インディアンス戦に先発登板したツインズの前田健太

◆ 白球つれづれ2020~第37回・前田健太

 メジャーリーグ、ミネソタ・ツインズに所属する前田健太投手の評価が大変なことになっている。

 今や先発の柱としてチームから全幅の信頼を勝ちとり、間近に迫るプレーオフの「開幕投手」も有力視されている。さらに最優秀投手に贈られるサイヤング賞の候補として、ナ・リーグのダルビッシュ有投手(カブス)らと共に挙げられるほどだ。

 全米で注目された試合は今月11日(日本時間12日、以下同じ)のインディアンス戦。相手エースはこの時点でア・リーグ投手部門3冠を独走するビーバーだったが、一歩も引けを取らない快投を演じる。7回を被安打4、奪三振7で二塁すら踏ませず無失点で5勝目。SNS上では「MAEDA MAGIC(前田の魔法)」の文字が躍った。

◆ マエダ・マジック

 魔術その1は、変幻自在の投球だ。今季の通算成績は9試合に登板、55回2/3を投げて奪三振63、防御率2.43だが、特筆すべきは好投手の指標となるWHIPという数字である。1イニングあたりの許走者数を表すもので、被安打と四死球を足して投球回で割る。

 今季、前田のWHIPは「0.74」で両リーグトップ。ちなみに昨年最も良かったバーランダー(アストロズ)が「0.80」だから、いかに安定しているかがわかる。

 前田の代名詞と言えばスライダー。この伝家の宝刀に今季は改良を加えた。昨年まで、右打者は抑えても左打者を苦手としていたが、左打者の膝元に鋭く食い込む、従来より曲がりは小さくても速いスライダーを習得。さらに外角に逃げていくチェンジアップも投げ分けるので奪三振の数が飛躍的に増えた。

 魔術その2は類まれな野球センス。この日の試合では5回、ネークイン選手の一塁前に転がるボテボテのゴロを華麗なバックハンドトスで処理する。グラブから右手に持ち替えていては間に合わないタイミングの難しい処理をいとも簡単にこなしてしまう。

 6回には鮮やかな牽制球で一塁走者を刺す。無死一塁で走者は俊足のリンドア選手。前田自身が「試合を左右する場面」と振り返った重大局面で3度の牽制。山なりのボール、通常のボールを見せておいて3球目にクイックのパーフェクト投球でタッチアウト。並みの投手に出来る芸当ではない。

 さらに魔術その3まである。何とダルビッシュの魔球・シンカーを瞬時で盗み、この試合で活用したという。悪天候で試合開始が40分遅れると、ロッカーでダルビッシュの発信する『You Tube』を閲覧、その中でシンカーの握りや投げ方を学ぶと早速ブルペンで試投した。すると好感触をつかみゲームでモノにしてしまった。まるで漫画の世界のようだ。

◆ プレーオフでの快投にも期待

 昨年まで4年間在籍したドジャースからツインズに移籍した。ド軍ではポストシーズン近くになると先発から救援に回される。年間を通して先発を任される場所を求めた。球団に直訴したトレードも一度は破談となり、やきもきさせられたが、2月に入って再びの急転成立だった。投手陣強化で上位進出を目論むツ軍とは“相思相愛”。その狙いは予想以上の成果を上げている。

 今季のMLBは60試合の短期決戦。各チームともすでに残り15試合ほどの大詰めを迎えている。プレーオフも両リーグ各地区上位2チームと残りの球団の勝率上位2チームを加えた計16チームで戦う新方式だ。目下、ホワイトソックス、インディアンスと激しい優勝争いを繰り広げるア・リーグ中地区だが、他地区に比べて3チームの勝率が高いため、仮に3位に終わってもポストシーズン進出はほぼ間違いない。

 プレーオフを勝ち抜いてもその先に地区シリーズ、リーグ優勝決定シリーズがあり、ワールドシリーズに勝って初めて世界一の称号を手に入れることが出来る。この数年、日本人選手の話題は大谷翔平選手(エンゼルス)がほぼ独占。ダルビッシュや田中将大投手(ヤンキース)と比べても影の薄かったマエケンが押しも押されぬエースとして脚光を浴びている。

 球威では劣っても、巧みな投球術と誰もが認める野球センスが最大の武器となる。ツインズは貴重な“魔術師”をどう活用していくのだろうか?

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)


【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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