西武・森友哉 (C)Kyodo News

◆ 第2回:元首位打者・森友哉の復調で西武が上昇気流へ

 まずは、13日現在(以下同じ)の7月パ6球団の成績を紹介する。

 ①ソフトバンク 4勝5敗
 ②西武     6勝4敗
 ③楽天     2勝7敗
 ④ロッテ    6勝5敗
 ⑤オリックス  5勝6敗
 ⑥日本ハム   7勝3敗

 この連載をスタートした6日時点では、首位のソフトバンクから4位のロッテまでが5ゲーム差なので“熱パ”としたが、今や5位のオリックスまでが5.5差。どのチームが首位に立っても、逆にBクラスに転落してもおかしくない。

 7月のここまでの戦いぶりを見ると、最も元気なのが最下位の日本ハムで、一時は首位に立ったこともある楽天が予想以上に苦しんでいる。

 加えて、上位に位置するソフトバンクと西武はコロナ禍で戦列離脱者が続出している。こうしたチーム事情を考えると、まだまだ混戦模様が続きそうだ。

 各チームともに一長一短で決め手を欠く中、上昇気流に乗りそうなのが西武である。交流戦後は14勝6敗。今季は強力投手陣に支えられてきたチームが、ここにきて打線に迫力が加わってきた。特筆すべきは森友哉選手の復調にある。

 19年には捕手として首位打者を獲得、シーズンMVPにも輝いた実力者が今季はスタートからつまずいた。打撃不振に加え、4月2日のロッテ戦で途中交代を告げられると、ベンチ裏でキャッチャーマスクを投げつけた際に、右指を骨折。レギュラー捕手を欠いたチームはさらに苦境に陥った。

 「チームとして許されることではない。野球観をもう一度変えて、泥だらけになってくれることを望む」辻発彦監督の言葉が森の愚行をすべて言い表していた。

 約1カ月半のリハビリ期間を経て、交流戦から復帰するが、今度は、投球を直接右手で受けて途中退場するなどアクシデントは続く。本来なら3番に座る強打者の不在はチームに迷惑をかけ、自身のプライドもずたずたに砕け散った。

◆ 安定感を誇る投手陣に強力打線が戻ってくれば…

 そんな「問題児」がようやく本領を発揮しだしたのは今月に入ってからだ。

 6日のオリックス戦では延長11回に決勝タイムリーを放つなど7月の月間打率は3割7分を超している。何より4番の山川穂高選手一人が気を吐いても前後の打者が迫力不足ではチームも機能しない。

 13日のロッテ戦でも8回、森の二塁打を足場に山川が敬遠された二死後、山田遥楓選手が3点目となる適時打を放っている。これも森効果と言えるだろう。

 今月に入るとチームの2ケタ安打は10試合消化時点ですでに5試合を数える。それより多い試合を戦っているのに、4、6月は各3度しかない。チーム本塁打も今月はすでに14本で総数でもリーグトップに躍り出た。森の復活に併せて打線全体が機能しだした証だろう。

 「チームに迷惑をかけたので、信頼を取り戻すのに今は必死」と森は言う。

 好調のバロメーターは天才的と称される流し打ちだ。追い込まれるまではフルスイングに徹するが、2ストライク後は左に単打狙い出来るあたりが元首位打者の技術である。

 オールスターの監督推薦出場も決まり、ようやく森に明るい話題が戻ってきた。

 チームは主将の源田壮亮選手や守護神の増田達至投手らがコロナの陽性判定で戦列離脱と暗雲も見え隠れする。首位と1差とは言え、すぐに快走するほどの勢いはない。むしろ、指揮官の本音は現在の位置から着かず離れずに並走しながら勝負の秋を迎えたいところだろう。

 今や12球団一の安定感を誇る投手陣に、強力打線が戻ってくれば“混パ”を抜け出す青写真も描ける。それには森の好調な打撃が絶対条件となる。

 大阪桐蔭高時代には春夏連覇を果たした甲子園の申し子には暑い夏が、良く似合う。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)