成長を実感
「いい面も悪い面もあるんですけど、試合のなかで、最初の頃できなかったことができるようになったりしている部分もたくさんある。そういう部分では常に1試合、1試合成長できているのかなと思います」。
一軍昇格を目指しファームで汗を流すロッテの西巻賢二は、開幕してからの1カ月をこう振り返っている。
最初の頃できなかった部分について西巻は、「守備の中での状況判断でミスしてしまうことがあったのですが、数自体が減ってきているのかなと、自分のなかで感じてきています。そういったものをもっと増やしていければいいのかなと思っています」と語った。
守備で言えば、昨季一軍の試合前練習で安田尚憲、福田光輝、茶谷健太といった同じ若手とともに、当時一軍のヘッドコーチ兼任内野守備コーチを務めていた鳥越裕介現二軍監督から身振り手振り指導をもらいながら、ノックを受けていた。
「僕はどうしても先に手が動いてしまう癖があるので、守備は足からどんどん動かしていくということを常々言われている。守備の部分で課題がたくさんあるので、そういったことを教えてもらっていました」。
今季も「どこのポジションを守るにしても、同じことで、特に足を動かしてやっています」と継続して自身の課題と向き合い守備練習に励んでいる。
早いカウントから積極的に打つ理由
打撃面でいえば、比較的、早いカウントから仕掛ける傾向にある。
「出塁することが一番大事だと思っているので、そのなかでも振っていかないと。自分の中で“今日はいけるかな”と思える日は積極的に、初球から振っていけているとき。バットが振れずにストライクがどんどん入ってこられると、きつい打席というのが今まで多い気がするので、そこは心がけて積極的にいっています」と“積極的”に打っていく理由について説明した。
4月23日の西武との二軍戦では、左の浜屋将太が投じた初球のチェンジアップを空振りも、2球目も同じチェンジアップを右中間へはじき返し適時三塁打を放った。「1球目のチェンジアップ、タイミングが早くて空振りしてしまったんですけど、そのあとはそれこそ繰り返さないように気持ちを持って、チェンジアップを右中間にいい形で打つことができた。僕の中では非常に良い打席だったと思います」。1球目の反省を活かし、適時三塁打に繋げた。
積極的に打っていく西巻ではあるが、『1番・セカンド』で出場した4月25日の西武との二軍戦では初回の第1打席に、プロ通算134勝を挙げる内海哲也に対し2球で追い込まれるも、そこから粘りに粘って10球目の外角のボールを見逃し四球を選ぶということもあった。
「追い込まれてから反対方向の気持ちで入っていたので、緩いボールに対してもしっかりついていくことができましたし、一番よかったなと思うのはインコースのまっすぐをカットできたこと。それは非常によかったかなと思います」。自身も手応えの感じる打席内容だった。
反対方向への打球が好調のバロメーター
西巻の打撃練習を見ると、2019年11月に行われた秋季キャンプでの入団テストのときにはレフトスタンドへ放り込むなど小柄ながらパンチ力のあるイメージだったが、昨年一軍の練習をみたときには、右方向に打っている場面が多かった。試合でも4月23日の西武との二軍戦で右中間を破る三塁打を放ったように、センターから反対方向への安打が多い。
「近めにきたら反応で左に強い打球を打っているだけなので、レフトに大きいのを打つというのは考えていなくて、試合のなかでも基本的には右方向に強い打球を心がけています。甘く中に入ってきたら反応で打てる、それが一番良いかなと思っています」。
今年も試合前の打撃練習では「中に何球かはしっかり強く振って引っ張る打球をいれていますけど、基本的には右方向を意識してやっています」とのことだ。
また、反対方向に打てているときというのは、自身の打撃の状態が良い時だという。
「特に試合の中では右方向に。バットの出方が良いときは、サードゴロが減っています。練習のなかでは、バットの出方を大事にしています。右方向に打球が飛んでいるときというのは、いい出方をしているときと感じています」。
昨年は一軍で4本の安打を放ったが、そのうち3本がセンターから右方向だった。「特に去年のヒットというのは右方向が非常に多かった。右方向にヒットが出ているときというのは、いいバットの出方をしているなと感じています」と話し、昨年10月11日のソフトバンク戦、左の和田毅からライト前に放った安打については「あの打席は良かったなと思います」と自身も納得のいく一打だった。
一軍で活躍を!
今季は開幕からファームで過ごしているが、目指すは一軍の舞台。
「走攻守全てにおいてまだまだレベルアップしなければいけないことが、たくさんなんですけど、実戦のなかでいかに“こいつを使いたいな”と思われる選手にならないといけない」。
「1試合、1試合のなかでコーチ陣、監督に“おっ!”と思わせられるようなものを。打つ、守るだけじゃなくて、他にもそういう部分は隠れていると思うので、そういうものを考えながら試合をやっているという感じです」。
結果でアピールすることはもちろんのこと、プラスアルファの部分を見せることを常に意識している。内野手は一軍だけでなく、二軍もライバルは多いが、存在感を示して一軍の扉を開けたいところだ。
取材・文=岩下雄太