大卒3年目でプロ入りの苦労人
4年連続日本シリーズ制覇から一転、まさかのBクラス転落となった昨季のソフトバンク。選手個々を見れば相変わらず豪華な顔ぶれだが、故障者が続出したこともあり投打の歯車が噛み合わなかった。
自慢の三軍制で養成中の若手もひしめくが、あと一息で壁を突き抜けられない選手も多い。レギュラー遊撃手の今宮健太が4年連続で規定打席未到達という状況を踏まえ、ソフトバンク編成陣は思い切った手に打って出た。昨秋のドラフト4位で大卒3年目だった野村勇(NTT西日本)を指名したのだ。
野村勇は今年12月には26歳になる、妻子持ちのオールドルーキー。年齢的に求められる役割は当然、即戦力。野村勇はその期待に応え、オープン戦では9試合に出場して打率.375、2本塁打と結果を残した。本職の遊撃守備だけでなく、二塁と三塁にも就きユーティリティぶりをアピールした。
野村勇が歩んできた道は、決して日の当たる場所ではなかった。兵庫県出身ながら、香川県の藤井学園寒川高に野球留学。甲子園出場はなく、卒業後は東都大学2部リーグの拓殖大へ。4年間を2部リーグで戦ったのち、社会人の名門・NTT西日本に入社している。入社3年目の昨季は遊撃手としてプレーし、ドラフト指名につなげている。
選手としては走攻守に高い水準に達している反面、プロの一軍レベルで言えば突出した一芸があるわけではない。だが、日の当たらない環境でも自分を高め続け、企業戦士として明日なき戦いを生き抜いてきたたくましさがある。球団編成陣が野村勇を獲得したのは、このたくましさをチームに注入してもらいたいと考えたからではないか。
社会人出身の特性がチームの刺激に
プロ野球の育成論について語る際、高卒ドラフト指名選手を育てることが是とする風潮があるように感じる。社会人出身選手を獲得すると、「目先の補充に走った」とネガティブにとられがちだ。
だが、結局はチーム内のバランスが整っていれば、問題はないはずなのだ。高卒には高卒の特性、社会人出身者には社会人出身者の特性がある。その特性を生かして、互いに刺激を受け合えばチームは活性化する。ソフトバンクの育成の歯車が再び回るようになれば、野村勇の獲得は大成功と言えるだろう。
その他のルーキーでは、期待の高かった2位指名・正木智也(慶應義塾大)が春季キャンプ時に右ヒジ靭帯損傷の疑いなどで早々に離脱。アマ時代は故障に強い選手として知られていただけにショックは大きかっただろうが、幸い症状は軽かったと報じられた。大学でスイング改造に成功し、広角にスタンドインできるようになった和製大砲。ソフトバンクの恵まれた環境で、どこまで伸びるか楽しみだ。
福岡ソフトバンクホークス
2021年ドラフト指名選手のオープン戦成績
*1軍成績(3/21終了時点)1.風間球打・投手(明桜高)
出場なし
2.正木智也・外野手(慶応大)
出場なし
3.木村大成・投手(北海高)
出場なし
4.野村勇・内野手(NTT西日本)
9試合 6安打 打率.375 2本 3打点 0盗塁
5.大竹風雅・投手(東北福祉大)
出場なし
◇育成
1.藤野恵音・外野手(戸畑高)
出場なし
2.川村友斗・外野手(仙台大)
出場なし
3.井崎燦志郎・投手(福岡高)
出場なし
4.三浦瑞樹・投手(東北福祉大)
出場なし
5.田中怜利ハモンド・投手(帝京第五高)
出場なし
6.加藤洸稀・投手(滝川第二高)
出場なし
7.山崎琢磨・投手(石見智翠館高)
出場なし
8.佐久間拓斗・捕手(田村高)
出場なし
9.山本恵大・外野手(明星大)
出場なし
10.加藤晴空・捕手(東明館高)
出場なし
11.瀧本将生・投手(市立松戸高)
出場なし
12.三代祥貴・外野手(大分商業高)
出場なし
13.佐藤琢磨・投手(新潟医療福祉大)
出場なし
14.仲田慶介・外野手(福岡大)
出場なし