開幕から安定
「去年、一昨年よりかはいい感じできているのかなと思います」。
開幕してからここまでの投球をこのように自己評価したのは、ロッテの小野郁だ。19年オフに楽天へFA移籍した鈴木大地の人的補償選手として加入した小野は、20年から毎年シーズン自己最多登板を更新。昨季は49試合に登板し、年々、チームに欠かせない存在になっている。
昨年は開幕してから勝ちパターンを務めていたハーマンが不振で、セットアッパーを任される時期もあったが、悔しい結果の登板が多く、その後は主にビハインドゲームでのマウンドが中心だった。
「気持ちの持ち方、試合の入り方、先頭打者への入り方など、去年の失敗が、今年にいきていると思います」。
今季は同点に追いついた直後の2-2の7回に登板した4月6日の日本ハム戦、1-1の9回に登板した4月23日のオリックス戦、3-3の8回に登板した4月27日の楽天戦といずれも、三者凡退に打ち取っている。
「大きく変わったことはないですけど、しっかり自分の持ち味をいかして、1個ずつ、まずは1個ずつ、3人で抑えるとかじゃなくて目の前の一人のバッターに対してしっかり向き合ってやっていけているのかなと思います」。
特に成長を感じたのが、4月6日の日本ハム戦だ。宇佐見真吾、上野響平、野村佑希ともに3ボール2ストライクとなったが、崩れることなく3人で抑えた。
「まっすぐ一本でいっていないというのが、あるのかなと思います。3ボール2ストライクにもっていかないのが一番いいのかなと思うんですけど、そこで四球を出すと流れが悪くなる。自分も苦しくなる。ストライクゾーンで勝負できると思ってやっている。カウント3-2になっても粘れるようにしています」。
速いスライダーに手応え
今季の小野を支えているのが、2種類のスライダーだ。6日の日本ハム戦、先頭の宇佐見に対し3ボール2ストライクからストライクゾーンからボールゾーンに落ちる縦に落ちるスライダーは素晴らしいボールだった。
本人は「縦のスライダーよりかは、一番良いと思っているのは速い方のスライダーです。ボール先行でもカウントが取れているのは結構大きく変わったところかなと思います」と話す。
これまでもスライダーは横のスライダーと縦のスライダーを投げ分けていたが、昨年の夏場以降、速い方のスライダーの球速が140キロ以上出ている。
「去年も速いのと遅いのは投げていたんですけど、速い方の精度が良くなかった。曲げようとして投げていたのが、140キロ近く計測していただけ。今は140キロ近くでも、カウントを取るために投げられているのと、空振りを取りたいときにちょっと大きめに縦気味に落とすような感じで投分けていますね」。
速いスライダーでカウントが取れるようになったことで四球数も減少。ボールが先行しても「まっすぐでボール、ボールになったとしても、今は速い方のスライダーでカウントが取れると思っているので、まだ大丈夫かなという思いは自分のなかであるかなと思います」と、自信を持って投げ込むことができている。
また早いカウントで投げる速いスライダーで打ち取ることも多く、昨季に比べて奪三振数も減った。
「早いカウントで勝負がついていることが多いのかなと思いますね。初球の入りであったり、まっすぐを待っているバッターに小さいスライダーを投げて打ち取れているというのがあります。また、三振が取りたいという欲がなくなってきてます。場面によっては三振が欲しいところもありますけど、今はそんなに三振を意識して投げることはないです」。
早いカウントで打ち取れるようになったことで、投球面でも楽になったりしているのだろうかーー。
「球数を使って抑えるのが良いと思うんですけど、全員球数が多かったりしたらリズムに乗れないと思います。簡単にじゃないですけど、抑え方でもリズムが変わってくると思います。なるべく自分にも悪い方向にいかないような投球をしています」。
スライダーが進化し、昨季よりも頼もしくなった。「今の状態からもっと状態をあげて、小野が出てきたら大丈夫だと思われるような投球をしていきたいと思います」。ロッテに加入してから成長を続ける右腕が“勝利の方程式”に入って活躍する日が来るのも、そう遠くないだろう。
取材・文=岩下雄太