感謝の言葉と後輩へのエール
西武のファン感謝イベント「LIONS THANKS FESTA 2021」が5日、メットライフドームで3年ぶりに行われ、イベントの最後には今季限りで現役を引退した松坂大輔の引退セレモニーが行われた。
冒頭、これまで活躍を振り返る映像が流されると、元横浜高校監督の渡辺元智氏、第1回WBCの監督でもあったソフトバンクの王貞治球団会長と、工藤公康前監督、第2回WBCで苦楽を共にした巨人の原辰徳監督、西武時代にバッテリーを組んでいたオリックスの中嶋聡監督、そして“昭和の怪物”こと野球評論家の江川卓氏といった、そうそうたる面々からのビデオメッセージを、“平成の怪物”は感慨深げな表情で見つめた。
その後、松坂世代であり、古くから親交のある俳優の妻夫木聡さんと、松坂入団時の監督だった東尾修さんから花束の贈呈と挨拶があり、松坂本人のスピーチへ。松坂はまず、セレモニーを用意してくれた球団関係者と、球場に集まってくれたファンに感謝の言葉を伝えると、「僕は今シーズン、きょうをもちまして23年間の現役生活から引退します」と、あらためて報告。
そして、自身の原動力だったというファンに向け、「僕が投げてきたことで、少しでもファンの方が喜んでくれたり、勇気やパワーを送ることができていたのなら、こんな姿になってもまだまだ投げ続けたいと思いながらやってきて本当に良かった」との思いを口にし、これまで自身を支え続けてくれた人たちへの感謝の言葉を続けた。
また、後輩たちに向けて「誰でもいつか辞めるときがきます。選手の時間は無限ではありません。悔いの残らないように、日々を過ごしてください」とのメッセージを送り、トレーニングや体の大切さを伝えると共に、「その時、その時の結果に満足することなく、嬉しい経験、悔しい経験を積み重ねて、信念を持って上を目指していって欲しい」と続け、「埼玉西武ライオンズの明るい未来を楽しみにしています」と今後の活躍を願った。
スピーチ終了後、グラウンドを一周してファンに別れを告げると、最後に“盟友”であり“好敵手”でもあったイチローさん(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)がサプライズで登場し、花束を渡されて言葉をかけられると、それまで我慢していた涙が溢れる場面も。その後、選手一人ひとりと握手を交わし、平成の怪物はグラウンドを後にした。
▼ 松坂大輔の挨拶全文
まずはこのようなセレモニーを用意していただいた球団関係者の皆様、ありがとうございます。
そしてメットライフドームまで足を運んでくださったファンの皆様ありがとうございます。
僕は今シーズン、きょうをもちまして23年間の現役生活から引退します。
野球と一緒で物覚えが悪いので紙を見ながら話をしてもいいですか?(笑)
2006年のポスティングでアメリカにいくとき、あの時もファン感謝デーだったと思うんですけど、選手会長だったこともあり、挨拶をする機会があったんですけど、この場に立つと忘れちゃうんですよね。同じ思いはしたくないので、しっかり自分で考えた文章を紙を見ながら話をさせていただきたいと思います。
野球を始めた時から応援していただいている方、ライオンズに入団してから応援していただいている方、ケガをしてから応援していただいている方、たくさんの方に支えてもらいました。
本当に長い間、ありがとうございました。
僕の現役時代の原動力は、応援していただいている方に喜んでもらいたいと思い頑張ってきました。
「One For All, All For One」という言葉がありますが、「One For All」、「ひとりはみんなのために」。僕はこの言葉を胸に刻み、投げ続けてきました。僕が投げてきたことで、少しでもファンの方が喜んでくれたり、勇気やパワーを送ることができていたのなら、こんな姿になってもまだまだ投げ続けたいと思いながらやってきて本当に良かったと思います。
小さい頃から投げること、打つことが大好きで、引退する直前まで、もっと投げたい、もっと皆んなと勝ちたいと思っていた僕ですが、最後は普通に投げられなくなるまで、野球を続けてくることができて本当に幸せでした。
プロ生活の後半は、故障ばかりでしたけど、僕を産んでくれて育ててくれた両親に感謝しています。
小さい時から常に僕と比較され、苦しい時期を過ごしたこともあった弟にも感謝しています。
若い時から引退する時まで僕のわがままを許してくれた妻、子供たちにも感謝しています。
妻のお母さん、天国から見守ってくれている妻のお父さんにも感謝しています。
ただ、ここまで来る中でたくさんの方に、たくさんの不満や迷惑をかけてきたことも事実です。改めて、申し訳ありませんでした。
こんな僕に投げる場所を与えてくれた、ライオンズ、ホークス、ドラゴンズ、レッドソックス、インディアンス、メッツ、そしていつも僕の気持ちを奮い立たせてくれたファンの皆様、感謝しています。ありがとうございました。
そして、これからもプレーしていく選手の皆さんへ。
誰でもいつか辞めるときがきます。選手の時間は無限ではありません。悔いの残らないように、日々を過ごしてください。
引退試合の時にも言いましたが、トレーニング、体のメンテナンスには十分にお金をかけてあげてください。
それが、いつか自分に良い結果として帰ってくるはずです。
もしそれが結果に結びつかなかったとしても、一生懸命考えて実践したことは無駄にはなりません。
23年間やってきた中で、たくさんの嬉しい経験、悔しい経験をしてきましたが、いつでも悔しい経験の方が強く残っています。
その悔しい経験をバネに、僕は挑戦をしてきました。そこは自分が自信を持って、誇れる部分だと思っています。
今の結果に満足している選手は誰一人としていないと思いますが、その時、その時の結果に満足することなく、嬉しい経験、悔しい経験を積み重ねて、信念を持って上を目指していって欲しいと思います。
その経験、思いを、これからの世代に紡いでいくことができれば、またライオンズの黄金時代がやってくるのではないかと思っています。
これからは一人の野球ファンとして、埼玉西武ライオンズの明るい未来を楽しみにしています。
最後に、改めて23年間、長い間支えていただき、前に進むために背中を押していただき、本当にありがとうございました。