ヤクルト戦の7回、右越えに3ランを放つ中日・山下 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2022~第10回・結果を残さなければ生き残る道のない男たちの戦い

 プロ12年目。中日の山下斐紹(あやつぐ)選手が、非凡な才能を発揮した。

 5日にバンテリンドームで行われたヤクルト戦。7回に勝利を決定づける右越え3ランは、この日が本拠地デビューとなった立浪和義新監督へ初勝利をプレゼント。さらに打棒復活を狙うチームにとっても、嬉しい“本拠地1号”となった。

 同じ日に甲子園で阪神と対戦した楽天では9年目を迎える和田恋選手が、途中出場で2打数2安打と気を吐いている。

 一度は戦力外通告を受けた山下と、ここ数年、クビの宣告におびえ続ける和田には後がない。首脳陣にアピールし続けなければ、生き残る道のない男たちの戦いは佳境を迎えている。

◆ 正念場を迎えるかつてのドラ1

 毎年、キャンプからオープン戦序盤の話題の中心はフレッシュな新戦力の躍動ぶりだ。

 ロッテの松川虎生捕手は高卒ルーキーとして、開幕一軍をほぼ手中にしている。大卒なら西武の隅田知一郎、佐藤隼輔両投手の評価が高い。チーム若返りに躍起の巨人では、ドラフト1位の大勢や故障からの復活を狙う堀田賢慎、山﨑伊織らの若手投手に新戦力としての期待がかかる。

 一方で、結果を残せない選手には、ファーム落ちの宣告が待っている。山下や和田はこうした辛酸を何年もなめてきた。

 山下は2010年、ソフトバンクのドラフト1位指名を受けた逸材。

 習志野高時代は高校通算35本塁打の打棒だけでなく、遠投115メートルに50メートルを5秒9で走る俊足。三拍子揃った大型捕手として将来の正捕手本命と目された。

 だが、プロの厚い壁に阻まれて伸び悩む。ようやく開幕1軍をつかんだ2015年には守備で左膝を痛め「側副靱帯部分断裂」の大けが。その後は甲斐拓也、栗原陵矢らのライバル捕手に先を越されて、17年に楽天へトレード。

 その3年後には楽天からも戦力外通告を受ける。打撃の魅力を買われて中日に拾われたが育成契約で背番号は209。昨年、ようやく支配下選手登録を勝ち取ったが、コロナ禍に外食が発覚。禁止条項違反で自宅謹慎の処分も受けた。この春はまさに剣が峰の戦いが続いている。

 山下にとって、光明を見出すとすれば今季の中日はともかく打力向上に躍起なことだ。12球団ワーストの貧打線と得点力不足を解消しようと、立浪監督以下、打線のテコ入れに躍起となっている。

 3年目の大砲候補・石川昂弥、ドラフト2位の鵜飼航丞選手らと共にパワフルな打撃を見せる山下もオープン戦前の対外試合から3割を超す高打率で結果を残し続けている。今季からは打撃を買われて外野手に専念。激しいレギュラー争いにどこまで食い込めるか、正念場の春である。

◆ 最後のワンチャンスを掴みとれるか

 山下同様に、和田も「眠れる大器」と呼ばれて久しい。

 2013年のドラフト2位指名で巨人入り。18年にはイースタンリーグながら本塁打、打点の二冠王に耀いたが、一軍に上がると結果を残せず、3年前に楽天にトレードされた。その年こそ、一軍で31試合出場の「足跡」を残すが、その後の2年間は大半を二軍で送り、自慢の本塁打もゼロが続いている。

 結果を求めるあまり、小さくなっていた打撃を昨秋のフェニックスリーグから「左方向へ強い打球を」と意識改革。成果はこのオープン戦でも6日現在.364の高打率に表れている。

 「自分はアピールしていかなければならない立場。何とか這い上がれるように結果を出していくしかない」と背水の年に賭ける。

 二人の現状は、それでも外野手の5~6番手か。レギュラーへの道は険しい。仮に定位置を獲得できなくても、代打要員や途中出場の道は残る。そこにしがみつくしかない。

 二軍暮らしの長い選手は、毎年の夏以降、球団から来季契約は結ばない旨の呼び出しに怯えると言う。それでも10年近く、プロでいられる選手には何かの長所と可能性がある。そのわずかな壁を超えることが出来るかの戦いだ。

 オリックスの杉本裕太郎選手はドラフト10位で入団すると、大半をファームで送り、昨年30歳で開花すると本塁打王まで駆け上がっている。

 山下は今年が30歳なら、和田は27歳。奇跡の遅咲きも不可能ではない。最後のワンチャンスを掴むには、まだまだ打ち続けなければならない。

 忘れられかけた“窓際族”に一軍切符がもたらされることを願うばかりだ。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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