梅野、寺島、長谷川ら、高卒4年目も存在感
今季は一時首位に立ったものの、終わってみれば2年連続の最下位だったヤクルト。外国人や主力の不振など誤算が多く、41勝69敗10分けの借金28でシーズンを終えた。今回は若手選手にフォーカスし、2020年のヤクルトを振り返ってみたい。
まずは何と言っても高卒3年目・村上宗隆の進化だろう。今季は全試合で4番を託され、新人王に輝いた前年に続き全試合に出場。射程圏だった本塁打王と打点王のタイトルには惜しくも届かなかったが、打率.307、28本塁打、86打点をマークし、出塁率.427で初の打撃タイトルとなる最高出塁賞に輝いた。OPS(出塁率+長打率)1.012、得点圏打率.352も規定打席到達者の中ではリーグ1位。すべての面でスケールアップした和製大砲は、球界を代表する打者へと成長した。
投手では大卒2年目の清水昇が、中継ぎでチームトップの52試合に登板し0勝4敗30ホールド、防御率3.54を記録。躍動感のある投げっぷりでセットアッパーの地位を確立し、最優秀中継ぎ賞に受賞した。
投手陣では他にも、蓄積疲労が心配された高卒4年目の梅野雄吾が、一時離脱したものの42試合に登板し防御率3.61を記録。同じく高卒4年目で2016年のドラフト1位・寺島成輝は、中継ぎで30試合に登板し防御率2.48をマークした。育成選手としてソフトバンクで3年間腕を磨き、支配下契約で新天地へ移籍してきた長谷川宙輝は、防御率5.82と安定感を欠いたがチーム3位タイの44試合に登板。楽天を戦力外となり新加入した高卒7年目の今野龍太は、20試合に登板し防御率2.84を記録した。
シーズン終盤には高卒3年目の金久保優斗と期待のドラ1・奥川恭伸が一軍デビュー。チーム防御率は今季もリーグワーストの4.61だったが、若手起用に舵を切った後半戦は多くの光明が見られた。
苦しんだ大卒ドラフト組、外野争いは期待外れ…
高津監督が開幕投手候補にも挙げていた5年目の高橋奎二は、不調やケガもあり10試合の登板で1勝3敗、防御率3.94。シーズン中に投球フォームを変えるなど試行錯誤を繰り返した。高橋と同学年となる吉田大喜(2位)、杉山晃基(3位)、大西広樹(4位)の大卒ドラフト加入組はプロの壁に苦しみ、吉田は14試合に先発するも2勝7敗、防御率5.21。大西は一軍で5試合、杉山は登板なしで1年目を終えた。
野手では開幕前、中堅の域に入った山崎晃大朗と塩見泰隆、大卒2年目・中山翔太らによる外野のレギュラー争いが注目ポイントの1つだったが、正直、期待外れ。それでも塩見が、43試合の出場ながら打率.279、13盗塁、OPS.856とようやく一軍で結果を残し、新シーズンへ希望を持たせてくれた。
投手同様、野手もシーズン後半は若手を積極的に起用し、2年目の濱田太貴、1年目の長岡秀樹、武岡龍世らも一軍のゲームに出場。この経験を今後の飛躍につなげてほしいところだ。
今季は主力の不調含め、本来はやってもらわなければ困る中堅どころの不甲斐なさが際立っていたヤクルト。若手に括るとタイトルを獲得した村上や清水以外にも、ポテンシャルを秘めた選手が存在感を示した。今秋のドラフトでは木澤尚文(慶大)、山野太一(東北福祉大)と左右の本格派投手を1位と2位で獲得。同4位の内野手・元山飛優(東北福祉大)には宮本慎也氏らが背負ってきた背番号6を託した。新たな大卒指名選手たちは、梅野、寺島、長谷川らと同学年。高橋や村上らの前後の世代とも切磋琢磨しながら、新たな時代を作ってほしいところだ。