6回・小野の存在感
開幕直後は不安定だったロッテの“勝利の方程式”だったが、ここへきて非常に頼もしくなってきている。
1日のヤクルト戦では4-3の6回から小野郁、東條大樹、ゲレーロ、益田直也のリレーで1点のリードを守りきり勝利した。先発・美馬学が5回・82球を投げ6安打3失点と、もう1イニングいける球数ではあったが、5回まで毎回走者を背負う投球のなかで、スパッと代えることができたのは小野の成長も関係しているのではないだろうか。
小野は昨季までビハインドゲーム中心の登板だったが、延長12回制が復活した今季は同点の試合終盤や勝ち試合で投げる機会が増えた。まだどちらにゲームが転ぶかわからない展開のなかで、勝っている6回の1イニングを“0”に抑えることが多い。
5月4日の西武戦では、7-4の6回にマウンドにあがり、高木渉をオールストレートで3球三振、山田遥楓を縦のスライダーで空振り三振、柘植世那もスライダーで見逃し三振と、圧巻の三者連続三振。5回に先発・河村説人が4点を失い、直後の6回表の攻撃が三者凡退に終わり、流れが西武に傾きかけたなかで見事な投球だった。
5月26日の広島戦でも6-3の6回に登板し、先頭の小園海斗に安打を打たれたが、後続をしっかりと抑え無失点で切り抜けた。ポジション的にビハインドでの登板もあり、タフなポジションではあるが、ここをしっかりゼロに抑えているからこそ、7回、8回、9回の勝利の方程式にバトンを繋げている。地味な役割だが、貴重な存在なのだ。
安定感がでてきた勝利の方程式
勝ちパターンの7回・東條、8回・ゲレーロ、9回・益田も盤石だ。
勝ち試合の7回を担当する東條はストレートに強さが戻り、課題にしていた左打者に対してもバックドアのスライダー、インコースに入ってくるスライダーを武器に左打者の被打率は.160。4月27日の楽天戦から現在15試合連続無失点中だ。
8回を務めるゲレーロも初登板から5試合で7四死球と制球に不安があったが、5月は9試合・9イニングを投げて与四死球は0。制球力が上がったことで投球も安定し、4月19日の西武戦から5月27日の阪神戦にかけて12試合連続無失点。特に5月12日の楽天戦から27日の阪神戦までの7試合は打者3人で片付ける圧巻の投球内容だった。走者を出した5月29日の阪神戦では失点しており、課題はある。走者がいるときでも走者がいないときと同じような投球ができれば、さらに頼もしくなる。
3試合連続で失点したこともあったが、チームの勝敗に直結するプレッシャーのかかるマウンドで、マリーンズの勝ち試合の最後を締めるのは益田しかいない。“抑え・益田”が決まっていることで、そこまでにどう繋ぐかを考えればいい。だからこそ、7回・東條、8回・ゲレーロという形もガチッと決まったのではないだろうか。
現状は7回・東條、8回・ゲレーロ、9回・益田という形だが、長いシーズン何が起こるかわからない。ただ、勝ち試合で投げることの多い西野勇士をはじめ、八木彬、小沼健太なども安定した投球を見せる。さらにはファームにも佐々木千隼、国吉佑樹、田中靖洋、東妻勇輔といった昨年ブルペンを支えたメンバーたちも控えている。
打線が3、4点奪えれば、開幕からの先発陣の出来、ここ最近のリリーフ陣の安定ぶりを見ると、逃げ切る試合が増えていくだろう。そうなれば、今は遠い首位・ソフトバンクの背中も、少しずつ見えてくるはずだ。
文=岩下雄太