一軍への想い
「今年に関してはそこを(一軍を)目標にやっているので、開幕からいけるように。そのためにもオープン戦が大事になってくる。そこでしっかり結果出して、アピールして、その先に開幕一軍があればいいなと思います」
春季キャンプ中に“一軍”への強い想いを語っていたロッテの高卒3年目・山口航輝が、初の開幕一軍の切符を自らの手で掴み取った。
山口はプロ1年目から一軍でプレーしたいという思いをなんども口にしてきた。
「野球する限りは一軍で活躍したいと思っている。藤原に負けないように、お互い切磋琢磨してやっていきたいと思います」(19年2月26日取材)
「やるからには一軍でやりたいので、今の自分のレベルのままじゃ(一軍に)いかしてもらうことはまだ、そう簡単にはないと思う。少ないチャンスでも、そのチャンスをモノにできたらいいなと思います」(19年8月22日取材)
「この1年間、二軍でずっとプレーして、一軍の試合もたくさん寮とかで見てきて、最後の福浦さんの引退試合とかもそうだったんですけど、見ていて一軍の舞台は違うなというか。そういう雰囲気があった。自分も1日でも早く一軍の舞台で活躍したいと思いました」(19年10月1日取材)。
悔しかった2年目
昨季は19年にファームで一緒にプレーすることの多かった和田康士朗、藤原恭大といった若手選手たちが、春季キャンプから一軍の実戦でアピール。19年11月の鴨川キャンプ中に『左足距骨後方骨折』し、2年目の春季キャンプをファームで過ごしていた山口は「(彼らの活躍は)めちゃくちゃ気になります。結果を見て、また(藤原)恭大打ったなというのを見ているし、和田さんが打っているのも見ている。負けてられないというか、自分も続かなきゃという感じです」と話していた。
昨季はファームで全70試合に出場して、チームトップの7本塁打、30打点をマークし、8月25日の巨人との二軍戦からシーズン最終戦となった11月1日の楽天戦にかけて4番で出場するなど、34試合で4番を務めた。
ファームでみっちりと経験を積んだが、10月に新型コロナウイルス感染で離脱した選手の代替選手として、若手選手たちが一軍昇格、一軍練習に参加するなかで、山口は一軍昇格することができなかった。
当時の心境について「活躍していてすごいなというのは見ていて思いましたし、悔しい思いの方が強かった。あの時期に上がれなかったというのが、今まで野球してきたなかで一番悔しいといっていいくらい悔しかった。試合を見ていても出たいなという気持ちもありましたし、もっと練習して自分のレベルをあげないと、と思いました」と振り返る。
今季にかける想い
だからこそ、今季に懸ける想いは強い。「勝負の年」と位置づけた3年目の今季に向けて、自主トレーニングでは体を絞り筋肉量を上げ、怪我をしない体づくりに励んできた。3年目で初めて一軍スタートとなった春季キャンプでは、打撃練習でドラフト1位ルーキーの鈴木昭汰、山本大貴と両左腕から2本の柵越え。
2月13日からの対外試合でも、開幕投手を務める濵口遥大(DeNA)や昨季パ・リーグの左腕で唯一規定投球回に到達した田嶋大樹(オリックス)といった実績のある左腕から安打を放った。2月27日の西武との練習試合から4番に座り、3月11日の楽天戦では本塁打を含む2安打3打点の大暴れ。オープン戦ではチームトップの6打点をマークした。
外野手登録ながら昨年11月のフェニックスリーグから本格挑戦する一塁の守備でも、一、二塁間の当たりを広い守備範囲でアウトをもぎ取るなど、オープン戦9試合で無失策。走塁でも1つ先の塁を狙う姿勢を見せるなど、攻走守にアピールした。
まずは、目標にしていた開幕一軍を手にしたが、本当の勝負はここから。山口本人もそのことを自覚しているだろう。“勝負の3年目”、飛躍のシーズンとするために、打って打って打ちまくって、チームの勝利に貢献してほしい。
文=岩下雄太