ロッテ・髙部瑛斗 (C) Kyodo News

◆ 32盗塁は12球団断トツ

 プロ3年目のロッテ・髙部瑛斗が飛躍のシーズンを送っている。

 今季はじめて開幕スタメン出場を果たした髙部だが、いまではチームに欠かすことができない戦力である。

 開幕から続けてきたスタメン出場は新型コロナウイルス陽性判定を受けて途絶えてしまったが、7日間の隔離期間を経て最短で復帰した8月10日のソフトバンク戦で即スタメン。首脳陣の信頼の厚さもうかがえる。

 髙部の最大の武器は足だ。昨季もイースタンでは28盗塁をマークして盗塁王に輝いたが、一軍では打率.145と打撃に課題を残し、33試合の出場で4盗塁にとどまっていた。

 しかし、その課題であった打撃を大きく改善し、現在の打率はリーグ10位の.271。それによって出場機会を得たのはもちろん、出塁率も伸びたことで自慢の足を活かす場面も大きく増えた。ここまで髙部が積み重ねてきた32盗塁は、塩見泰隆(ヤクルト)の23盗塁を大きく引き離す12球団ダントツの数字だ。

◆ 初球スタートでサヨナラ勝利を演出

 8月12日の日本ハム戦では、その足でチームに勝利をもたらした。

 同点の9回、一死二・三塁の場面で岡大海のサヨナラ打が飛び出し、ロッテが勝利を収めたのだが、そのお膳立てをしたのは髙部であった。

 9回、守護神・益田直也が同点に追いつかれ、その裏の攻撃でも先頭の荻野貴司が三ゴロに倒れるという悪い流れのなか、髙部が中前打で出塁。

 チームもファンも「走ってほしい」という場面で、続く中村奨吾への初球にスタート。これが相手捕手・清水優心の悪送球を誘って一気に三塁を陥れ、チャンスを拡大。岡のサヨナラ打を呼び込んだ。

 試合を決めた「ヒーロー」は岡だったかもしれないが、この日の勝利は髙部の“足”で得たものと言っても過言ではない。

 ロッテは、8月に入って3勝8敗と不調が続いている。8月12日の日本ハム戦を落としていれば5連敗となっており、それこそ失速といわれるような状況であった。

 それを、サヨナラ勝ちという、逆にチームを勢いに乗せる結果をもたらした価値は決して小さくない。

 長打力・得点力に難があるロッテとしては、本来は生え抜きの長距離砲を育てたいという思いがあるだろう。

 しかし、それがなかなか叶わぬ現状のなか、髙部のように長打力とは異なる武器を活かして勝利に貢献できる選手は、チームにとって貴重な存在だ。

文=清家茂樹(せいけ・しげき)

【清家茂樹・プロフィール】
1975年、愛媛県生まれ。出版社勤務を経て2012年独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。野球好きが高じてニコニコ生放送『愛甲猛の激ヤバトーク 野良犬の穴』にも出演中。

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