中日・高橋周平 (C) Kyodo News

◆ 竜の主将による劇的なアーチ

 劇的な結末だった。10月15日、ナゴヤドームで行われた中日-阪神の一戦。中日は1点ビハインドで9回裏を迎え、二死ながら二・三塁と一打逆転のチャンスをつくり、打席には高橋周平が入る。

 マウンドには阪神の守護神ロベルト・スアレス。一塁は空いているという状況だったが、阪神サイドは高橋と次のモイセ・シエラを天秤にかけ、前者との勝負をチョイス。すると、竜の主将は1ボール・1ストライクからの3球目、159キロの速球をものの見事に打ち返し、レフトスタンドまで放り込んだ。

 初のサヨナラ弾は、虎の守護神にとっては初の被本塁打で今季の初黒星。チームを5連勝に導くひと振りに、名古屋の竜党が大いに沸いた。

◆ 高橋周平を育てた“鬼コーチ”?

 試合後、記者は高橋の母・玉寄さんに電話した。「高橋はなぜ、左打ちなのか」という疑問の答えを知るためだった。

 電話を掛ける前に振り返る。幼少期の高橋は、8歳上の兄・恭平さんのスパルタ指導を受けている。

 時に小突かれ、怒鳴られ…。基本の「バットは内から」を繰り返された。大好きな兄ちゃんは、時に鬼コーチになった。

 だから、一軍定着する頃になると「オレ、もうアドバイスはいらないから」と反発してみたこともあった。兄からは「おっ、周平が言うようになった!まだまだだろ」と返される。

 独特の言い回しで兄を慕う弟と、弟を心配する兄。この根本的な構図は20年たっても変わっていないのだ。

 そんなことを思いながら、電話した。

 「夜分すみません」とあいさつすると、玉寄さんは「見てたわよ~。見てたわよ~」と元気に返してくれた。声のトーンを聞いて、喜びの表情が浮かんだ。

 神奈川県・藤沢市の実家は1階に両親が住み、2階に兄夫婦が住んでいる。

 「2階から『ヨッシャー』って声が聞こえてきたから、お兄ちゃんも見ていたみたいよ」

 玉寄さんへのあいさつを終え、恭平さんに「なぜ、左打ちなんですか?」と尋ねた。

◆ 「最初は嫌そうでしたよ」

 答えは球界のブームにあった。

 高橋は1994年1月生まれ。2歳になると、兄の少年野球チームにくっついて行っていた。当時はオリックスのイチロー、巨人の松井秀喜が球界を沸かしていた。

 「すごい選手が右投げ左打ちだったからです」

 兄は、右で構えた弟からバットを取り上げ、左打ちに矯正しのだ。

 ただ、2歳児だって、構えやすい・構えにくいは感じる。「最初は嫌そうでしたよ」と、苦笑いで教えてくれた。

 そこが高橋伝説の始まり。3歳になれば、バッティングセンターでミートを続ける。

 高橋自身、「オレ、3歳のころが一番打てたのかも。本当に、すごかったみたい」と語る。従業員が「すごい子だから」という理由で、無料でコインを入れてくれたエピソードは、高橋家の語り草となっている。

 球界を見回せば、利き手と反対の打席に立ち、バットを操る選手は何人もいる。それぞれにきっかけがある。そこから技術を身につけ、結果を出し続けるには、利き手は関係ない。

 高橋自身、箸を持つのは右手で、ゴルフのスイングも右。スイングだけが左となっている。右打ちのままなら、今の高橋はいない。

 人生の分岐点は、本人の意思決定だけではない。何が起こるか分からないものなのだ。

文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)


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