2位と2.5差の首位
約3カ月遅れてはじまったプロ野球の2020年シーズンも、開幕から1カ月とちょっとが経った。各球団が30試合前後を消化した中、セ・リーグでは連覇を狙う巨人が好スタートを切っている。
ここまで29試合を戦って18勝9敗2分。2位のヤクルトとは2.5ゲーム差で首位を快走中だ。圧巻だったのが7月14日から19日にかけての6連勝。週が明けて21日の中日戦にも勝利し、連勝は7まで伸びた。
この週末はヤクルトに対して△●。思えば2週前の週末もヤクルトに2敗(1試合中止)とやられており、その時は首位の座を明け渡してしまった。順位を争う相手に対して力が発揮できていない点は気になるものの、その点を除けば安定した戦いぶりが光っている。
中でも大きいのが、春のキャンプで2代目「若大将」を襲名した4番の岡本和真。すっかりチームの主砲に定着したスラッガーは、ここまで29試合で打率.315(111-35)、10本塁打、29打点と堂々たる成績。本塁打はリーグトップ、打点は2位という好成績を残している。
また、試合序盤は全く当たる気配がなかったにも関わらず、試合終盤のここぞの場面で勝負を決めて見せるシーンが特に印象的。7月19日のDeNA戦では4タコで迎えた9回、二死から同点に追いついた直後に、国吉佑樹から値千金の勝ち越し2ラン。23日の中日戦では、「三振」・「三振」・「ゲッツー」で迎えた第4打席に勝ち越しの2点適時二塁打。まさに“4番のひと振り”でチームを救うというシーンをよく見る。
一方、心配なのがその前を打つ「サカマル」コンビ。坂本勇人と丸佳浩が不振に苦しんでいる。
丸の打率は.249、坂本に至っては.219とらしくない数字。丸はここ3試合連続で安打が出ており、25日のヤクルト戦では2本塁打を放つなど、ややトンネル脱出の兆しは見えているが、ここまでの働きぶりは物足りなく映る。
しかし、上述したように、それでもチームは首位。低迷してもおかしくない状況の中、安定した戦いができているのは、4番の活躍はもちろんのこと、「投手陣の奮闘」によるところが大きい。
チーム防御率は圧倒的なリーグトップ!
巨人のここまでのチーム成績を紐解いてみると、総得点の149はリーグトップも、チーム打率.267はリーグ3位。圧倒的な打力を誇っているわけではない。
これに対し、失点93はリーグで最も少ないどころか、2ケタ失点はリーグで唯一。チーム防御率も3.16は最も優れた成績。2位のDeNAが3.60となっていて、大きな開きがある。
先発では、今季から元の持ち場に戻った田口麗斗こそ離脱を強いられているものの、復活したエース・菅野智之に高卒2年目の戸郷翔征、C.C.メルセデスといったところが奮闘中。
加えて、投手交代の決断も例年以上にアグレッシブ。7月5日の中日戦では、エンジェル・サンチェスを3回途中3失点でスパッと諦めて計8名の投手リレーを敢行。勝利には結びつかなかったが、接戦に持ち込んで執念を見せた。
ブルペンはストッパーを任されていたルビー・デラロサが故障で抹消となっているが、中川皓太がフル回転で穴埋め。25日のヤクルト戦ではリリーフ失敗も、それでも今季は12試合で防御率1.46という好成績になっている。
ほかにもベテランの大竹寛や左腕の高木京介、藤岡貴裕に、トレードで楽天から高梨雄平を補強。良い成績を残しながら、過密日程による疲労も見据えてさらに厚みを加えてきた。
主軸の不調やストッパーの離脱に慌てることなく、フロントとの連携も含めて上手く対処することができているというのは、原辰徳監督の“経験”がなせる業か。やはり、監督と使途の勝利数が「球団史上単独2位」という実績はダテではない。
今季のセ・リーグはクライマックスシリーズが開催されず、優勝しなければ日本シリーズに進むことはできない。3位以内ではなく、“頂点”を目指さねばならないシーズンを、指揮官として戦ったことがあるのは12球団でも原監督ただ一人。この経験も、大きなアドバンテージとなるはずだ。
ここに来て、サンチェスが登板回避からの登録抹消と、投手陣にアクシデントが出ているものの、チームは育成契約ながらファームで好投を続けていた田中豊樹を支配下登録。その日のうちに一軍に昇格させた。
こうした抜擢も含め、例年以上に投手のやりくりが重要になってくる2020年。今後も原監督の舵取りから目が離せない。