吉田正尚は2年連続の首位打者
プロ野球の2021年シーズンもいよいよ大詰め。
パ・リーグは30日のロッテ-日本ハム戦をもって今季のレギュラーシーズン全日程が終了した。
各部門の上位者を見ると、25年ぶりのリーグ優勝を果たしたオリックス勢が個人タイトルレースでも躍動。
打者部門では、吉田正尚が自身2年連続となる首位打者のタイトルに加え、今年は自身初となる最高出塁率も獲得。
さらに本塁打部門では、プロ6年目・30歳で大ブレイクを果たした杉本裕太郎が初の本塁打王に輝いている。
現在、右手首の骨折から復帰に向けてリハビリに励んでいる吉田正尚は、「チームとして優勝で来たということが一番ですが、タイトルもひとつの目標にしていたので、素直に嬉しく思います」と球団を通じて喜びのコメント。
しかし、「もうひとつの目標の、全試合を戦い抜いてのタイトルではありませんので、そこをまた来年の課題に頑張っていきたいと思います」と付け加え、悔しさもにじませた。
いよいよ11月からはポストシーズンがはじまるが、パ・リーグ王者が日本一を目指していくにあたって、もし吉田が戦線復帰となれば、チームにとっては大きなプラスになる。
今季ともに中軸を担った青山学院大の先輩である杉本裕太郎も、「いるのといないのでは、相手投手に与えるプレッシャーが違う」とその影響力の大きさを語っており、「勝ち続けて、アイツ(吉田)に最高の舞台を用意できるようにみんなで頑張りたい」と、離脱が決まった直後から復帰を心待ちにするコメントを発信していた。
仲間たちが用意した“最高の舞台”に、万全な状態で立つことは叶うのか…。チームとしての戦いはもちろんのこと、吉田正尚の状態にも注目が集まる。
「ちょっとは貢献できて良かった」
そんな“大学の後輩”に負けじと、32本塁打を放って初の本塁打王に輝いたのが杉本裕太郎だ。
開口一番「まさか獲れるとは思わなかったのでビックリしています」と正直な心境を吐露した右の大砲は、打撃向上の要因について「振りすぎるとコンタクト率が下がるので、ミートを心掛けてきた。本塁打を狙わず、軽打を心掛けているうちに、そういう打撃ができるようになった」とコメント。
本塁打からイメージされる「遠くに飛ばそう」という意識とは真逆の、「振らなくなったこと」を飛躍のポイントに挙げた。
昨季までの一軍出場は76試合で、通算本塁打も9本。それが今季は1シーズンで134試合に出場して32本塁打と、30歳にして大輪の花を咲かせた。
「入団してから一軍に定着できなくて、一軍の試合を家のテレビで観ることが多かった。一軍の試合に出て、チームの勝利に貢献したいと思っていたので、ちょっとは貢献できて良かった」と、やや控えめな喜びの声。
また、目指していたチームの先輩超え、T-岡田が2010年に本塁打王に輝いた時の「33本」という数字には1本及ばなかったことについては、「すごい人だと再確認することができた」と改めて尊敬の念を示している。
今季の大活躍で一躍有名になった「ラオウ」の異名…。
実は登録名を「ラオウ」に変更するという考えもあったことを明かしたが、「北斗の拳やラオウファンに失礼。呼んでもらえることはうれしいが、杉本でいきます」と登録名は変えないことも表明。
その異名に負けないパワーが最大の魅力でありながら、今季は打率部門でもリーグ3位に入るなど、確実性も劇的に向上。本人も「なんとかギリギリで打率3割(最終的には.301)でシーズンを終えたのは自信になる」と3割クリアを喜びながら、「まだレギュラーは1年だけなので、来年以降も継続できるようにしたい」と、単年だけでなくこの活躍を続けていくことに闘志を燃やす。
球場の時間が止まったように、1人だけが注目を浴びてダイヤモンドを一周する瞬間が好きだと話し、「それがあるから野球を続けてきた。もっと打ちたい」と貪欲に結果を出し続けてきたオリックス打線の中心人物。
クライマックスシリーズでは、もうお馴染みとなった右手を高く掲げるポーズが何度見られるのか。短期決戦でのさらなる爆発に期待がかかる。
取材・文=北野正樹(きたの・まさき)