初めて一人で自主トレ
「1年通して一軍でやっていないので、まずは1年間しっかり一軍でやって、一つでも多くスタメンをいただいて勝てるように頑張りたいですね」。
新型コロナウイルス感染拡大する前の20年3月1日の楽天とのオープン戦の試合前の取材でこのように目標を掲げた柿沼友哉は同年、開幕から1度もファームに落ちることなく一軍でプレーし、昨季も左足の骨折、新型コロナウイルス感染で離脱があったものの43試合に出場、そして今季は主に勝ち試合の抑え捕手として出場するなど、一軍で自分の居場所を掴みつつある。
「2020年はじめてシーズン通して戦えて、21年はキャリアハイを目指していかなければいけないところで、コロナだったりケガだったり、すごく悔しい1年になった。そこを挽回すべく今年という気持ちで入っています」。
近年は鈴木大地(楽天)らとともに自主トレを行うことが多かったが「今年初めて自分自身一人でやろうと思って、今年は宿毛と宮古島(の自主トレ)に行かずマリンでやりました」とZOZOマリンスタジアムを中心に自主トレに励んだ。
「一番は去年のシーズン終盤くらいから初動負荷トレーニングをやり始めて、それを続けたいと思った。それを続けるには自主トレで(宮古島や宿毛に)行ってしまうと、できなくなってしまう。また、自分と向き合うためにマリンでやりました」と、一人で自主トレを行った意図について語る。
初動負荷トレーニングの効果もあらわれている。「体のケアであったり、柔軟性、可動域がメインで通いはじめたんですけど、自分のなかで体の感じも良いですし、一番は初動負荷トレーニングをすることで気持ちがリセットされる。そういうのが自分のなかで行きはじめてよかったかなと思います」。
守備面での成長
守備面ではこの2年、一軍での経験を積み、1球の怖さや勝つ喜びを知った。
「怖さは最初に出始めたころより、やられてしまう試合も出てくるのを感じました。自分のなかで根拠を持って、何がダメだったのか、勇気をもっていくことも必要だし、そういうところはすごい勉強にもなっている。一皮むけたじゃないですけど、1つ乗り越えられえた気がします」。
柿沼がそう話すように、今季柿沼がマスクを被ったときのチーム防御率は2.62。5月19日の楽天戦で試合途中からマスクを被り6点を失ったこともあったが、5月12日の楽天戦から18日の楽天戦にかけて5試合連続で自責点0に抑えるなど、投手陣を好リードする。
「一番は20年、21年とかは勝っている場面、競っている場面で代えられてしまうことが多かった。逆の立場になって後ろでいくことが多くなった。そこ(試合終盤)を任せてもらえるようになったというのは結果としてじゃなくて、そこを行かせてもらえることによって一皮むけたというか、自分のなかで自信にもなりました」。
抑え捕手
今季、主に柿沼が登場する場面は、勝ち試合の試合終盤。チームの勝利に直結する大事な役割だ。
一軍の試合に出始めた頃の2019年7月の取材では、ベンチスタートのときは「バッターの傾向であったり、出ているキャッチャーがどう攻めているのか。僕はベンチの中で『次こういこうこかな』、『これいこうかな』と思っているときに、先発で出場するキャッチャーは、どんなボールでいくのか。そのボールをいったらどうだったのか。こういう発想はなかったのかとか答えあわせしながらやっています」と常に自分が試合に出たつもりで、配球をベンチで考えていた。
一軍の経験を積んだ現在も、基本的な考え方は変わらないが、試合に出るようになって様々な角度から試合が見られるようになった。「いろんな見方ができるようになりましたね。自分の引き出しじゃないですけど、相手の状態、ピッチャーの状態、いろんなところを加味してみれるようになったのは見方は一緒なんですけど、見る幅が変わりました」。
試合中はベンチで相手打者の傾向、試合の流れを読み、自身が試合に出場するための体の準備をし、試合終盤からマスクを被り、チームを勝利に導いていく。途中から試合出場するにあたって、「ずっとベンチで試合を見ていて、気持ち、集中力が切れることはないんですけど、体の準備は最初難しかったですね」と明かす。
現在は小島和哉が先発の時以外は途中からの出場が多いが、スタメンへの意欲、2019年以降シーズン終盤に出場機会が減少してしまった悔しさを今も持っている。
「今は試合終盤を任せてもらう立場にいるので、最後まで怪我、不調で代えられないようにしたい。最後まで1シーズン終盤を任せてもらえるような活躍をしていきたいですし、スタメンでも出ていきたい。そのためにも打たなきゃいけないですし、勝たなければいけない」。
「ライバルですけど、年下のキャッチャーが2人なので、2人の手助けもできたいいなと。チームが勝つために何ができるか考えてやっていきたいと思います」。
2019年6月の交流戦で少ないチャンスで盗塁を刺し、そこからコツコツと結果を残して今の地位を確立した。背番号“99”は今日も、チームの勝利のため全力を尽くす。
取材・文=岩下雄太