逆境から這い上がり続けた男
月が変わって6月。2日からは開幕へ向けた対外試合もはじまり、各選手の調整のピッチも徐々に上がっていく。
開幕一軍入りへのサバイバルも激しくなっていく中、西武では163センチの小兵が勝負の時期を前に猛烈なアピールを見せている。プロ8年目・水口大地だ。
大村工高から四国・九州アイランドリーグの長崎セインツに入団するも、チームが経営難のために解散。そこから四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズへと移籍を果たすも、ケガのために一時は選手契約を解除され、“練習生”という扱いで裏方の仕事を手伝いながら、ケガを癒した後にレギュラーとして大活躍。2012年の育成ドラフト1位で西武から指名を受け、ようやくプロへの扉をこじ開けたという苦労人である。
俊敏な動きで内野ならどこでもこなし、プロ3年目の2015年にはファームで月間打率.414という好成績を残してイースタン・リーグの月間MVPを受賞。その月、晴れて支配下登録も勝ち取る。
2016年は開幕を一軍で迎え、2017年はキャリア最多の56試合に出場。一軍での出番も増やしていったが、ここ2年はファーム暮らしが長くなり、一軍に定着までは至っていない。
今春も、オープン戦で5試合に出場しながら打席は3回のみ。なかなかアピールをすることができなかったが、調整の難しい自粛期間中に「走攻守すべてレベルアップ!」を掲げて奮闘。電話でトレーナーにアドバイスをもらいながら、自ら考えたメニューでウエイトに注力してきた。
すると、その効果はさっそく現れる。5月29日に行われた紅白戦で3打数2安打、1盗塁の大暴れ。オープン戦でのうっぷんを晴らすような躍動を見せた。
特に手ごたえを感じた打席と振り返るのが、リード・ギャレットと対峙した第2打席。新助っ人の150キロを超える速球になんとか食らいついて粘り、最後はその速球をライナーでレフトの前に弾き返す。
「いつもだったらファウルになっていたと思います。阿部コーチ、赤田コーチに指導いただき、『強く打ち返す』ということを意識してやってきた。いい感覚だと思います」
水口は充実した表情で語った。
内野ならどこでも守れ、緊急時には外野のポジションに入ったこともあった。ユーティリティー性という大きな強みを持っているだけに、あとは“打撃でのひと押し”ができるかどうか。これが開幕一軍入りのポイントになってくる。
「まだ数日だけど、今までにない感覚。勝負できると思います」
開幕一軍をかけたサバイバルレースを前に、静かに闘志を燃やす背番号0。2日からはじまる練習試合ではどんな姿を見せてくれるのか、今から楽しみだ。