素材型の選手中心のドラフト
石井一久GM兼任監督体制になって2年目。近年は田中将大の電撃復帰など着実に補強をしてきただけに、今季は是が非でも優勝を狙いにいく年になる。
だが、昨秋のドラフト会議は「種まき」に徹した印象だった。石井監督はスカウト会議で「監督としては即戦力がほしいが、GMとしては将来性をとるべき」と発言したという。1位指名は高校生の右の強打者である吉野創士(昌平高)。育成ドラフトを含め高校生を5人指名するなど、素材型の選手中心のドラフトになった。
「サプライズ指名」と見られていた安田が開幕一軍マスクに
実は安田の存在は、昨年のドラフト直前まで広くは知られていなかった。兵庫・須磨翔風高時代は高校通算5本塁打と、突出した数字は残していない。進学した愛知大は球界のレジェンド・岩瀬仁紀(元中日)の母校だが、安田の在学中は愛知大学リーグの2部に沈んでいた。大学通算32本塁打を放っていたとはいえ、安田は全国的には無名の大学生だったのだ。
だが、ドラフトが近づくにつれ、「愛知の2部リーグに『ゴジラ』がいるらしい」という噂はまたたく間に広まっていった。楽天のスカウト陣も安田を密着マークするようになり、その資質の高さに惚れ込んだ。
楽天が安田を2位指名したことは世間には「サプライズ指名」に映ったが、楽天スカウト陣は自信たっぷりだった。昨季センセーショナルな活躍を見せた佐藤輝明(阪神)の大学時代と、同等の評価をしていたという。
プロ入り後の安田は、オープン戦で14試合に出場して打率.242、1本塁打、8打点をマークした。守備面では手痛いパスボールを犯すシーンもあったが、ここまでは大健闘したと見るべきだろう。打撃力を期待されて入団した新人が、扇の要としての仕事も求められパンクしなかっただけでも上出来だ。シーズンが開幕すれば、さらなる重圧を抱えながらのプレーになるのは間違いない。首脳陣や周囲がいかにサポートできるかが、「捕手・安田」の成否を分けそうだ。
その他の新人で開幕一軍に食い込みそうなのは、右投手の西垣雅矢(早稲田大)だ。一見すると見栄えのしない投球フォームのようだが、独特のリズム感で初見の打者を惑わせる。フォークという一芸で打ち取る術もあり、本格派投手が多い楽天ブルペン陣にあって異色かつ貴重な個性になりそうだ。
東北楽天ゴールデンイーグルス
2021年ドラフト指名選手のオープン戦成績
*1軍成績(3/21終了時点)1.吉野創士・外野手(昌平高)
出場なし
2.安田悠馬・捕手(愛知大)
14試合 8安打 打率.242 1本 8打点 0盗塁
3.前田銀治・外野手(三島南高)
出場なし
4.泰勝利・投手(神村学園高)
出場なし
5.松井友飛・投手(金沢学院大)
3試合 0勝0敗0セーブ 防御率0.00
6.西垣雅矢・投手(早稲田大)
5試合 0勝0敗1セーブ 防御率3.60
7.吉川雄大・投手(JFE西日本)
2試合 0勝0敗0セーブ 防御率4.50
◇育成
1.宮森智志・投手(高知ファイティングドックス)
出場なし
2.柳澤大空・外野手(日大藤沢高)
出場なし
3.大河原翔・外野手(東海大山形高)
出場なし