39試合連続無失点のプロ野球新記録を達成した西武・平良 (C) Kyodo News

◆ 平良海馬の“ノーヒットノーラン”

 プロ野球の長い歴史の中で起こった「珍事件」を球団別にご紹介していくこの企画。

 今回は埼玉西武ライオンズ編だ。

 すっかり西武のリリーフエースに定着した高卒4年目21歳の剛腕・平良海馬。

 今年は7月1日のソフトバンク戦で、プロ野球新記録となる39試合連続無失点の快挙も達成した。

 その平良は昨年も中継ぎ投手でありながら、10試合にまたがってノーヒットノーランに相当する珍記録を達成している。

 コロナ禍で開幕が3カ月遅れた2020年。平良は開幕2戦目となった6月20日の日本ハム戦で、1-2の7回一死から松本航のリリーフとしてシーズン初登板をはたすと、野村佑希を二ゴロ、清水優心を見逃し三振に打ち取った。

 その後も同23日・24日・27日のソフトバンク戦でいずれも1回ずつを投げ、計5四死球を許したものの、被安打ゼロを継続。

 7月2日・3日のオリックス戦でも1回ずつ投げ、計2回を無安打・1四球。同8日のロッテ戦も1回を三者凡退、さらに同12日のロッテ戦、同16日の楽天戦でいずれも1回を無安打・1四球と被安打ゼロを続け、計9試合で8回2/3を無安打・8四死球に抑えた。

 そして、7月17日の楽天戦。6-2の7回からザック・ニールをリリーフした平良は、先頭の銀次を二ゴロに打ち取り、10試合かけてノーヒットノーラン(9回を無安打・無失点)を達成。さらに山下斐紹と辰己涼介を連続空振り三振に切って取り、記録を9回2/3まで伸ばした。

 173センチで100キロ。チームメイトの中村剛也を思わせる体型から“投げるおかわり”の異名をとる平良は「開幕から安打を打たれず、9回に近づいてることは2試合ぐらい前からわかっていた。ただ、試合中は意識することはなかったです」とあくまでクールだった。

 だが、同19日の楽天戦。2点リードの7回無死満塁でリリーフし、ロメロを三振に打ち取った直後、浅村栄斗に中前2点同点適時打を浴び、ついに無安打記録は10回でストップ。

 さらに島内宏明にも左前安打を許し、二死から内田靖人に右越え満塁アーチを被弾と、記録の途切れっぷりも投球スタイルのような豪快なものとなった。

◆ 世界記録まであと1に迫った男

 平良以前にも、西武には中継ぎ投手による「珍記録」が存在する。

 複数試合にわたる連続奪三振の世界記録に“あと1”まで迫ったのが、最速148キロの速球を武器とした岩尾利弘だ。

 2015年4月12日のロッテ戦。8回一死から6番手としてマウンドに上がった岩尾は、2イニング目の9回一死から吉田裕太、清田育宏を連続三振に打ち取った。これがすべての始まりだった。

 次の登板試合となった同18日のオリックス戦。7回から先発・牧田和久をリリーフした岩尾は、伊藤光・駿太・平野恵一を三者連続三振に切って取り、2試合にまたがる5連続三振に。

 さらに翌19日のオリックス戦。7回から登場した岩尾は、落ちるツーシームを有効に使い、小谷野栄一・川端崇義・伊藤を三者連続三振。記録を「8」まで伸ばす。

 だが、本人は「僕は当落線上にいる選手。記録とかよりも1回打たれてしまうと二軍に落ちてしまうので、何とか残れるように継続していきたい」とあくまで謙虚だった。

 そして、同22日の日本ハム戦。7回二死一・二塁のピンチでリリーフした岩尾は、ブランドン・レアードをツーシームで3球三振。3試合トータルで9連続三振となり、1957年の梶本隆夫(阪急)、1958年の土橋正幸(東映)のプロ野球記録とついに肩を並べた。

 あと1人でプロ野球新記録、2003年にエリック・ガニエ(ドジャース)が4試合をまたいで記録したメジャー記録の「10」にも並ぶところだったが、回またぎの8回、先頭の近藤健介に左飛を打たれて記録ストップ。直後、岡大海と中島卓也を連続三振に仕留めていただけに、たかが左飛されど左飛…と惜しまれた。

◆ 若きエース・今井も…?

 最後は、先発投手のちょっとひねった珍記録を紹介する。

 2018年6月23日のロッテ戦。西武先発の高卒2年目右腕・今井達也は、10日前に球団では1999年の松坂大輔以来となる初先発・初勝利を挙げたばかり。

 この日も初回に味方打線から3点の援護を貰い、1~2回を無難に抑えたところまでは良かったが、3回に大きな落とし穴が待ち受けていた。

 雨でぬかるんだグラウンドに足を取られて制球が定まらず、先頭の平沢大河に四球。一死後、藤岡裕大にも四球を与えてしまう。

 さらに、二死から角中勝也にも四球を許したあと、井上晴哉への8球連続直球勝負が裏目に出て、右越えに満塁本塁打を浴び、一気に逆転された。

 4回は立ち直って三者凡退で切り抜けたものの、5回表の自軍の攻撃終了後に降雨コールドゲームが宣告され、3-4で無念のプロ初黒星。3四球のあとの満塁被弾が悔やまれた。

 だが、思いもよらぬ珍記録のオマケも付いてきた。

 この日今井はたった4イニング投げただけなのに完投が記録され、プロ初完投となったのだ。初先発勝利と併せて、これも“持っている男”の証明かもしれない。

 「雨はわかっていたこと。対応力不足です。勉強になりました。同じミスを繰り返さないようにしたい」と雪辱を期した今井は、8~9月に2勝ずつの計5勝を挙げ、チームの10年ぶりVに貢献。今季も若きエースとしてチームを牽引している。

文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

【久保田龍雄・プロフィール】
1960年東京都生まれ。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

この記事を書いたのは

久保田龍雄

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