代走での盗塁が15
試合終盤の緊迫した場面で登場し、相手が走ってくるとわかっている状況で盗塁を決める。何度もこのプレッシャーを跳ね除け、ロッテの和田康士朗はリーグ3位の23個の盗塁を決めた。
盗塁のうちわけを見ると、代走での盗塁数が15個、スタメンでの盗塁数は6個、守備から途中出場し回ってきた打席で安打を放ち盗塁を決めたのが1個、代走で出場して回ってきた打席で四球を選び決めた盗塁が1個だ。
和田の特徴として、早いカウントから仕掛けることが多かった。和田が盗塁成功したときに打席に立っていた打者の初球に、盗塁を決めたのが13個。特にランナー状況が一、三塁で、一塁走者が和田だった場合、4度盗塁を決めているが、全て初球だった。和田が盗塁を決めたときの打席に立っている打者の球数が、3球目以内の盗塁成功が21個と、早いカウントから積極的に走っていたことがわかる。
足でアピール
代走で存在感を示した和田だが、今年の5月までは育成選手だった。支配下選手になる前だった今年1月の自主トレで、「(2019年の)秋のキャンプで構えとかを確認してやっていた。(2019年の秋季)キャンプで大塚さんや伊志嶺さんに教えてもらったことを、やっていたという感じですね」とロッテ浦和球場の一塁ベース上でストップウォッチを持って、繰り返しスタートを切る練習を行う姿があった。
2、3月の練習試合、オープン戦では、「(自主トレで)スタートを一番に練習していたので、その成果が出ているかなと思います」と武器である“足”でアピール。シーズン開幕前の6月に支配下選手登録を掴み取った。
6月の練習試合では8盗塁を決め、開幕一軍を掴むと、6月19日のソフトバンク戦、0-1の9回無死一塁の場面で代走でプロ初出場。二死後、マーティンの打席中にスタートを切る。アウトなら試合終了の場面だったが、ソフトバンクの“甲斐キャノン”こと強肩が売りの甲斐拓也からプロ初盗塁となる二塁盗塁を成功させた。
開幕直後は代走でプレッシャーを与え続けた。6月27日のオリックス戦では、1-1の7回に代走で出場し二塁盗塁を決めると、先頭打者で迎えた9回の打席で四球を選び、続くレアードの2球目に今季4つ目となる盗塁。プロ入り後、初めて1試合2つの盗塁を決めた。
7月に入りチーム状況が苦しくなり、接戦の試合ができないと、必然的に和田の出場機会も減り、盗塁する場面もなかなか訪れなかった。6月は4盗塁だったが、7月はわずかに1盗塁だった。
8月は月間11盗塁
8月に入ると代走だけでなく、スタメンでの出場もあり、和田の出番も多くなった。
『1番・センター』でプロ初スタメン出場を果たした8月16日の日本ハム戦では、初回の第1打席、日本ハムの先発・バーヘイゲンが投じた初球のストレートをセンター前にはじき返し、嬉しいプロ初安打を放つと、続く中村奨吾の初球に二塁盗塁を決め、井上のセンター前ヒットで生還した。
2-3で迎えた3回の第2打席は、1ボール2ストライクからライト前に運び、中村の初球に二塁盗塁成功し、4番・安田尚憲の左飛で同点のホームを踏んだ。
3-3の5回の第3打席は、初球のカーブをライト前に放ち、これで猛打賞を達成。塁に出れば次の塁を狙う和田は、中村の初球に二塁盗塁を試みる。タッチアウトと判定されたが、ここで井口資仁監督がリクエストを要求。判定が覆りセーフとなった。これでこの日3つ目の盗塁となり、盗塁ランキングでも荻野貴司(ロッテ)、西川遥輝(日本ハム)と並んでリーグトップタイとなった。
代走だけでなく、スタメンでも出場した8月は月間リーグトップの11盗塁で、1度も失敗なし。8月終了時点で2位・西川に3個差をつけて、リーグトップの16盗塁をマークしていた和田に盗塁王への期待も膨らんだ。しかし、9月に入ると代走で出場した3日の西武戦と4日のソフトバンク戦で盗塁を成功決めるも、3日の西武戦で今季2度目の盗塁失敗、4日のソフトバンク戦で今季3度目の盗塁失敗ということもあった。9月の月間盗塁数は3。10月は新型コロナウイルスの濃厚接触者で一軍登録を抹消した時期もあったことに加え、二塁走者の代走で出場することもあり、10、11月の盗塁数は4だった。
レギュラーを期待
ただ、シーズン69打席の和田を除いて、盗塁トップ5の選手はみな100打席以上立っている中、リーグ3位の盗塁数というのはかなり驚異的といえる。盗塁王に輝いた周東佑京(ソフトバンク)は、昨季は“代走”がメインだったが、今季はバットでもアピールしレギュラーを掴んだことで、盗塁数を大幅に増やすことができた。
和田を“代走の切り札”として、試合終盤の大事な場面で起用したい選手ではあるが、レギュラーで出場できれば“足”を使った攻撃が格段に増える。打撃力があがり、レギュラーを掴むことができれば、周東との盗塁王争いというのも十分考えられそうだ。今年に向けた自主トレでは、支配下選手登録を掴むため、バッティングよりも足のトレーニングに時間を費やした。今オフは走塁とともに打撃にも力を入れていきたいところだ。
文=岩下雄太