出場機会がアップ
「1年通して一軍でやっていないので、まずは1年間しっかり一軍でやって、一つでも多くスタメンをいただいて勝てるように頑張りたいですね」。
今季に向けてこのように目標を掲げていたロッテの柿沼友哉は、開幕一軍を掴み、1度もファームに落ちることなく一軍でプレーした。昨季は先発マスクが23試合だったが、今季は倍の49試合でスタメンマスクを被った。
“柿の種バッテリー”で話題を呼んだ種市篤暉とバッテリーを組むだけでなく、岩下大輝や小島和哉といった若手に加え、有吉優樹、フローレスといったファームから上がってきた投手が先発のときにマスクを被ることが多く、7月は16試合、8月は9試合に先発出場し経験を積んだ。
9月9日の日本ハム戦で右手人差し指に死球を受けたロッテの正捕手・田村龍弘が、「右手第2指末節骨剥離骨折」により10日に一軍登録を抹消されたあとは、柿沼の出番が再び増えた。
9月10日の日本ハム戦は3-5で敗れ、6連勝中のチームを勝利に導くことができなかったが、井口資仁監督は試合後、「かわりに柿沼もずっとやってくれていましたし、(田村の離脱を)考えずに今いるメンバーでやるしかない。柿(沼)も良いリードをしてくれると思います」と期待を寄せた。
柿沼は井口監督からの期待に応えるように、9月13日のオリックス戦で同じ茨城県出身の美馬学を7回2失点に導けば、17日の西武戦では初完封・初完投を逃したが、岩下を9回途中1失点に抑える好リード。
さらにトレードで巨人から加入した澤村拓一とともに、9月の月間最優秀バッテリーを受賞した。柿沼は「澤村さんのおかげです。澤村さんがいいピッチングができたことが一番嬉しいですし、それが勝ちに繋がったと思うので、一緒にバッテリーを組ませてもらえてこのような賞もいただけて本当に嬉しいです」と喜んだ。
10、11月は出番が減少
田村が復帰した後は、ベンチを温めることが多く、9月の16試合の出場から10月はわずかに5試合の出場にとどまった。10月2日の西武戦、0-0の6回無死一、二塁の場面でバント失敗。続く0-0の8回無死一塁の第3打席では、きっちりと送りバントを決めたが、6回のバントミスは大きかった。またチームも延長戦の末に0-1で敗れた。翌3日の西武戦は第1打席にライト前に安打を放ったが、続く打席で田村に代打を送られ途中交代。4日からはベンチスタートとなり、10月22日の西武戦に『9番・捕手』でスタメン出場するまで出番が巡ってこなかった。
振り返れば、昨年はCSを争ったシーズン最終盤に左尺骨折で離脱し、大事な戦いを経験することができなかった。昨季のシーズン終了直後「CS争いしている緊張感を味わえませんでした。最後の怪我というのは、どうしようもない部分はありますけど、そこはやっぱり自分の悔いが残ってしまいましたね」と悔しがっていた。そして、今季は1年間一軍でプレーすることができたが、優勝争い、CS争いが佳境を迎えた10月、11月にマスクを被ることができなかった。一選手として、当然悔しい思いをもっていたはずだ。
打撃力向上が必須
柿沼が出場機会を増やすためにも打撃力向上は必須。シーズン終了直後のZOZOマリンスタジアムで行われた秋季練習では、連日のように特打を行った。11月24日の打撃練習では、右の投手のときには白と黒のバット、マシンのときには茶色のバットで左足をあげずに打っていた。これまでバットを短くもって打撃練習することが多かったが、特打のときは終始バットを長く持って打つなど色々と試しているように見えた。
10月2日の西武戦でバント失敗はあったものの、シーズン通してバントをきっちりと決め、チーム2位の15犠打。試合前の練習では、バントマシン相手に一塁側、三塁側に丁寧に転がしているところを多く見た。夏場以降はセーフティバント、シーズン最終盤にはスクイズを想定してだろうか、バントマシンではあるが体を投げ出してバント練習する姿もあった。
田村、打撃が売りの佐藤都志也と正捕手を争うライバルは多いが、柿沼個人としては一軍の舞台を経験し、着実にステップアップしている。出場機会を増やすためにも、全ての面でレベルアップを図りたい。
文=岩下雄太