬だけ仕事を忘れ、その瞬間に酔いしれたのだという。


 「クライマックスシリーズ争いが佳境のなか、福浦選手を起用して見事な勝利。勢いに乗って、よし行けるぞ!と思った中で、翌日にはライオンズに敗れてその望みが絶たれてしまった。目の前で優勝を決められて、胴上げを目の当たりにしたこと。そんな悔しい思い出もセットで蘇ってきます」

 それでも、この経験を糧に、2020年以降のロッテが高く高くジャンプしていくことを、岩下氏は願っている。


 「マリーンズは本当に楽しみな若手選手が多い。今季に向けても、チームの課題だったリリーフ陣をしっかりと補強しましたし、FAでは美馬学投手と福田秀平選手を獲得しました。年が明けてからも、練習試合で若手内野陣のアピールが足りないなと感じていたところに、経験豊富な鳥谷敬選手が加入。長期的に強いチームを作るための土台作りをしながら、今年優勝するための準備もしっかりしています。早くシーズンが始まって欲しいですね」

 新型コロナウイルスの問題により、依然としてシーズンの開幕は延期の状態が続いている2020年。新生ロッテはパ・リーグの台風の目となるのか、開幕が待ちきれない。


2019年9月23日(月) ロッテ - 日本ハム


▼ ZOZOマリン
日|000 000 100|1
ロ|311 010 00X|6
勝:石川(ロ)
負:堀(日)
⇒ 詳細はコチラ


【スタメン】
・先攻:日本ハム
(三)平沼
(右)大田
(中)西川
(左)近藤
(二)渡邉
(指)田中賢介
(一)清宮
(遊)石井
(捕)清水
先発P. 堀

・後攻:ロッテ
(中)荻野
(三)鈴木
(右)マーティン
(一)井上
(左)清田
(二)中村奨
(指)福浦
(捕)田村
(遊)藤岡
先発P. 石川

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