140キロ前後の速球で無双
ロッテの中村稔弥投手(24)は9日、敵地・京セラドーム大阪で行われたオリックス戦に先発登板。6回1安打・無失点の好投を見せ、今季6度目の登板で嬉しい初勝利を掴んだ。
清峰高から亜細亜大を経て、2018年のドラフト5位で入団したプロ2年目の左腕。1年目は主にリリーフとして10試合に登板して1勝1敗3ホールドという成績で、今季もリリーフからスタートしたものの、7月26日の西武戦から先発としてローテーションに定着。この日は3度目の先発登板となった。
立ち上がり、嫌な福田周平を低めの変化球で内野ゴロに斬ると、西村凌は高めの速球で押し込んで遊飛。3番の吉田正尚も右飛と、打ち上げさせて三者凡退。スムーズな滑り出しを見せる。
2回もフライアウト2つで3人斬り。3回は二死から若月健矢に四球を与えてこの試合はじめての走者を出すも、トップに戻って福田は内野ゴロ。表示こそ140キロ前後ながら、相手打者を差し込んでいく質の高い速球を武器に危なげない投球を展開していく。
一方、打線もオリックス先発の左腕アンドリュー・アルバースを前に4回二死まで無安打に抑え込まれていたものの、二死から3番のレオネス・マーティンが低めのスライダーにバット一閃。弾丸ライナーで右中間スタンドへと叩き込む11号ソロで好投の中村に先制点をプレゼントする。
援護を受けた背番号48は、直後のマウンドも変わらぬ落ち着きを見せ、4回裏は2番からの上位打線をテンポ良く二死。そこからT-岡田にはフルカウントから四球を与え、無警戒の中で盗塁を決められてはじめてのピンチを迎えたものの、5番の伏見寅威を外の変化球で空振り三振。失点の危機を見事に切り抜けた。
長崎出身左腕、“特別な日”の初星
今季初勝利の権利がかかる5回も、先頭のスティーブン・モヤを外いっぱいの139キロまっすぐで見逃し三振。つづく宗佑磨も中飛に仕留めて二死。安達了一には四球をもぎ取られ、3イニング連続で二死走者なしから四球で走者を背負うものの、9番・若月を遊ゴロに打ち取ってここも無失点。5回を投げて74球、与四球は3つも、ノーヒットで無失点という快投を見せる。
6回、先頭の福田に速球をライトへと弾き返され、無安打投球に終止符。ノーアウトで走者を背負い、つづく西村には犠打を決められて一死二塁。ここでクリーンナップへ…というこの日一番の危機を迎える。
それでも、3番の吉田は2球で左飛に斬って二死。つづく4番・T-岡田は四球で一・二塁としたが、ひとつ間を取って挑んだ5番・伏見は3ボールから見送り・ファウルで追い込み、最後は一ゴロ。難しい打球もベースカバーを怠ることなく、一塁手・井上晴哉からのトスを受け取って自らベースを踏んで3アウト。白星の権利を死守した。
援護に恵まれないなか、虎の子の1点を守り抜いて仕事を果たした左腕。7回からはリリーフ陣にバトンを託す。
まずは唐川侑己が危なげなく三者凡退。良い形で後続に回すも、8回はフランク・ハーマンが先頭の若月に二塁打を浴び、さらに四球と犠打で一死二・三塁と一打逆転の大ピンチ。しかし、ここからT-岡田を三邪飛、伏見は高めの速球で空三振に斬って取り、ここもリードを死守。白星の灯火を消すことなく、アンカーへとバトンを繋いだ。
すると、打線が9回にようやく奮起。一死満塁のチャンスから、4番の安田尚憲がレフトオーバーの2点適時二塁打。大きな2点を叩き出すと、そこから再び一死満塁とし、清田育宏の内野安打の間に1点。4-0とリードを広げた。
迎えた9回は、セーブシチュエーションではなくなったものの、ストッパーの益田直也がマウンドへ。連続三振から内野安打を許すも、後続を斬って完封リレー完成。4-0で逃げ切り、ロッテが連勝を3に伸ばした。
27個目のアウトを見届け、最終回を守ったナインをベンチ前で迎えた中村はようやくホッとしたような表情。今季6度目の登板、3度目の登板で掴んだ初勝利に思わず笑みがこぼれる。
また、8月9日と言えば「長崎原爆の日」。長崎出身の左腕にとって特別な日に、大きな1勝を掴んだ。
文=尾崎直也
▼ 中村稔弥・プロフィール
ポジション:投手
投打:左投左打
身長/体重:178センチ/84キロ
生年月日:1996年7月8日
経歴:清峰高-亜細亜大-ロッテ(18年・5位)
<きょうの投球内容>
・投球回:6回
・投球数:90球
・打 者:23人
・被安打:1本
・与四球:4個
・奪三振:2個
・失 点:0点