ストレート主体
3月29日のロッテ浦和球場。初回に投じた12球全てストレートで三者凡退に打ち取った投手がいた。そうロッテの高卒2年目・中森俊介だ。
「初回に限らず、あの試合は真っ直ぐで押していこうとバッテリー間で、話を進めていた。真っ直ぐを軸に投げていました」。
同日のDeNAとの二軍戦で、5回・58球を投げたが、実に45球がストレートだった。
昨年のフェニックス・リーグでは走者を置いた場面、球数が増えたときにストレートの球速が落ちたりすることもあったが、今季二軍戦で登板したここまでの2試合はそういった傾向は出ていない。
「昨年から体を作ってきて、その成果が徐々にで始めたのかなと思います」と自己分析する。DeNA戦では5回、この日最後の対戦打者となった山下幸輝を149キロのストレートで見逃し三振に仕留めた。
新人時代の昨年2月に取材した際、「真っスラ気味に曲がったり、不規則に動く。自分の持ち味だと思っているので、力強いストレートと力強い真っスラを投げられるように取り組んでいきたい」と話していたが、現在は「意図的には(真っスラを)投げていないんですけど、勝手に曲がってくれるというイメージ。真っ直ぐいくときは真っ直ぐいきますし、いい感じで動くときは動いて、バッターが打ちにくそうな雰囲気がある。いいんじゃないかなと思います」と納得のいく球が投げられている。
ストレートの球速については「先発していくうえで、10割の力で投げていたらシーズン持たないと思いますし、8割、9割の力で最後まで投げきれる体力が先発ピッチャーとしては重要になってくる。球速は意識していないですね」と、そこまでこだわりを持っていない。
ストレートがいきてこその変化球
ストレートも良いが、二軍戦初登板となった3月21日の西武戦では、左打者へのインコースのスライダーが良く、0-1の3回一死走者なしから河村啓真を見逃し三振に打ち取ったインコースのスライダーは素晴らしかった。
「スライダーは最近いい感じで投げられている。変化球が活きてくるのも、真っ直ぐがいい感じだからこそ。DeNA戦と同様に真っ直ぐで押していくスタイルを貫けたらなと思います」。
“真っ直ぐがいい感じだからこそ、変化球が活きてくる”という話を聞いて思い出したのが、同日の4回に渡部健人をストレートで追い込み、最後は120キロのカーブで見逃し三振に仕留めた場面。あれもストレートが良いからこそ、変化球が活きた場面だったのだろうかーー。
「そうですね。カーブは結構、縦振りの意識をもって投げないと、いい感じで自分のなかでは弾けない。カーブが良いときは真っ直ぐの走りもいい。結構、自分のなかではカーブが良いなと思うときは、真っ直ぐもいきている。自分のなかでもいい感じでできているのかなと思います」。
ルーティンを模索中
昨年1年間は体づくりに重点を置き、2年目の今季は開幕からファームで先発ローテーションの一員として投げている。
「まだ試合数もあまり投げていないので、自分のなかでのルーティンを定まっていないと思います。これから徐々に固めていけたらなと思います」と、現在は先発としての1週間の過ごし方を模索しているところだ。
ルーティンのなかで力を入れていることについては「ウエイトの頻度だったり、体の張りがあったり、ウエイトの重量をあげすぎて次の登板にも響きますし、そこの微調整に取り組んでいますね」とのこと。
投球面でも、「前回出た反省点、課題点を踏まえて次の登板に向けてしっかり備えているという感じです」と次の登板に向けて課題を持って1週間を過ごす。それとともに、「投げた次の日、投げた日もそうですけど、投手コーチ、バッテリー間で反省を出し合って、次の登板のときにどういう感じでいくか。登板の試合前に確認したり、入念にしていますね」と、自分の考えを投手コーチや捕手と確認する作業も行っている。
先輩たちの活躍に
現在はファームで実戦経験を積んでいるが、1学年先輩の佐々木朗希をはじめ、ロッテに限らず、球界全体を見渡しても若い世代の選手たちの活躍が目立つ。
中森も先輩たちに続くぞという考えを持っているのだろうかーー。
「そうですね、どこの球団もそうですけど、去年だったら奥川さん、同じチームだったら(佐々木)朗希さんと、2年目から活躍している選手がたくさんいますし、自分もその波に乗っていけたらと思っていますが、しっかり自分のピッチングスタイルを貫けるように頑張りたいなと思います」。
もちろん、中森も一軍で投げたいという想いは当然ある。「一軍でプレーしないとこの世界では生きていけない。そこを強く持っていますし、焦らずにしっかり土台を作って一軍で投げられたらなと思います」。今はファームで長いイニングを投げることをテーマに置いて、自分の課題と向き合い、一軍で活躍するための準備を進めている。
▼ 中森俊介の二軍成績
2試 1勝0敗 10回 被安7 振9 与四0 防0.90
取材・文=岩下雄太