チーム最年長選手となり10年振りの古巣復帰
12月8日に12球団合同トライアウトが終了した。その翌日からオフに自由契約となった選手たちの契約が解禁となり、いくつかの契約が発表。そのひとりに、DeNAが契約を結んだ藤田一也がいる。藤田はかつてDeNAに所属していた選手であり、「大ベテラン」となっての古巣復帰となる。
与えられた背番号「3」は、かつて高木豊、種田仁、ラミレス、梶谷隆幸(現巨人)といった主力選手がつけてきた番号だ。その背番号からも期待の大きさが窺えるが、来シーズン40歳となる藤田には、フル出場するレギュラーとしてよりも、チームのまとめ役、若手のお手本としての役割を期待していると見ていいだろう。
10年ぶりの古巣復帰となる藤田も、翌10日の入団記者会見で「チームとしては最年長の選手となるため、これまで経験してきたものを他の選手へアドバイスしていきながら、強いベイスターズをつくっていきたい」と自身の立ち位置を理解し、その役割をまっとうするコメントを出している。
チームにとって、経験豊富で引き出しの多いベテラン野手の存在は大きなものだ。日本一に輝いたヤクルトでは、青木宣親(39歳)が精神的支柱となりチームを支えた。また移籍2年目の嶋基宏(36歳)も試合出場こそわずか17試合だったが、開幕直後の3月31日に一軍登録されると、そのままシーズンを完走。ベンチからチームをうまくまとめた。多くの選手から嶋に対する感謝のコメントが挙がっていたことからも、単なる数字以上の価値がそこにあると考えられる。
今シーズンのチーム最年長は34歳の大和
今シーズンのDeNAは、ベテラン野手が不在だった。昨シーズンはロペス(当時36歳)が最年長としてチームを引っ張ったが、オフに退団。今シーズンのDeNAは投手を含めても最年長が34歳の大和だった。大和もベテランに差し掛かる年齢ではあるが、まだまだレギュラーを争う選手ということもあり、精神的支柱としての役割を果たしたという感じではなかった。
そのほかの球団を見ても、レギュラークラスは青木の他に西武の栗山巧(38歳)と中村剛也(38歳)、そしてソフトバンクの松田宣浩(38歳)くらいだが、30代後半の野手が不在となっている球団は他にはひとつもない。
DeNAの野手陣を見ると、ルーキーながら打率3割、20本塁打を記録した牧秀悟(23歳)や、決定的なレギュラーが不在となっている遊撃のポジションを狙う2019年ドラフト1位の森敬斗(19歳)ら若い有望株が多い。
また、昨シーズンの首位打者である佐野恵太(27歳)、中堅のレギュラーである桑原将志(28歳)といった脂の乗った選手もいる。そして今オフに長期契約を結んだ、宮﨑敏郎(33歳)も健在だ。ピースとして足りなかったのは、1年間一軍に帯同できる、「大ベテラン野手」の存在だった。
藤田には、二塁のレギュラーとして楽天で日本一を勝ち取った経験に加え、3度のゴールデングラブ賞、2度のベストナインを受賞した確固たる実績もある。また楽天では、外様ながら選手会長を務めるほど人望が厚かった。古巣であるDeNAにこうして戻り、若手の良きお手本として、そして精神的支柱としての役割を任せるには最高の人材であることは間違いないだろう。
ヤクルトとオリックスが最下位からリーグ優勝を果たしたように、新たなシーズンがはじまれば、前年度の順位はまったく関係ない。DeNAの浮上のために、藤田がどんな力を発揮するのか——。大ベテランの存在感をしっかりと見守りたい。