縁起の良い地元・仙台
ロッテの平沢大河が25日、楽天との開幕戦に『9番・三塁』で先発出場。これが平沢にとってプロ7年目で初の開幕スタメンとなる。
平沢は15年ドラフト1位で仙台育英高からロッテに入団し、プロ1年目から大きな期待を受けてきた。プロ1年目の16年は開幕二軍スタートも、4月23日のDeNAとの二軍戦で3安打5打点の大活躍を見せるなど、ファームで31試合に出場して、打率.294、4本塁打、23打点の成績を残し、5月11日にプロ初昇格、初出場を果たした。
翌5月12日のソフトバンク戦でプロ初打席、5月14日の楽天戦では「どの打順にしろやることは変わらないので、しっかりとやれればいいと思います」と『9番・ショート』でプロ初スタメン出場、同年8月17日の楽天戦でプロ初安打を放った。
2年目の17年には当時楽天でプレーし、現在はチームメイトの小野郁からライトへプロ初本塁打。プロ初スタメン、プロ初安打、プロ初本塁打はいずれも楽天戦。ちなみに初安打、初本塁打は開幕戦の舞台となる楽天生命パークと、平沢にとって縁起の良い球場といえるかもしれない。
試行錯誤の日々
3年目の18年には内野だけでなく、「どこでも守れれば強みだと思います。しっかり準備していきます!」と外野でも出場し、自己最多の112試合に出場。
112試合に出場したが本人は「1年間一軍にいたのは自信になりましたけど、掴み取った一軍ではなくて、いさせてもらったというのが正直なところ。来年以降はつかみ取れるようにやりたい」とシーズン直後の取材で話していたのが、今でも強く印象に残っている。
同年のオフには「日本は恵まれた環境。ハングリーさがあった」とオーストラリアでのウインターリーグに参加し、日本に戻ってからも栃木県内、ロッテ浦和球場で自主トレ。2月の春季キャンプでは、「ファーストスイングでしっかり捉えられたのは良かった」と対外試合初打席で本塁打を放ちアピールした。
飛躍のシーズンにするはずだった19年だが、前年を下回る51試合の出場にとどまり、打率も.198に終わった。「(飛躍のシーズンにするために)去年(18年)出させてもらったと思っていますし、今年(19年)は結果で応えられなかった」と悔しさをにじませた。
4年目が終わり、高卒までのプロ入り4年間を振り返ってもらったときには「(プロ4年間で)チャンスはいっぱいいただきましたし、そこで活かせなかったのは悔しかった。納得はいっていないですね」と反省の言葉が並んだ。
またこの時代、ドラフトで17年に藤岡、18年に松田進、19年に福田光輝と毎年、ショートの選手がプロ入りしていた。「ライバルが入ってくるのは毎年そうなので、負けないようにしないといけないと思います」。多くは語らなかったが、この現状をなんとしても打破したいという思いは強かった。
大卒の同学年の選手たちがプロ入りする5年目の20年は、「シーズンで結果を残すために、何をするか考えてやっています」と、自主トレではロッテ浦和球場でバットを振った。あるときには、朝の9時すぎには室内練習場で1人黙々とティー打撃を行うなど、5年目にかける思いがひしひしと伝わってきた。
2月の春季キャンプは二軍スタート。シーズンが開幕してからも一軍に呼ばれず、プロ5年目で初めて一軍出場なし。エチェバリアが加入した翌21年は、オープン戦で本塁打を放ったが、開幕を二軍で迎え、1度も一軍に呼ばれることはなかった。
一軍出場こそなかったが、映像を見ていると、いつ一軍から声がかかってもいいように、きっちりと二軍で準備していたように見える。
今季は3年ぶりに春季キャンプA組スタート予定も、新型コロナウイルス感染によりB組スタートに。それでも、2月23日のオリックス戦から一軍に合流すると、昇格後初打席となった同戦でいきなりセンター前に適時打を放った。
2月の対外試合で打率.333(12-4)、0本塁打、2打点、出塁率は.469の成績を残すと、3月に入ってから藤岡、エチェバリアが一軍合流し、ベンチスタートという日もあったが、途中出場からでも1日の日本ハム戦で1安打1四球、8日の日本ハム戦で2安打と与えられた機会で結果を残した。18日の巨人戦からオープン戦最終戦となった21日の中日戦にかけて4試合連続三塁でスタメン出場し、4試合全てで安打を放った。
4年前の2018年は“期待の若手として”試合に出場させてもらう立場だったが、今年は自らのバットで開幕一軍、開幕スタメンをつかみ取った。来るべきチャンスに備え、地道に練習を何年も積み重ねてきた。新型コロナが拡大する以前にはZOZOマリンの室内練習場、ロッテ浦和の室内練習場で、試合前、試合後にバットを振る姿を目撃したファンも多いのではないだろうか。
ただ本当の勝負はここから。シーズンで結果を残すことが何よりも大切だ。言い方は厳しいが、三塁・遊撃にはライバルが多く結果を残せなければ、代わりの選手がいる。レギュラーを掴むためには打ち続けるしかない。3月25日は、シーズンが終わったときにレギュラーへのきっかけとなる日になったと言えるような活躍に期待したい。地元で最高のスタートを切ることを強く願う。
文=岩下雄太