今年も1人で自主トレ
ロッテの加藤翔平は昨季の60試合から今季は22試合に減少したが、“22試合”で見せた貢献度は大きかったのではないだろうかーー。
昨季は自分でやることが明確にあったため、オフはロッテ浦和球場やZOZOマリンスタジアムを中心に一人で自身の課題と向き合ったことが功を奏し、開幕戦で本塁打を放つなど、4月11日終了時点で打率.356(45-16)の大暴れ。しかし、その後は打撃不振や故障により、レギュラー定着とはならなかった。
今季を迎えるにあたって、FAでソフトバンクから福田秀平、ドラフト会議で高部瑛斗を指名し、外野手のライバルが増えた。しかし、「そこは関係なくしっかり自分のことをやらなきゃいけない。毎年危機感を持っているので変わらずということ」と、1月の自主トレは一人で自身に向き合った。
昨年の自主トレでは、体幹が弱ってくると打撃フォームから全て崩れることから例年以上に体幹トレーニングに時間を費やしたが、体幹を固めすぎたことで、シーズン中に脇腹の肉離れを起こしたこともあり、柔軟性のトレーニングを多めに取り入れるなど、昨季の反省を活かしトレーニングを積んだ。
打撃フォームも1月の段階で前年に比べて、肘の高さが少し高くなり、足をあまりあげていないフォームに変わっていた。そのことについて自主トレ中の取材で加藤は「(肘の)高さというより顔の近くに置く意識をしているので、それで多分、自然と前よりも体に近いところでという意識はしていますね」と話し、「もともとそんなに足をあげるタイプではない。足を上げちゃうと、体が前に突っ込んでしまう感じなので、いい選手は上げている選手が多いですけど、僕に関しては足をあげてしまうと、今までの感じからするとよくない。あまりあげずに、ノーステップではないですけど、すり足ぐらいの感じでやっています」と明かしていた。
「1年間のトータルで考えないといけない年齢にはなっているので、開幕だけとか1ヶ月くらいしか良い状態が続いていなかったので、そこをやるためには、オフシーズンもそうですけど、キャンプとかそこからの振り込みが大事」と意気込み、春季キャンプを迎えた。
開幕は二軍
春季キャンプは一軍スタートを切ったが、『右肩のコンディション不良』のため、キャンプ途中から二軍でリハビリ生活に。3月に入ってからファームの春季教育リーグで復帰。新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が6月19日に変更となったが、6月の練習試合もファームで過ごし、開幕を二軍で迎えた。
開幕してからファームで打って打って打ちまくり、7月が終了した時点で打率.329。荻野貴司が「右大腿二頭筋の軽い筋損傷」で7月23日に一軍登録を抹消されたが、「右肩甲骨の亀裂骨折」から復帰した福田秀平が同日に再昇格したため、一軍昇格とはならず。8月も18試合中8試合で複数安打を記録するなど、打率.367(60-22)をマークし、満を持して同月29日に今季初昇格を果たす。
同日のオリックス戦で『7番・レフト』でスタメン出場すると、第4打席にセンター前に今季初安打を放つ。翌30日にはマルチ安打、9月2日の西武戦では代走から出場し回ってきた打席で二塁打。『1番・センター』で出場した3日の西武戦でもマルチ安打と、昇格してから結果を残し続けた。
昇格後の打撃練習を見ると、右打席ではセンターからライト方向、左打席ではセンターからレフト方向にゴロやライナー性の当たりが多く、徹底的に反対方向へ意識しているように見えた。
素晴らしい走塁
9月4日から6日にかけて行われた首位・ソフトバンクとの3連戦で、チームは3連勝したが、加藤もトップバッターとして素晴らしい働きを見せた。
4日の試合では、1-2の7回一死一塁からマーティンの中安で一塁走者の加藤が三塁へ進塁。菅野のライト前ヒットで同点のホームを踏んだ。5日の試合ではマルチ安打。6日の試合は、0-0の5回の第3打席にセンター前にタイムリーを放つと、柳田がホームに送球する間に打者走者の加藤が二塁へ進塁。菅野のレフト前に落ちるタイムリーで二塁走者の加藤が生還した。加藤が自身のセンター前の安打で一塁に止まっていれば、菅野の安打でホームに還ってこれる当たりではなかっただけに、隠れたファインプレーだった。
その後も、9月13日のオリックス戦で、6-2の8回二死満塁からマーティンが放ったレフトへのあたりを後方に守っていた吉田が前に出てきてスライディングキャッチを試みるも打球を弾き、その間に一塁走者の加藤も悠々ホームイン。
10月13日の楽天戦では、2-3の8回に牧田からショート後方、左中間を抜ける安打でセンター・田中の守備体勢を見て俊足を飛ばして一気に二塁へ。二死三塁から加藤は、マーティンの打席中にワイルドピッチで同点のホームを踏んだということもあった。状況判断が素晴らしく、1本の安打で1つ先の塁を陥れる積極的な走塁が光った。
今季は代走の切り札としてチームトップの23盗塁をマークした和田康士朗、シーズン終盤に藤原恭大が台頭し、外野の選手層が昨季以上に厚くなり、出場機会が減少した。それでも、与えられたチャンスのなかで、インパクトのある働きを見せたのは確かだ。
文=岩下雄太