エンゼルスの大谷翔平

◆ 第2回:前人未到の道を歩む大谷翔平が見つめる次なる高み

 日本中がその快挙に酔いしれ、全米でも称賛の声が鳴りやまない。

 エンゼルスの大谷翔平選手が104年間の空白を打ち破った。

 日本時間10日に行われたアスレチックス戦に「リアル二刀流」で出場すると、投げては6回を4安打無失点で10勝目。打っても25号本塁打を放つなど“大谷ワールド”全開で2ケタ勝利と2ケタ本塁打を達成。「野球の神様」と称されるベーブ・ルースの記録に並んだ。

 直近3度の挑戦に失敗。この日はスライダーの制球に苦しみ、決してベストピッチとは言えなかったが要所を抑える我慢の投球。おまけに3回には打球を左足に当てて、苦悶の表情を浮かべながらの偉業達成だから、改めて怪物の凄みを実証した形だ。

 1918年のベーブ・ルースは13勝と11本塁打。

 2022年の大谷翔平はシーズン途中で10勝25本塁打。

 記録的快挙に現地でも両雄の比較論が繰り広げられている。

ルースの時代は野球の草創期、今のレベルから見れば低い時代かもしれない。投手は9回を投げるのが当たり前の反面、使用球は劣化が著しく打球は飛ばない。11日付のスポーツニッポン紙では当時の地元紙「ボストングローブ」が2ケタ勝利と2ケタ本塁打当日の記事を紹介しているが、意外にも紙面の片隅に10行足らずの扱い。それが104年後には世界中で大々的に報じられているのだから、ベーブ・ルースも喜んでいるだろう。

 まさに歴史の扉を開けた瞬間。当の大谷はどこまでもクールだった。

 「単純に2つやっている人がいなかったと言うだけかなと思う。それが当たり前になってくれば、もしかしたら普通の数字かも知れない」

 記録とは日々の積み重ね。数字は後からついてくるもの。大谷にとっては一つの大きな区切りではあっても、通過点に過ぎないのかも知れない。その感性にも改めて驚かされる。

◆ 大谷の成功による野球界の新たな潮流

 投打の二刀流として、大谷が認知されると野球界には新たな地殻変動が起きている。その最たる例が7月に行われたMLBのドラフトだ。

 1巡目指名でブレーブスがオーウェン・マーフィー選手(18)を全体20位で、ジャイアンツがレジー・クロフォード選手を同30位で獲得したが、この両選手共に二刀流選手なのだ。

 過去のドラフトでも一昨年のナリーグMVPに輝いたフレディ・フリーマン選手(現ドジャース)が高校時代は155キロを超す快速投手として注目を集めたが、ブレーブスに指名されると打者として大成するなど投打のどちらかに絞るケースがほとんど。しかし、今年の両ルーキーは二刀流でスタートすることが決まっている。さらにマイナーリーグでは多くの「大谷予備軍」がいる。

 国内でも今秋のドラフトで1位指名が確実視される日体大の矢沢宏太選手はエースで4番の二刀流。こちらも大谷の影響があるのは言うまでもない。

 二刀流、生みの親でもある栗山英樹前日本ハム監督が言う。

「誰もやらない道を切り開くと言うことでやってきた。だから翔平にとってはこれがスタートラインなんだ」。

 野球界の景色や概念を塗り替えてきたパイオニアが見つめる次なる高みはどこにあるのだろうか? 前人未到の道を歩むのだから、その行く先を予想するのは難しい。

 だが、かつてイチロー氏は大谷の将来について「ある年は本塁打王で、ある年はサイヤング賞(最優秀投手)。そんな可能性を持つのは彼しかいない」と語っている。

 一般的にトップアスリートの円熟期は27歳から32、33歳頃と言われる。肉体面や経験値がピークを迎える年齢である。大谷にとっては今後5年くらいがその時期に相当する。

 天井知らずの“翔タイム”はまだまだ続く。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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