ロングリリーフの心得
ロッテは11日、チェン・グァンユウの退団を発表した。
チェンは2015年にマリーンズに加入すると、同年にプロ初勝利を含む5勝をマーク。17年以降は先発投手が早いイニングで崩れたあと、試合を立て直すビハインドゲームのロングリリーフを中心にチームを支えた。勢いのついた相手打線を止めるという難しい役割ではあったが、テンポ良く抑え、何度もマリーンズに流れを引き寄せた。
昨季はシーズン自己最多の44試合に登板し、2イニング以上投げた試合は15試合。そのうち昨季先発が5回以内に降板し、2番手、3番手で登板した試合は7試合あった。
チェンはロングリリーフで登板するうえで「リズムが大事かな。リズムよく投げたいと思います。相手の打線を止めなきゃいけないという意識はもちろん持っているけど、まず自分の持ち味を出せるようにと考えています。他の中継ぎを休めるのが自分の仕事かなと思います」という思いを持って投げていた。
チームのため、後輩のため
“チームのため”に腕を振ったチェンは、「中村から聞かれたので、教えたよ。僕も田中靖さんに教えてもらいました」と、当時ルーキーだった中村稔弥にロングリリーフの心得を伝えたことも。
同じ左投げで、中村稔が好投すればポジションを奪われる可能性もあった。それでもチェンは、「チームのため。僕が1回落ちたこともあるし、彼がいるから助けてもらっている。僕も嬉しいです」と、後輩の活躍を自分のことのように喜んでいた姿を今でも忘れられない。
特に昨年はロッカーも隣だったそうで、「だいたい野球の話しが多いよ。二軍のときも練習きついとか教えてもらった。かわいい後輩だよ」(19年8月31日取材)と明かしていた。
チェン自身も「田中靖さんだけでなく、唐川さんとかにも教えてもらったよ」と先輩からアドバイスをもらい、自分の力に変えていった。
入念な準備
一軍で結果を残すため、チームの勝利のため、準備も入念に行なっていた。
18年から“縦回転”を意識した投球を継続していたが、昨季は「注意しないとすぐに忘れるから、ずっと意識している」と毎回、マウンドに上がる前、ブルペンでの最後の2球は縦の回転を意識して投げた。
また、ある時には自らお願いして、「もう1回ミスしたらメンタルが壊れてしまう。確認して安心した。もう1回きても大丈夫だと思います」と全体練習の前にマウンド上でバント処理の練習を行うこともあった。
マリーンズに在籍した6年間、個人タイトルを獲得するような外国人選手に比べると、成績は見劣りしてしまうかもしれない。ただ、チームが苦しいときにロングリリーフ、時には先発と、ありとあらゆる場面で投げ、数字には見えない部分での貢献度はかなり大きかった。間違いなく、ここ数年のマリーンズ投手陣を支えたひとりだろう。
文=岩下雄太