徹底した登板管理
9回打ち切りだった今季のプロ野球。ロッテは“勝利の方程式”と呼ばれる投手たちをチームの勢いをつけるために、1点、2点を追う展開で投げさせるということがほとんどなかった。
ロッテのリリーフ陣は、昨季と同じように3連投、1週間に4試合以上の登板が非常に少なく、1週間の登板管理がされていた。その中で、守護神の益田直也は、ビハインドゲームでの登板は1度もなし。つまり、9回裏の攻撃に勢いをつけるため1点、2点を追う展開でも、無理に9回表に登板させることがなかったのだ。今季3連投が5度あったが全て、セーブ機会、もしくは同点の場面だった。
セーブがつかない4点差以上の登板というのも、今季初登板から2試合連続失点し、今季3試合目の登板となった4月1日の楽天戦(16-5の9回に登板)、登板間隔が空いていた4月10日の西武戦(6-2の9回に登板)の2試合だけで、イニングまたぎも1度もなかった。
益田の登板数はリーグトップの67試合だったが、そのほとんどがセーブシチュエーション、同点の9回でのマウンドで、チームが勝利するため、引き分けるために投げなければいけない場面での登板だった。
唐川のビハインドでの登板は?
7回、8回を投げる“セットアッパー”を見ても、ビハインドでの登板はあったが、そう多くはない。
唐川侑己は、7回、8回の“勝ちパターン”の役割を担った開幕から一軍登録抹消となった6月17日までを見ると、ビハインドでの登板は開幕4連敗中だった3月31日の楽天戦、0-2の7回に登板した1試合のみ。ホールドが記録されない場面での登板も、4月3日の日本ハム戦(6-2の7回に登板)、6月8日のヤクルト戦(7-3の8回に登板)の2試合だけだった。
開幕直後はチームが連敗し、勝利の方程式の一角を期待されたハーマンの不振などで、やや不安定だったリリーフ陣だが、唐川は投げる場面が勝ちパターンの7回から8回に変更した以外、大切に登板管理されていた。
6月以降勝利の方程式を担当した千隼
益田とともにシーズン通して一軍で投げ抜いた佐々木千隼は、今季初めて“勝利の方程式”で投げた6月3日の中日戦以降、負けている展開で投げたのは6月6日のDeNA戦(1-3の7回に登板)、6月24日のソフトバンク戦(2-3の8回に登板)、9月3日の日本ハム戦(4-5の8回に登板)の3試合。勝ち試合の8回を任された後半戦に限っていえば、わずかに1試合しかない。
8月29日の楽天戦以来の登板となった9月3日の日本ハム戦は、4-5の8回に登板し四球で走者を出したが、1回を無失点に抑えると、その裏に打線が藤岡裕大の適時打、角中勝也の犠飛などで3点を奪い逆転。7-5の9回に益田が締めて、佐々木は8勝目を手にした。
今季初めてリリーフでシーズンを過ごした佐々木だが、1週間に4試合以上の登板、3連投が1度もなく、夏場以降は8回に固定された。首脳陣が佐々木を大事に起用したことも、シーズン通して安定した投球に繋がったといえそうだ。
7回の男に定着した国吉
シーズン途中にトレードでDeNAから加入した国吉佑樹は、東京五輪明けの後半戦から“7回の男”に定着。
益田が連投中のときには勝ち試合の9回を任され、佐々木が連投中のときには8回で投げることもあった。国吉は移籍後25試合に登板したが、17ホールド、2セーブと、25試合中19試合でホールド、セーブがついた。10月10日の日本ハム戦は2-2の7回に登板し、2点を失ったためホールドがつかなったが、無失点に抑えていれば、ホールドがつく場面だった。
ビハインドでの登板は9月3日の日本ハム戦(4-5の7回に登板)、9月24日の西武戦(4-5の7回に登板)の2試合だけで、4点リードの場面での登板も6-2の7回に登板した9月12日の楽天戦の1試合のみだった。DeNAから移籍後、安定した投球を披露していたのも、投げる場所が決まっていたことも大きいのではないだろうか。
また、“勝ち試合”を担当する投手がリードを許す展開で投げさせずにすんだのも、東妻勇輔、小野郁、田中靖洋などが自身の役割を果たしていたことも大きい。徹底したリリーフ陣の管理というのも、マリーンズの強みといえる。
来季は木村龍治コーチ、今季までファームで投手コーチを担当していた小野晋吾コーチが一軍を担当するが、どのようにリリーフ陣を運用していくのか注目していきたい。
文=岩下雄太