「徐々にいい形に」
「かなり感覚的にもいいですし、試行錯誤してきたなかで徐々にいい形になってきているのかなと思います」。
ロッテの松田進は4月終了時点で二軍の打率.000(7-0)だったが、5月は25日の西武との二軍戦で通算134勝の左腕・内海哲也から2安打すれば、翌26日の試合ではレフトスタンドに豪快な一発を放つなど、5月は月間打率.360(25-9)と状態を上げている。
「西武戦の前まで(バッティングの)感じが悪いなというイメージだったんですけど、内海さんとやるとなったときに、自分のなかでシンプルな形が一番いいのかなという整理がついた」。
「あの試合の1打席目にきれいにライト前に打ってから、感覚がよくなったんですよね。右中間もかなりいい感触で打てたので、良かったですね」。
内海から放った“1安打”をきっかけに、何かを掴んだようだ。
ヒッチ打法も…
松田といえば、2019年の秋季キャンプでヒッチする打法に変更し、同年12月に行われた『2019アジア・ウインターリーグ・ベースボール(AWB)』で「かなりいい感触といいますか、手応えといいますか…」と確かな手応えをつかみ、AWBでは右方向への強い打球も多かった。
しかし、20年シーズンに入ってからは、ヒッチする打法ではなく、ヒッチのしない打法で打っていた。
「タイミングが合えばヒッチの方が間合いといいますか、ボールまでの距離がとれるんですけど、クイックが早いピッチャーだったり、タイミングが取りにくいピッチャーのときにどうしても自分の形で打てないという課題があった」。
その課題を克服するために、「よりシンプルに考えてみようと自主トレのときから取り組んで、今のフォームになりました」と、現在の形にたどりついたという。
試行錯誤
シンプルに打とうと思い打撃フォームを変更したものの、試行錯誤の連続だった。
「はじめは感覚的にも自分のイメージと体が一致しなかったので、良くなったり悪くなったりの波が激しかった。何か掴みかけたなというときもあれば、一瞬でそれが崩れたりしていた」。
そのなかで、ブレずに取り組み続けたのが“足”を使って打つことだ。
「福浦さんと堀さんに“足で打とう”と言われています。ヒッチのときは手が動くので、肩の開きだったりという部分がでてくるので、足をメインに今年はずっとやっていこうかなと思います」。
ここへきて、頭のなかで思い描いたイメージと体が合致し、25日の内海から放ったライト方向への2安打に繋がった。
「試合前までモヤモヤしていたんですけど、試合前の内海さんのピッチング練習を見てタイミングを取っているときに、何かが舞い降りたというか、感覚的に拓けるものがあった」。
「シンプルな感じでいこうと思って、あの右中間だった。ヒッチをやめてから右中間にという打球があまりなかった。あの打席は台湾のときのライトへの強い打球が感覚的には戻ってきたかなと思います」。
掴んだ感覚を、今後どのように維持していくかが大事になってくる。松田は「毎打席メモを取っていますし、毎試合終わったあと映像を見ていますので、自分のイメージと映像の映り方と感覚と確認しながらやっていきたいと思います」と話す。
「ファームで結果を残さないと上には呼ばれない。この調子を維持しながら、どんどんアピールしていきたいと思います」。チームは12球団トップの228得点を挙げ好調だが、右打ちの野手はレアード、荻野貴司、中村奨吾のレギュラー組を除けば、やや右打ちの控え野手の状態が気になるところ。ファームで結果を残し続ければ、チャンスが巡ってくるはず。試行錯誤しながら掴んだ感覚を、自分のモノにし、一軍の舞台に立って見せる。
取材・文=岩下雄太